どこまでも蒼い藍色
blueシリーズ
藍色の瞳を持つ一族の物語。長年、暖め続け、あまりにも暖め期間が長かった為に、初めの主人公から実に、七世代に渡る話となってしまいました。
藍の章
1世代目の藍あいが主人公となる作品です。全部で7作あります。
・・・が、主人公はあくまでも藍なものの、その彼を別の人間を通して見た一人称となっています。
毎回、その語り部は変わっていくので、一つ一つが全く違う話です。
その為、短編扱いにさせて頂きました。
編集等に慣れましたら、分かり易くまとめさせて頂きます。
一応その要素が無きにしも非ず・・・なので、BL扱いにしてあります。
■ プロローグ ■
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『たか君と花のせい』
あるところに、たか君という男の子がいました。
たか君のおうちには、小さな温室があります。
温室には、たくさんのお花が咲いていて、
そのお花たちに水をあげるのが、たか君のしごとでした。
ある日、たか君が水をあげていると、
お花たちの中に、小さな男の子が眠っているのを見つけました。
長い髪をみつあみにした、かわいらしい男の子です。
「きみは、だぁれ?」
たか君の声に、男の子はびっくりして起き上がると、
じっとたか君を見つめました。
その目は、とても悲しそうです。
「みんなが、ボクをいじめるんだ。」
そう言って、男の子は泣きます。
どうやら、男の子は花のせいのようです。
何の花なのかわからないので、
仲間はずれにされてしまったのでした。
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「高哉さんっ!」
やや、怒りのこもった声で呼ばれ、俺は目覚めた。
どうやら、仕事の途中で、机に突っ伏してしまったらしい。
顔を上げると、目の前に、可愛らしい藍の顔があった。
「これ・・・、ひょっとして、僕のことですか?」
顔に、原稿用紙が突きつけられる。
それは、昨夜、練りだした話の書き始めだった。
「ん・・・・・・ああ・・・。そ・・・だけど?」
間違ってはいなかった。
確かに、この話は藍がモデルだ。
美杉藍・・・。小学六年生、11歳。
髪を長くのばし、可憐な少女にしか見えないが、立派に男の子・・・と言う詐欺的行為を平然とやっている子である。
この子は、昨年の十月、我が家の温室で傷だらけで寝ているのを、俺が見つけた。
ソファーに運んで、手当しつつ待つこと二時間。
目覚めた藍は泣き出した。
藍は、親父さんの仕事の関係で、近くに越してきたばかりだった。
当然のごとく、転校と言うことになったのだが、そのフェミニストと容姿のためか、女子に人気が出、男子の反感を買った。
まったく・・・、最近のガキはマセている。
それでもうまく嫌がらせをかわしていた藍だったが、放課後、弾みで付いた傷がまずかった。
有るか無いかぐらいの傷は、藍をめいいっぱい怒らせた。
「僕の顔は母さんの形見なんです。・・・絶対に守る・・・と決めていたのに・・・。悔しい・・・守りきれなかった。」
喧嘩をして、余計に傷を増やした顔を涙で濡らしつつ、藍は泣きじゃくった。
しかし、今から思えば、この喧嘩が良かったらしい・・・・・・。
これがきっかけで、藍は学校になじめたのだ。
とどのつまり、今では笑い話であり、藍にとっては汚点となっている(らしい・・・・・・)。
「酷いですよ・・・。あの事は、もう忘れたいのに・・・。こんな形のあるモノにして・・・・・・。」
原稿とにらめっこしつつ、藍は顔をゆがませた。
どうやら既に諦めているらしい・・・・・・。
「藍。・・・その花の精、何の花がいい?お前の好きなの決めていいぜ・・・。」
片手で頭を支えつつ、俺は、脇に立つ藍を見上げた。
ちょっとしたご機嫌取りだ。
決して、何の花にするか、決めかねているわけじゃない。
そりゃ・・・昨夜はそれで悩んじゃいたが・・・。
「ひまわりっ!」
しばらくして、元気良く藍が答えた。
「・・・ひまわり・・・か・・・・・・。」
「そう・・・。ひまわりがいいです。」
ニッコリと満身の笑顔を見せる藍は、確かにひまわりだった。
■ どこまでも蒼い藍色 ■
********************
花のせいの涙が、持っていた大きなふくろの上に落ちます。
すると、ふしぎなことが起きました。
ふくろに穴があき、そこから小さな芽が顔を出したのです。
花のせいは、びっくりして泣きやみます。
「ボクの花が育ち始めたんだ。」
ふくろを抱えて、花のせいはつぶやきました。
それを見て、たか君が思いついたように言います。
「ぼくがきみの友だちになってあげるよ。お花も育ててあげる。」
にっこり笑うたか君に、花のせいは初めて笑って見せたのでした。
慰めて、手当までしてやったせいか、藍は俺になつき、毎日学校帰りに寄るようになった。
一見大人しく・・・いや、大人びて見える藍だったが、中身はまさしく少年だった。
明るく元気に笑い、普通の子と全く変わらない。
いや、むしろ、それ以上に無邪気で、純粋すぎるほどだ。
最初、鬱陶しく感じていた俺も、いつしか藍の訪れを待つようになっていた。
その子供らしい・・・純粋な心に、強く・・・・・・惹かれていた。
********************
「藍・・・?どうした?・・・・・・忘れモンか?」
五時に帰っていった藍が、七時半頃、再び訪ねてきた。
真夏とは言え、七時半はだいぶ薄暗い。
到底、子供が出歩いていい時間じゃないんだが・・・。
藍は、無言のまま、下を向いている。
「麦茶でも入れてやる。応接で待ってな・・・。」
俺の言葉に、藍はただ頷くと、応接に向かった。
それは、いつもの藍らしかぬ姿・・・。
元気が無いだけじゃない。
無邪気さも、子供らしさも、どこか遠くへ忘れてきてしまったようだ。
盆片手に部屋に入ると、先程までついていたテレビが消えていた。
確か・・・元アイドルの俳優と、つい最近やっとぱっとしだした女優との、緊急婚約会見だかをやっていたはずだ。
「高哉さんも、ああいうのを見るんですね。」
グラスを置く俺に、あの日と同じソファーに座っていた藍が、俯いたまま、静かにそう言った。
その口調は冷たい。
本当に・・・・・・どうしちまったんだろう・・・・・・。
「いや・・・。ただつけていただけだ。・・・全く、ああいうのは昼のワイドショーだけで十分なのにな・・・・・・。」
気にしないよう・・・いつも通りの対応をし、俺は向かい側に座る。
静かな沈黙が流れた。
藍も、俺も、黙ったまま、麦茶だけを口にしている。
「今夜、泊まってもいいですか・・・?」
グラスが空になった頃、藍はそう言って、顔を上げた。
その瞳は藍色・・・・・・。
藍の色・・・。
しかし、それはいつもの瞳じゃなかった。
強いて言うなら、雲の全くない真夏の空・・・。
まさしく、『蒼』・・・・・・と、言われる色だった。
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花いっぱいの温室には、たねをうえる場所はありません。
たか君は、庭にたねをうえました。
それから毎日、たか君は水をあげに来ては、
花のせいと楽しくお話をします。
芽はどんどん大きくなっていきました。
それにあわせて、花のせいも大きくなっていきます。
どんどん、どんどん、
大きく、大きく。
ある日、とうとう大きな花が咲きました。
きいろい、太陽のような花です。
「きみは、ひまわりだったんだね。」
たか君は、もう自分よりも大きくなった花のせいを見上げて言いました。
花のせいは、にっこりと笑います。
そして、太陽を、まぶしそうに見上げるのでした。
********************
ふと、温室に電気がついた。
俺は書斎にいるのだから、藍・・・だ。
書斎を出ると、温室に向かう。
藍の作ってくれた夕飯は絶品だった。
誰かに教わったのか・・・と聞くと、独学であると藍は言った。
母親が、自分を産んですぐに亡くなってしまった為に、家事一般はいつの頃からか、自分仕事になっていた・・・と以前聞いた事がある。
七歳の時、父親も事故でなくし、今の義父に引き取られた後も、それは続いているという。
「大好きな方々に、食事を作って差し上げるのが大好きなんです。」
そう言っていた藍の事だから、それこそ必死で勉強したのだろう。
今日だって、久しぶりに親父さんとの夕食だから・・・と、ご馳走を作るために、早めに帰ったんだ。
「電話があって・・・。・・・しばらく帰れなくなった・・・・・・って・・・。」
食べる手を休めて、藍は悲しげにそう言った。
ひょっとして、そのせいで?
・・・・・・とも思ったが、『予定はあくまで未定』の親父さん相手に“仕方がありません・・・。”の一言ですませる藍からは考えにくい。
今の藍は、太陽を失ったひまわりだ。
悲しげに、ひたすら俯いて、生気の全くないひまわり・・・。
あいつの太陽は、何処にいっちまったんだろう・・・・・・。
聞きたくても・・・・・・、
俺は、その『太陽』を知らない・・・・・・・・・。
藍は、温室内の長椅子に腰掛けていた。
虚ろな表情で、ただまっすぐと正面を見つめている。
その視線上にはラベンダー。
今の藍の瞳と同じ・・・蒼色を、淡く花びらに持つ花・・・。
「・・・何も・・・聞かないんですね・・・・・・。」
俺の存在に気付いたのか、藍が口だけを動かした。
パジャマ用に・・・と貸したTシャツの袖を、肩まで捲っているその姿に、いつもの藍らしさは一欠片もなく・・・・・・、
紛れもない『少年』だけがそこに存在していた。
それは、とても・・・・・・不思議な光景で・・・・・・。
不謹慎にも、俺は、それを綺麗だと感じてしまった。
そっと近づき、俺は、藍の隣に、腰掛ける。
藍の視線がゆっくりと動き、俺を捕らえるのが分かった。
「言いたくなったら・・・・・・、言えばいい・・・。」
聞いても、無責任なことしか言えない・・・。
聞かないんじゃなく・・・・・・、
・・・聞けなかった・・・・・・・・・。
「・・・俺は、・・・ここにいるから・・・・・・。」
俺に言えるのは飾る言葉だけ・・・。
見つめ返す俺の視界の中で、藍は、その瞳に涙をあふれさせた。
「・・・・・・好き・・・だったんです・・・。」
頬に伝う涙を拭おうともせず、ひたすら目を見開く。
「・・・・・・僕は・・・ただ・・・・・・好きなだけ・・・だったんです・・・・・・。」
静かに・・・それでいて、はっきりと、藍は言葉を綴った。
小さな体を包み込むと、肩の震えがいやと言うほどわかり、思わず腕に力を込める。
少しでも・・・ほんの僅かでもいいから・・・・・・、
・・・・・・その震えを止めたかった。
「・・・わかっていました・・・・・・。あの人にとって、僕は身代わりでしかない・・・って・・・。・・・それでも良かったんです・・・・・・。それでも・・・・・・あの人は、僕を受け入れてくれた・・・・・・から・・・。」
俺の腕の中で、小さくなって震える藍は、紛れもなく子供だった。
なのに、その口から綴られる言葉は、その姿にほど遠い・・・。
「バカですよね・・・。本物は、永遠に失われているのだから・・・・・・身代わりでも『永遠』になれる・・・って・・・・・・そう思っていたんです。」
しがみつく藍の手が、震える。
「・・・・・・思い出でしかない本命は、いずれ消えるか、薄れるしかないと言うのに・・・・・・。」
震えが止まらない・・・・・・。
ひまわりは・・・・・・・・・、
ひまわりは、太陽に恋をしていたんだ。
明らかな片想い・・・・・・。
太陽を失ったひまわりは、
・・・一体どうなるんだろう・・・・・・。
どうなれって言うんだ?
「やめよう・・・藍!」
気付いた時、俺は、そう口走っていた。
腕の中の藍が、驚いたように視線を投げかけてくる。
「『ひまわり』やめよう・・・。お前は、ひまわりじゃない。ひまわりになんか、なっちゃいけないんだ!太陽を失っても、強く生きていける花にしよう・・・。自分自身の力で咲ける花にしよう・・・・・・。」
藍の上に、滴が一つ落ちた。
それで気付く。
俺もまた、涙を流していたことに・・・・・・。
泣くなんて、何年ぶりのことだろう・・・。
片手で目を覆った俺を、藍はじっと見つめていた。
全く情けない話だ・・・・・・。
「高哉さん・・・・・・。」
声と共に、藍の手が頬に伸びてきた。
指の隙間から、藍が穏やかに笑うのが見える。
「びっくりして、涙が止まってしまいました。」
慰めるべき相手に慰められるのは、更に情けない。
でも・・・・・・藍の笑顔が見れたから・・・。
まあ・・・・・・いっか・・・。
俺は、笑い返してみせると、藍を抱きしめた。
暑い・・・。
蝉の声が、更に暑く感じさせる。
それでも、熱を追い出している温室は、外に比べ、幾分かマシだ。
俺は、蛇口をひねると、ホースの先へと急いだ。
あの夜から一週間。
藍が来ない。
夏休みが始まっているにも関わらず・・・だ。
まだ・・・・・・何か、引きずっているんだろうか・・・。
原稿は全て、ゴミ箱に放り込んだ。
原稿用紙は、真っ白なまま、藍の訪れを待っている。
準備万端なのに、藍だけがいなかった。
こうなって、初めて気付く。
俺は、藍のことを何も知らない。
住んでいる所さえ、知らないんだ。
笑い話にもなりゃしない。
ふと、車の音がし、家の前で止まった。
車で訪ねてくるのは、担当の岡田ぐらいだ。
書斎に俺が居ない事が分かれば、いずれこっちに来るだろう。
・・・・・・・・・にしても、いつも〆切より早めに訪ねてくるが、今日とはまた早い。
あと五日もあるぜ・・・・・・。
そんな呑気なことを考えていた時だった。
後方の入口付近から声がした。
「高哉さんっ!」
その声は藍・・・・・・。
元気いっぱいの藍の声・・・。
振り返ると、そこには確かに藍が居た。
可愛らしい服に包まれて、人形のように着飾った藍が・・・・・・。
「お・・・前・・・。何だ?その異常なまでに愛くるしい格好は・・・。」
待ちわびた再会には似つかわしくない言葉だったが、俺が悪い訳じゃない。
藍が悪いんだ。
「高哉さんもそう思います?僕も、これは『可愛い系』だと思うんですが・・・あまりにも、かあさんが綺麗だと着飾るモノで・・・・・・。」
思い出した・・・。
藍は、綺麗と言われると喜ぶんだ。
・・・っと、それはさておき・・・・・・。
「『かあさん』・・・・・・って?」
蛇口をひねって、水を止めつつ、俺は訊ねた。
「実は・・・義父さんが、今度、結婚するんです。」
「なーる・・・。じゃ、その相手の・・・・・・。」
「いえっ!」
藍は、強く首を横に振る。
「義父さんは、独身の身で僕を引き取って下さったんです。本当に、感謝しています。だから・・・・・・。だから、『コブ』にはなりたくないんです。・・・・・・丁度、前々から義父さんの兄夫婦の方々が、引き取りたいとおっしゃって頂いていたので・・・・・・。・・・僕は・・・良い機会だから・・・と・・・・・・。」
声に、元気がなくなっていくのが分かった。
人の為に、自分を押し殺してしまうのが藍・・・。
それで、本当にいいのか・・・・・・?
声とは裏腹に、藍は笑ってみせる。
「妹が出来たんです。・・・あと・・・年内にはもう一人・・・。・・・血も繋がっていないですし、籍も移してしまったので、正式にはイトコになるんですけど・・・。『お兄さん』になってくれっておっしゃって下さって・・・。夢みたいです。」
その瞳にいつもの色はない。
かと言って、あの夜の蒼でもなかった。
強いて言うなら、どこまでも蒼い藍色。
どこか・・・悲しみを秘めた色。
「藍ちゃん・・・。パパ達待ってるよぉー。」
ふいに、可愛らしい女の子が顔を覗かせた。
六歳ぐらいだろうか・・・・・・。
『妹』だ・・・・・・。
「瑠璃・・・。」
藍は、女の子に近寄ると、ちょっとかがんでみせる。
「すみません・・・。少し、話し込んでしまったんです。すぐ行きますから、先に行って待っていて下さいませんか?」
「うん。はやくね。」
女の子は、頬を赤らめ、元気良く駆け出して行った。
どうやら、新しい『お兄ちゃん』が相当お気に入りらしい。
「高哉さん・・・。」
妹の駆けていく姿を見ながら、藍は言う。
「僕、転校するんです・・・。」
それは、別れの言葉だった。
突然なはずなのに、何故かすんなりと、俺は受け止めていた。
何故かは分からない・・・・・・。
ただ、それは、これからも一生分からない・・・・・・。
それだけが分かった。
「・・・・・・そっか・・・・・・。頑張れよ・・・。」
それ以上、何を言えと言うのだろうか・・・。
何を言えると言うんだろう・・・・・・。
頭をぽんぽん・・・としてやると、藍は駆け出す。
俺を見ることなく・・・・・・、
藍は駆けていった。
温室内へときびすを返した時、ふと、蒼が目に入る。
ラベンダー・・・・・・。
あの夜、藍が見ていた花・・・。
瞬間、俺は植木鉢片手に、温室を飛び出した。
まだ、間に合うはず・・・。
案の定、俺は、藍に追いついた。
しかし、それは、藍の乗った車を、俺とは別の人物が止めた為だった。
「藍ーっ!」
車を降りて、その人物と向かい合っていた藍が、こちらを振り返る。
それは、明らかに驚きの顔・・・。
「・・・・・・やる・・・・・・。」
そばに駆け寄り、植木鉢を押しつけると、藍は更に驚いたようだった。
まあ、当たり前と言えば、当たり前かも知れない。
「・・・ありがとう・・・・・・ございます・・・。」
少し間をおき、藍は植木鉢を受け取った。
「・・・・・・この花は、母さんが一番好きだった花なんです・・・。」
そう・・・言って、そっと植木鉢を抱きしめる。
それこそ、一番の宝物のように・・・・・・。
リボンでもかけてやれば良かったな・・・。
そんな後悔がポツンと残る。
「・・・・・・僕は・・・。・・・母さんじゃない・・・。」
花を見つめたまま、藍は言う。
「藍・・・?」
「だから・・・。だから、僕は・・・。」
ゆっくりと、藍は顔を上げ、俺を見た。
「・・・・・・ひまわり・・・で・・・・・・いいです・・・。」
ふんわりと・・・。
本当に、ふんわりと、笑顔を紡ぎだしていくのが解る。
「僕は、・・・ひまわりが、大好きです。」
それは・・・・・・、紛れもない、ひまわり・・・・・・。
・・・・・・そのものだった・・・・・・。
■ エピローグ ■
********************
花のせいは、太陽を見つめたままでした。
決して、たか君を見てくれません。
たか君は、花のせいに会いに行くのをやめてしまいました。
ひまわりに、水もあげないままです。
ある日、たか君はしんぱいになって、
花のせいを見に行きました。
すると、どうでしょう。
ひまわりは、下を向いたまま、元気がありません。
花のせいはその下でうずくまっています。
「ごめんね・・・。ぼくのせいだ・・・。
ぼくのせいで元気がなくなっちゃったんだ。」
あわてて水をあげますが、ひまわりは下を向いたままです。
「ごめんね。ごめんね。」
泣きじゃくるたか君に、花のせいは言います。
「たか君は悪くないよ。
もう・・・咲いていられる時間がなくなっちゃったんだ。」
「かれちゃうの?」
「うん・・・。でもね、もういいんだ。」
花のせいは、かなしげに笑いました。
「大好きだったんだ。
ほんとうに、太陽さんが大好きだったんだ。
でもね、太陽さんは、遠すぎてきづいてくれなかった。
かなしかったけど、つらかったけど、こうかいしてないよ。
・・・ひまわりで良かった。太陽さんに会えた。
・・・たか君、ありがとう・・・・・・ごめんね・・・。」
そう言って、花のせいは消えていきました。
温室のお花たちに水をあげたあと、
たか君は、庭に水をまきます。
それが、たか君のおしごとです。
今年も、たか君のおうちの庭には、
ひまわりがいっぱい咲きました。
おしまい
********************
やぁ~っと終わった・・・。
背もたれに、思いっきり体をあずける。
机上には、半分がしわになった原稿用紙の束。
「『たか君と花のせい』か・・・。」
どうも、しっくりこない・・・・・・。
体を起こすと、その上に、×を書いた。
「本当に、ありがとうございます・・・。・・・あと、ごめんなさい・・・。」
その言葉を最後に、藍は去っていった。
後に残されたのは、俺と・・・・・・、
追いついた時、藍を引き留めていた人物────藍の前の義父・・・。
それは驚く事に、あの夜テレビに出ていた俳優・・・美杉雪彦だった。
彼は、車を見送ったあと、今度は俺をまじまじと見つめた。
「あの・・・・・・何か・・・?」
「いや・・・。あの子が懐くはずだと思ってね・・・。」
そう言って、彼はやんわりと笑ってみせる。
「君の声・・・。俺の親友だった男にそっくりだ。・・・高野僚 と言う名を知っているかい?」
それは、五・六年前に事故死した俳優の名だった。
頷く俺に、彼は更に驚くべき事を言った。
「それが、あの子・・・藍の父親だよ・・・・・・。」
と・・・・・・。
つまり、最後の『ごめんなさい』は、そう言うことだったんだ。
藍もまた、俺に身代わりを求めていた。
『父親』と言う身代わりを・・・。
しかし・・・・・・どうして俺なんだ?
藍には、美杉雪彦がいるじゃないか・・・。
そう・・・考えた時、藍のとった妙な行動を思い出した。
テレビを消し、『義父の相手=義母』を強く否定した。
“母さんじゃない”・・・・・・あれは、誰に対する言葉だったのか・・・。
そして、藍は離れていく・・・・・・。
一つ一つのピースがはまってゆく・・・。
彼は、身代わりにならなかったんだ・・・・・・。
「最低だな・・・・・・あんた・・・。」
瞬間・・・彼は、酷く驚いたように俺を見た。
俺に言う権利が無いのはわかっている。
しかし、俺が言わなかったら、誰が言う・・・・・・?
目をそらし、彼は俺に背を向ける。
「そんな事・・・・・・わかっているさ・・・。」
そう・・・言い残し、彼は去っていった。
目をそらす瞬間、彼の瞳が蒼く見えたのは気のせいだ。
だから・・・・・・、・・・後悔なんてしてやらない・・・・・・。
ひまわりを大好きだと言った藍・・・。
あの時、確かに瞳はどこまでも蒼い藍色だったのだから・・・・・・。
×の横に、大きめの字で書く。
『ひまわりの初恋』と・・・。
ひまわりは嫌いだ。
真夏の・・・真っ青な蒼色の空も大っ嫌いだ。
でも・・・・・・、
藍に免じて・・・。
あの・・・俺が惹かれた満面の笑顔に免じて・・・・・・。
好きになってやるよ・・・。
・・・・・・なってやろうじゃねえかっ!
バカヤロウっっ!!
■ Fin ■
この作品は個人サイト「色々くれよん」にも掲載しています。
※ 諸事情の為、コチラに掲載するにあたり、タイトルと本文を一部変えさせて頂いてあります。
BL要素、気付いていただけたでしょうか・・・。
ちなみに、精神上のつながりだけです。さすがに犯罪はいけません。
言い訳するようですが、私は腐っておりません。
この要素を入れたのも、今後のストーリーの構成上、必要だったからであって、書くのもこれが最初で最後です。(たぶん)




