2/3
残業
「はぁ。」
思わずため息が漏れる。
コツリ。コツリ。
くたびれたヒールがの音が、夜の喧騒に虚しく吸い込まれていく。
私が何をしたと言うのだろうか。日々仕事に明け暮れ、寝る時間を惜しみ、お肌のスキンケアさえする暇も無く、ただがむしゃらに働いてきたつもりだ。
それをただ一言。
「女の考えなど、笑わせる。」
私がどれだけ苦労して、今回の企画書を書いたと思っているのか。あのカツラ部長め。
ともかく、私こと「桐谷椿 キリタニツバキ」は今、心の底から疲れを感じながら帰宅しているのである。