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公爵家の財務長官  作者: 多上 厚志
第五章
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 クリスト公爵が、息子であるルークを殺した、とダニエルゼは言っていた。


 それは今まで春樹達が知っている情報をある意味補完する情報だった。アバーテ伯爵は、ルークが行方不明だと言っていた。その行方不明の原因が、公爵がルークを殺したためだというのであれば、腑に落ちる。それは公爵としても、隠しておきたい事実だろう。


(だが、クリストがルークを殺した動機はなんだ)


『なぜだい』


 ニコが最初に口を開いた。

 春樹が感じた疑問を、ニコが問いかけてくれた。


『なぜ、伯爵に話さなかったんだ』


 ニコの疑問は、春樹の疑問とは少しズレていた。


 ダニエルゼは何をいまさら、というように片方の眉を上げた。


『伯爵に話す前に、お前達に相談したほうがいいと思ったんや。伯爵は所詮よそ者やろ』


 それはそうだ。

 伯爵に裏切られたら相手に腹が立つが、ニコやシータに裏切られても、自分に落ち度があったと、春樹は自分を責めるだろう。


 ダニエルゼは三人を見回した。


『伯爵は行方不明という言い方をしていたが、どうやろ。本当は、死んでいたことをすでに知っていたんやないか』

『公爵が、息子であるルークを殺すなんてことになったら、どうなるかな。公爵領の政治はぐちゃぐちゃになってしまう。殺したのなら、やはり隠すだろうね。つまり伯爵も知っていなかったんじゃないかな』


 ニコは少し考えながら、言葉を継いだ。


『本当は誰かに殺されたんだけど、公爵が自分で殺したと言っている可能性はあるのかな』

『それはない。イエナにそんな嘘の情報を流す利点がない』


 シータの言葉はもっともだ。

 しかし、ニコの懸念も選択肢としていれておく必要はあるように春樹には思えた。


『そうだよね。そもそも公爵はなぜ、ルークを殺したとおっしゃってるの』

『ルークは、暴動を起こそうとしたと言ってたんや』


(それはありえない)


 ダニエルゼの説明を、春樹はすぐに心の中で否定した。

 ニコは首をひねっており、シータはどう判断して良いか考えあぐねているようだ。


 春樹は、シータに説明した。


『シータ。長男であるルークが暴動を起こすということは考えられないだろ。そもそもルークは跡継ぎなんだ。暴動を起こしても、自分には不利なばかりだ。公爵は病弱だ。まっていれば、公爵になれるんだから』


 シータは春樹に向き直って、お言葉ですが、と前置きをして続けた。


『春樹様は、公爵家の嫡男が非常に理性的であることを前提されているようです。しかし、地位が高いからといって、常にそのようなものばかりではございません。私は理性という言葉の対局にある貴族を何人も見たことがあります』

『なるほどね』


 春樹は頷いた。


『つまり、そのうち公爵になれる、まで我慢できなかった』

『そうです。私はその可能性が高いと思います』

『それは無いやろ』


 異論を挟んだのは、ダニエルゼ。


『ルーク兄さんは、理知的な人間やった』

『それはイエナに向けた顔でしょ。貴族のやつらは、いくつもの顔を使い分けるから』


 シータの言葉の端々に嫌悪という感情がちらついて見えた。

 その毒気に当てられたようにダニエルゼが口ごもった。


『ニコはどう思う』

『僕はなんとも……。いまの状況で殿下の死の原因を詮索しても、想像の域をでないんじゃないかな』

『それもそうだ』


 春樹も同意した。

 ただ、春樹の心の内に根本的な疑問が残った。


(本当に、ルークは死んでいるのだろうか。公爵ではなく伯爵の話のほうが正しいという可能性もあるんじゃないか)


 これも選択肢として、残しておかないといけない。

 また、メモを残して考えをまとめる必要がありそうだった。




公爵家の財務長官を読んでいただきありがとうございます。


近頃、ブックマークの伸びが鈍化してまいりました。

残念な反面、ちょっとホッとしています。


作者としては、作品をたくさんの方に読んでもらいたい、というのが本音ではあるのですが、この小説はランキングで上位にいくようなキャッチーな小説でないことは、自覚があります。


そのため、突然、日間総合ランキングに載ったときはいったい何事が起きたのか、とハラハラしつつ訝しく思ったものです。


伸びが鈍化したとは言っても、一年間で130弱だったことを考えると驚異的な増加です。


ブックマーク、感想、レビュー、本当にありがとうございます。

感想でご指摘いただいた箇所をなかなか直せなくてすみません。誠実さに欠けると思いつつも、作品の先を書くことを優先しております。また、時間を見て直したいと思っております。ご容赦ください。


これからも、日々働いたり、会話したり、笑ったり、トイレに入ったりしながら、作品のことを考えて大切に書いていきます。


どうぞ、公爵家の財務長官をよろしくお願いします。

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