刺激
「ぐああああ!」
美月は更に苦しみだした。すると美月の姿にも次第に変化が現れた。
「美月!」
「おやおや、そのお嬢さんも悪魔化してきましたねえ。くくく…」
陽助はうろたえた。
「テーブルに置いておいたスパイスは、我々の好物でしてね。魔界では、このスパイスの刺激によって、魔力を増幅させる働きがあるのですよ。もっとも、これを人間が食べると刺激のあまり、悪魔と同等の力を得るのです。理性を失ってね。ほらほら、そこのお嬢さんも悪魔になっちゃいましたよ?」
「美月…そんな…!」
悪魔と化した美月は立ち上がる。そして、陽助の方を見た。
「美月、俺だ!陽助だ!」
悪魔となった美月は、右手に槍を持っている。その先端を陽助へ向けた。
「さあ!その男を殺せえ!ははははあああ!」
店長は高らかに笑う。美月は槍を突きだした。
「…は?」
店長は目を疑った。美月が突いたのは、陽助の後ろにいた魔物だった。
「ば、ばかな!何をしている!お前は悪魔になったのだ!殺すのは我々ではなく人間の方だ!」
「そのスパイス…今まで味わった中で、極上のものだった。私の体をこうも刺激させてくれるとは…!」
悪魔となった美月に、理性が残っていた。
「ばかな!ありえん!人間がこのスパイスを口にして理性を保っているなど…!」
驚く店長。陽助も口を大きく開けている。
「だが、不愉快だ。私をこんな姿にしたのはな!貴様にはこの刃で償ってもらうぞ」
「図に乗るな!小娘が!」
店長が美月に襲いかかる。美月は槍を構えた。
「刺激を受けろ!『スパイシー・グングニル』!」
美月の攻撃が炸裂。断末魔の叫びで、店長は消えてなくなった。