辛口少女
20××年、紅い満月が出る夜、悪魔が降臨し、街は狂変する。いつからか紅い満月の日を人々は、ブラッドフルムーン(血の満月)と呼ぶようになった。
「月が紅い。また今夜も…街が紅く染まる…」
街で一人の女子高生を、男数人が囲んでいる。ナンパだ。
「なあなあ姉ちゃん、あんた相当いけてるね。」
「カレシいないの?なんなら俺らと天国みたいなトコ行かない?」
すると女子高生は怖がる顔すらせず突然、人差し指を突きだし一人に目潰しをした。
「ぎゃあああ!」
「いきなり何しやがるクソアマ!」
もう一人の男が女子高生に襲いかかった。すると女子高生は男の手を握り、股間に蹴りを一発いれた。
「あん!!」
もう一人の股間にも蹴りを入れ、ナンパしてきた男はみんな逃げ出した。
「覚えてろよ!」
「男三人でこんな女一匹も口説けないなんてな。甘すぎる」
「おいおい何やってんだ美月!」
そこにやってきたのは、美月の幼なじみの恋原陽助だった。
「甘いぞ陽助!五分も遅刻。おかげでダサい奴等にナンパされてしまったじゃないか」
「また蹴り入れたりして追っ払ったのかよ。相変わらず大胆だなお前は。そいつら、お前に手を出したのか?」
「知らん。ヘッドフォンしてて何を言ってきたのかよくわからんかった」
「あのな…」
「それにしても陽助、お前のファッション、今日もイマイチだな。上半身が特にイマイチ。だが、その間抜け面は気に入った」
「相変わらずファッションチェックも辛口だな。それより早く行こうぜ。今日オープンのレストラン」
二人は、レストラン『トランス』に入った。
「いらっしゃいませ」
料理がきた。そして美月は一口、味見をすると、スパイスを料理に大量にかけた。
「甘すぎる」
「相変わらず料理に対しても辛口だよな。お前の将来は辛口評論家か?」
薄野美月。この女は幼稚園からの付き合いだが、こいつは本当に大胆で辛口だ。男顔負け。中学で八人、高校で二十四人(俺の知る限りだが)、告白してきた男を、持ち前の辛口と足蹴りで泣かせてきた。そんで、料理の方も辛くないと食べられなく、いつもスパイスをかけるところから、彼女は周りから『スパイSHE』と呼ばれている。ヘッドフォンもしてて、いかにもスパイって感じだ。単なる音楽好きだろう。いつもロックやパンク系を大音量で聴いている。だが彼女の前で悪口を言うと、何故か聞こえているかのように股間を蹴ってくる。
レストランを出てから、美月と陽助は夜の街を歩いた。
「おい見ろよ…月が紅いぜ。気持ち悪いな」
すると突然、紅い満月を見た美月は苦しみだした。