人の夢、私の夢
私たちは今、海を越えてカロンとディミニスに向かう途中。どちらも、もともとはグレートキングダムという一つの国だった。しかし、大昔の、「双子戦争」で二国に分かれてしまったらしい。カロンの首都はメルクリウス。メリクリウスではない。ややこしいけど。ディミニスの首都はサトゥルヌス。二国では、「双子戦争」について詳しく学ぶのがメイン。二国では二週間のうち、四日間過ごす。それにしても……。
「ルック、この飛行船、おちつかないわ」
内装があまりにも豪華過ぎるのよね。
良い旅にするため、工夫を凝らしているみたいだけど、逆効果。因みに私たちが今いるのは、リビングルーム。いくつかの大きなソファーがあって、大体の人は、時折運ばれてくる茶菓子を口にしながら、そのソファーに座って過ごしている。ルックと私もその一人だった。
この飛行船は、このリビングルーム、ライブラリー、植物園、屋内プール、ジムルームの五つの部屋しかない。それにもかかわらず、船体がやたらと大きいのは、一部屋ずつが無駄に広いせいだ。一人で出歩くと、きっと迷子になってしまう。
「それでは皆さん、そろそろカロン、ディミニスに到着します。準備をしてください」
出発から約二時間後、メリクリウスさんが言った。そう、メリクリウスさんは引率者。他に、校長先生、廊下の番人ことゴードン先生の合わせて三人。
私は、旅のために用意したリュックを背負った。何回も使うことになるでしょう、と、メリクリウスさんに用意してもらった物。キャリーの時と同じく、アスフォデルのものだ。ルックがいる目の前で使うのは何かはずかしいけれど。
はて、今はあの二人はどうしているのかしら。二人のためにも知識をたくわえよう。自分自身のためにも知識をたくわえよう。
「ねえルック。ルックは何で勉強を頑張るの?」
「前にも言ったでしょ。首席で卒業して、魔界省に入るの」
そういえば、聞いていた。
「逆に聞くわ。あなたは、何故勉強を頑張るの?」
孤児院の勉強でやっていた、自分で物語を考える授業が大好きだった。
「私は、小説家になるために頑張っているの。小さい頃から物語を考えるのが大好きだった。でも、知識がないと、話は書けないでしょう? だから、頑張っているのよ」
初めて言った。自分の夢。小説家だなんて現実的じゃないし、笑われるかもしれない。けれど、ルックが次に言ったことは、想像とは違うことだった。
「へえ、素敵じゃない。きっと、あなたならなれるかもね」
ああ、自分の夢を恥ずかしがる必要なんて、無かったんだ。




