眠り姫
「あなた、なんでついてきているの? 女子寮に、男子は立ち入り禁止よ」
「先生一人より、誰かいた方が良いでしょう。それに、先生より、僕のほうが力、ありますよ」
会話をしてはいるが、僕たちは、走っていた。一刻も早く、リリーの所へ向かわなくてはいけない。
「分かりました。今回だけは、目をつむっておきますよ」
「リリーさん、入りますよ」
先生は、ドアをノックした。しかし、返事がない。部屋に入ると。リリーは、床に横たわっていた。
「リリー!」
「あら、すごい熱」
僕が気付かなければ、授業が始まるまでこのままだったのかと思うと、急に怖くなった。二人がいない、というのは、恐怖だ。
「医務室に運びましょう」
僕は、そっと、リリーを持ち上げた。リリーは、手に何かを握っていた。それは、いちも大事に大事に、肌身離さずに持っていたナミダの雫のネックレス。こんな時にまで。唯一の、親の形見だと言っていた。目がさめるような、綺麗な青色。覗きこむと、向こう側が見える透明な雫型の石がひとつだけ付いている。ブルーストーンもこんな色をしているのだろうか。
「……ん、アリア?」
起こしてしまったらしい。
「僕だよ」
「え? ここ、女子寮……」
「良いの。リリーは今、熱があるんだから。黙って僕に運ばれてな」
そういうと、そう、とうなずいて、リリーはまた、眠りへと落ちていった。




