気付かずにいた優しさ
線をひかれた気がした。私たち二人とあなたは違うんだよ。一位とか二位取れる人と二十七位は違うんだよって。もちろん、アリアとルックがそんなこと思うわけが無い。そんなことは分かっている。そう理解していても、溢れてくる涙を止めることはできない。
このまま行っても、メリクリウスさんを困らせるだけだなぁ。そう思って、寮の塔を出て、扉の前に座った。一人でいたい、そんな気分。一人で居るのは昔を思い出して嫌なはずなのに。
もう、心の中がぐちゃぐちゃだ。自分が誰なのか忘れてしまいそうになる。
「……リー……」
幻聴? 声が聴こえた気がした。
「リリー」
幻聴じゃなかった。肩を叩かれた。見上げると……。
「ロイス?」
どうしているの? と聞きたかったけど、上手く声を出せそうにない。名前を呼んだのも上手く伝わっていないかもしれない。
ロイスがしゃがんで、座っている私と同じ高さになった。いや、ロイスのほうが高い。いつの間にこんなに背が伸びたんだろう。前までは私の方が大きかったのに。
ロイスが軽く手を握って言った。
「リリーは一人じゃない。僕がいる」
前にもあった、テスト前にも。
「ねぇ、リリー。昔の約束覚えてる?」
約束なんてしたっけ? 全く覚えてない私は首を横に振る。
「あの時のリリーも泣いていた。寂しさで君は消えたしまいそうだった。それで僕は君に『寂しかったら僕を呼んで。すぐに行くから。約束だよ』って。まぁ、完全に忘れられていたみたいだけど」
思い出した。孤児院でく暮らし始めてすぐのことだ。私は顔を上げた。
「思い出した?」
ロイスなんかに……、ロイスに私はこんなにも助けられていた。ずっと傍にいた優しさに気付かずにいた。そう思うと、また涙が零れてきた。
「うん、気の済むまで泣きな」
私は決して、たった一人きりの力で生きていた訳じゃなかった。




