寂しい
「一人で行動するなんて久しぶりだな」
最高学年の女子寮長に許可を取り、私は部屋を出た。昼間とは違う、シン、と静まり返った廊下。光は、窓からさすわずかな月光と、一定の間隔で壁にはめこんである蝋燭の灯りだけ。なんともいえない気持ちが心に襲いかかってくる。
「やっぱり、やめようかな」
心にあるのは、恐怖心だけではなかった。一人でいることが怖い。
「……さびしい?」
この気持ちは孤児院に入ったばかりのころ、何度も感じていた。またも、寂しさを感じてしまうなんて。過ごしてきた五年間という月日は私の心を強くはしてくれないのか。
私は寮のドアを閉めたその後の一歩を踏み出せずにいた。そんな時、背後のドアがキィッと音をたてた。
「やぁ、リリー」
この声は。
「……ロイス」
普段は鬱陶しく感じるロイスでさえも、今は傍にいて欲しいと感じる。
「どうしたの? こんなところに突っ立って。元気がないようだけど、もしかして風邪? 熱でもあるの?」
「いや、何でもないよ」
「そう」
私は心を読まれないようにとを願った。しかし、そんな思いは叶わず。
「僕がいる、安心して」
『僕がいる』あぁ、こんなこと、孤児院でもあったな。あれはたしか、孤児院に入ったばかりのころだったような。
「さあ、行こうか」
「うん」
私はようやく歩きだすことができた。




