ブラックでヘビーな昼休み
「……はぁ、それでルックさんには気付かれてしまった訳ですね」
「気をつけてはいたのですが。すみません」
「気付かれてしまったのは、一学年寮長でありながら、意識を高く持っていなかった、私の責任です」
私は、いつもと変わらないメリクリウスさんの表情にホッとした。さすがにいつも温厚なメリクリウスさんでも怒るだろうと、とても緊張していた。
「二人とルックさんは同じ部屋ですし、いつかはわかってしまうことだと予想はしてましたから。ただ少しそれが早まってしまっただけのことです。気になさらないでください。ただ……」
メリクリウスさんの穏やかな表情が急に険しくなった。え? もしかして怒られる? 「気になさらないでください」とは言っていたけれど。
「三人が人間界から来たことはくれぐれも口外なさらないよう、お願いしますよ、ルックさん。どんなことがあっても絶対に、ですよ」
「わかっています」
ルックはきっぱりと答えた。そして、間をおいてから聞いた。
「『例の事故』とは何ですか」
また、メリクリウスさんの表情がかわった。こんな短時間にコロコロ表情が変わるメリクリウスさんって、ちょっとレアかもしれない。しかし、その顔は、私たちが事故の話を聞いた時と同じく、とても悲しい目をしている。深紅の瞳には女性的な長いまつげが影をおとす。今にも涙がこぼれてしまいそうだ。そしていつも首にかけているロケットを握りしめている。そんなメリクリウスさんの姿をみたルックは、触れてはいけないことに触れてしまったような、複雑の心境になっているのがわかった。こういうときって、相手の心は読もうとしなくても、読めてしまう。
しばらく部屋は重い沈黙に包まれた。この間アリアはずっと言葉を選んでいたのだろうか。
「……あの、メリクリウスさん。その事故について話してもいいのなら、わたしたちから話しましょうか?」
ずっと心のなかで紡いでいた言の葉を、アリアは丁寧に口にした。




