音も無く近付く何か
「と、言うわけで一ヶ月後にはテストがあります。皆さん、心して勉強をして置いて下さいね」
いつもは優しいルモニエ先生。そんな先生が珍しく『勉強をして置いて下さい』なんて、相当難しいのかな。
「えぇ、基本魔法の呪文を聞く問題が十問ほど……」
あ、ポイント教えてくれるんだ。メモメモ。アリアが必至にメモしているのが視界に入る。せっかくカワイイ顔しているのに、いまやその顔もものすごい形相。ロイスもとても必死だ。あの入学前のテストが相当悔しかったに違いない。ルックからは今か今かと昼休みを待っている心の声が漏れている。メモしなくても余裕なのかな。それか、よほど『事件』のことが気になっているのか。
「はい、今回の授業はここまでです」
皆が一斉にガタガタと席を立ち、次の授業に向かう。
「ね、ねぇ、リリーかアリア。今のテストのポイントのメモをとったノート見せてくれない?」
ルックが少し焦ったような感じで聞いてきた。はい、確定! ルックは事件が気になっていた!
「まさかとは思うけど、ルック、メモしてなかったの?」
「ち、違うわよ! そんなわけないじゃない!」
うん、そうか。ルックって嘘がつけないんだな。
三人で廊下を歩いていると、廊下の大きな柱の影に見えた物。ロイスと女の子だ。次の瞬間。
「え……?」
女の子からロイスに抱きついたのだ。まぁ、べつにそこまでは良い。けれど、ロイスが女の子の方に手を回し、耳元で何かを囁いた、ように見えた。
「リリー、どうしたの? そんなところに立ち止まって」
アリアに声をかけられ、ハッと我にかえった。私と二人の差は数メートルほど開いていた。と、いうことは、私かなりの間覗いて……。
「ごめん、ごめん二人とも」
「何かあったの?」
「いや、なんにも」
ロイスも、ごめん。




