茶番劇
「私 たちに魔力……?」
「僕たちに魔力……?」
ハモッた。見事にハモッた。これぐらいなら有名な合唱団にでさえ勝てる気もしてくる。
「私も驚きましたよ。あなた達に魔力があるなんて。しかも強力なね。他人の心を読み取るなんてそうそうできる事じゃないわ。やっぱり偉大な魔法使いは違うのかしら」
バロアが言った。
「まぁ、人間たちは魔法使いはおろか、魔界の存在にすら気付いていないのですがね」
「え、じゃぁ……」
「その通りよ。アリア。あなたは本当に飲み込みが早いわ。そう、実は私も魔法使い。人間界にいるのは基本、悪魔祓師よ。まぁ、人間にバレないように仕事をしなきゃいけないから、人間界にいるのは気は基本私のような年寄りばかりなのだけれどね」
「う~ん。まだバロアは若いと思うけどねぇ?」
「あら、そうかしら?」
ロイスは何を言っているんだか……。館長は今年でもう65歳になるというのに。
「ロイス、やめなさい」
「何で? 僕は本当のことを言ったまでだけど? アリア」
女の人は全員名前呼び。そしてできるだけ優しく紳士的に。それがロイスのモットーで、孤児院のほぼ全ての女子がその毒牙にはまっていた。爽やかな水色の髪、目が合うと、本当に吸い込まれてしまいそうになる紫色の瞳。男子野割には細身。紳士的なうえに、見た目も良い。アリアと私は、その心が読めてしまうから、甘い罠には引っ掛らなかった。
私たちが見た、ロイスの心の奥。それはたった一言。
「誰でもいい。僕を愛して」