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入学式 下

「何でこうなった」


そう呟いた俺はロビーを見渡した。

理事長の問題発言のあった入学式は俺の混乱とは裏腹に何事もなく進んでいき、あっという間に終わってしまった。

そして今はクラスごとに集まって担任から学校の詳しい説明をしてもらう筈なのだが。


「なんでこの学校、今のところ宿舎とお店しか出来てないんだよ、教室はどうした!?」


そう学校のはずなのに[ここ]には教室がない。

あるのは生活必需品がほとんど揃う購買。それとまるでホテルのような宿舎が複数建っているだけだ。


「うわーここの宿舎は豪華だね!!」


「気にするところはそこなのか………」


「だってこんなに豪華なところ来た事ないもん、さすが私立だね!」


「いや彩、普通は私立でもここまで豪華じゃない。

宿舎にコンシェルジュや執事なんているわけないだろ?」


ホテルのようとさっき表現したが機能的に言ったらこの宿舎、たぶん並のホテルより優れている。

設備が揃いすぎて若干引くくらいだ。


「う~確かに……少し気になるね、ちょっとコンシェルジュさんに質問してくるよ!」


軽快に俺から離れていく彩だがコンシェルジュさんに聞かなくても先生から説明はされるだろうに………………


「しっかしなんで皆、混乱してないんだ?」


そんな場所にいる俺は不信感を募らせているのだが、彩を含めるクラスメイト達はまったく気にしないでテンションが高いまま騒いでいる。


「それはね、各校の先生たちが学校と連絡しあって受験に受かった生徒たちにあらかじめ説明してたからだと思うけど?」


横に移動していた玲がさも当然というように答えた。


「それは本当か?俺、知らないんだが」


「あれ?僕は説明してもらってたからてっきり貢もかと思ってたよ」


「あ、ああ……そうなのか………」


ようするに俺だけハブられたみたいなもんか。

確かに卒業、担任から

「お前は確実に混乱する事態が起こると思っておけ。

そしたらとりあえず小田原に聞いとけばなんとかなるから大丈夫」

と笑いながら言い放っていたな。


あの野郎、俺にさんざん弄られてきた仕返しを最悪な形で返してきたようだ。

本当に最低限のことしか教えなかった担任の高笑いを想像し軽く殺意が湧いた。


「とりあえず成人式で覚えとけよ、さんざん弄り倒して黒歴史思い出させてやる」


「あははは、それでも貢はここにきたと思うけどね」


「まあそうだろうな、こんな面白そうなことは中々ないと思うし俺の憧れの寮制だからな」


「やっぱり選ぶ理由が寮制かどうかなんだね…」


まあ寮を選ぶことにも理由があるんだがそれは今言わなくてもいいことだ。

玲も知っているからその話題には極力触れないようにしてるっぽいしな。

いつの間にか帰ってきていた彩は横で話についてなくて首をかしげている。

その仕草が実に犬っぽい。


「学校といえばさ、この学校1クラス30人なんだね」


「私も~30人8クラスだと思ってなかった!」


会話に入れなかった彩が話題が変わった瞬間に反応した。

話せなくて寂しかったんだろうか?本格的に犬っぽいな…


「クラスの人数にも理由があるんだろうな」


「どんな理由なんだろーね?生徒が単純に240人で40人の6クラスでも良いのにね~」


彩が言うように何故だろうか?

割と気になる。


「まあ理由はどうであれ貢と彩さんと同じクラスで僕は

良かったよ、知らない人だけだと話せないし」


確かに玲は初対面の人とあまり話が出来ないからな。

稀に物凄い剣幕で会話に入ってくることがあるけど。

その時は何故か女の子といい雰囲気の時ばかり。そして会話が終わっても玲は不機嫌なんだよな。

女心と玲の心は複雑だ。


「ねぇねぇ」


彩が服のすそを引っ張ってきた。


「なんだ、彩?」


「そろそろ担任の先生来る頃じゃない?」


「そうだな、そろそろ時間だしな」


「あ!見て、みっちゃん!」


彩がそう告げたとき、

ギィーと扉の開く音がしてそちらへ振り返る。


そして何やら重そうな荷物を持って現れたのは


可愛いうさみみ幼女だった。


「うんしょ、うんしょ」


少し引きずりながらも頑張って荷物を運んでいる。


「幼女じゃねぇか!?」


「ごめんねみっちゃん。先生じゃなかったみたい、早とちりだったよー」


「ま、まあ誰でも間違いはあるからな。

でそこの女の子、こんなところにどうしたんだ?迷子か?お母さんはどうした?」


俺の質問にうさみみ幼女は「女の子?」と首を傾げて何やら理解してないような反応をしたが、すぐさま理解したのか顔が真っ赤になり涙目になった。


「貢がいきなりたくさん質問するから泣きそうじゃないか」


「え?これ俺のせいなの?」


「そうだよ、こんな幼い女の子泣かせるなんて駄目だよ」


「そうか……すまんな、怖がらせて大丈夫か?」


うさみみをプルプル震わせている幼女は俺の謝罪を聞いて口を開き








叫んだ。


「誰が幼女ですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


ビク!?

突然うさみみ幼女が暴れだした。

うさみみ幼女ご乱心である。


「私は立派な大人のレディーですぅぅ!」


「嘘だろ?どうみても小学生じゃねぇか」


「誰が小学生ですかぁ!!」


俺の呟きに過剰な反応をしながらうさみみ幼女?は必死に否定している。まあ幼女がジタバタしながら叫んでも和むだけなんだけど。

そんな時俺はある一つの考えに至った。


「な、なあ、玲」


「え、何?」


「もし、この子が本当に大人だったとするとさ」


「うん?」


「こ、この子が俺たちの、た、担任なんじゃねぇの?」


「え?こ、この子が、ぼ、僕たちの担任?」


「ごめん、ないわ」


「そうだね、ないない」


「担任ですよぉ!」


「担任?この子迷子なんじゃないの?みっちゃん」


「入学式会場で親とはぐれたんだろう、たぶん迷子だと思うぞ彩」


「わ·た·し·はこのクラス担任のリリシア·フュールですぅ、ばっちり大人なんですぅ!」


え?


「ははは、冗談の上手いお嬢ちゃんだ」


「お嬢ちゃんじゃないですぅ!私はもう22歳なんですよぉぉ!!!」


……………

………………………………

………………………………………………………


「「「ええええええええええええええ!?」」」


俺のふとした質問をこのうさみみ幼女が答えた時、あの理事長の言葉をすんなり受け止めることが出来た屈強なクラスメイト達全員が驚きに声を荒らげた。





…………………………………………………………………………………


「先生、悲しいですぅ…………いくら外見が幼いとはいえこんな仕打ち酷すぎますぅぅ」


「「「すいませんでした!」」」


余程自分が担任だと信じてもらえず、驚かれたのがショックだったのだろう。

さっきからロビーの端に座って重々しい雰囲気を醸し出している。

たぶん外見がコンプレックスだったんだろう。

相当ダメージを負っているようにしか見えない。


「先生、大丈夫ですか?」


「別に気にしてませんよぅ私大人ですからねぇ」


「そうですか。皆、先生大丈夫みたいだ。

ほら先生もはやく立ち直ってください」


「あ、はい」


「もう説明の時間過ぎてますよ?」


「えと、佐竹貢君でしたっけぇ…なんか私の扱い雑じゃありませんかぁ?」


「いえ気のせいです」


「ならいいんですけどぉ」


「あと先生って言うのも堅苦しいのでリリシアちゃんでいいですか?」


「誰がリリシアちゃんですかぁ!?もう扱いが雑だって見え見えじゃないですかぁぁ!」


「えーそうですか?俺なりの配慮だったんですけどね」


この男、中学時代もさんざん担任に迷惑をかけてきたが高校に入ってもその行動を治す気配すらないようだ。

リリシアは運が無かったと思うしかない。


「まあ貢は昔からこんな感じだもんね」


「仕方ない仕方ない」


「仕方ないじゃありませんよぅ」


「貢、先生をこれ以上弄らないで……

先生も学校の説明を待っている生徒も多いのでお願い出来ますか?」


「え?あ、そうですねぇ、分かりましたよぅ!」


先生と生徒の顔合わせで思いのほか時間を使ってしまったが(8割貢のせい)なんとか玲のおかげで説明を始めることが出来るようだ。


「では改めて自己紹介を、私は獣人系魔物ワーラビットのリリシア·フュールといいますぅ。

先ほども言っていましたがしっかりとした大人ですぅ。

よろしくお願いしますね、皆さん」


パチパチパチパチ

自然と拍手が起こる。


「皆さんありがとうございますねぇ♪

では学校の説明を初めて行きたいと思いますぅ」


本格的に説明が始まるようだが、




ひとつ質問

ワーラビットってなんですか?







最低でも週1のペースで投稿します!

出来れば週2にしたいなぁ………………………

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