入学式 中
俺たちのバスが学校に着いてから三十分後、
新入生の入学式を行う場所に案内された。
改めて周りを見ると聞いていたよりも格段に女の子が多い。
しかも美人揃い、中には金髪や銀髪、赤毛の子もいたりしたので外国からの留学生だろうか。
光海の入学式に着る服は決まっていない。
だから着物を着ている子や前の制服を着ている子、ドレスや明らかに男物のスーツを着ている子までいた。
日本以外の国の正装の人もいるようだ。
個性が目立ち過ぎる子もいるけど綺麗な人ばかり。
そんなところにいる俺は目を奪われていても仕方ないだろう。
もっとも俺の仕草を見て玲が強烈に蔑む目を貢に向けているのにも気がつかないという失態を犯してしまったが、仕方がないのでここは御愛嬌である。
そして(玲の蔑む目のせいで)暖かいはずなのに凄い寒気に襲われた俺は女の子たちから目を離し、男どもの方を見た。
女の子たちが格段に多いということは男どもが圧倒的に少ないということ。
最初は4分の1くらいはいると考えていたが、いざ目にするとそれよりも少ない。
五十人もいないんじゃないんだろうかというくらいだ。
何故そんなにはっきり分かるかというと、
この学校の入学式は最初から席についたまま始めるみたいで席も自由。
こちらも初めての入学式だが、学校側としても初めての入学式。考えた末に席についたまま始めるようにしたんだろう。
もちろん家族は違う席に案内されるが、やはり男子と女子は自然にわかれてしまう。
だから人数の差が目に見えてわかるのだ。
「これは多過ぎだろ…………ほぼ女子校みたいなもんじゃねえか」
「そうだよねぇーこんなに女の子が多いとは思ってなかったよ」
横の席に座っている玲も驚いている。
「でもお前オープンキャンパスに行ってきたんだろ?」
「その時は男子も多かったんだよ。その時はまさかこんな風になると思わなかったんだけど」
「ふーん、てことは学校側としては良かったんだろ」
「そうだろうね」
学校側は女子校か共学か揉めていたらしいので、女子校派の人達からすると良かっただろう。
俺からすれば男子の立場から少しこの後の学校生活に不安になるが。
「ねぇ?横座ってもいいかな?」
玲とたわいもない話をして時間を潰していると後ろから声がかかった。
聞いたことがない声に少し驚きながら俺は後ろを向いた。
そこには、
銀髪の小柄な女の子が立っていた。
「女の子側の席がもう無くってさ。」
確かに見てみると空いてない。
たぶん席をとるのが少し遅れたんだろう。
どうしても遅れた人は席がないので男どもの方へいかざるおえないようだ。
「別にいいよ、どうぞ」
「ありがと!ここ座らないと後は男の子側の前の席しか空いてないから助かったよ」
「確かにそうだな、それは可哀想だな」
「でしょ?だからありがとねー!」
そう言ってキラキラとした笑顔をこっちに向けてくる。
綺麗な銀髪が目を引く可愛い女の子なので一つ一つの仕草が様になっている。
「別にいいよ、こういう時はお互い様だ。で、こういう時は自己紹介した方がいいか?」
「あ!自己紹介してなかったね。私は塚原彩っていうんだ」
「俺は佐竹貢だ、で横にいるのが小田原玲」
「よろしくね、塚原さん」
「塚原さんだなんてー彩でいいよ?」
「そうなの?じゃあ彩さんって呼ばせてもらうよ」
「じゃあ私は玲ちゃんにみっちゃんて呼ばせてもらうよ」
この子中々残念なネーミングセンスをお持ちのようだ。
外見だけを見ればクールな子っぽくてセンス良さそうなんだが。
まあ外見と中身のイメージが合っている人なんて少ないからな。
「俺はめんどくさいから彩って呼んでもいいか?」
「いいよいいよ!何ならあややとかでもいいよ?」
「いや呼ばないからな」
「えー呼んでもいいのにー」
この子はあらゆる意味で残念なのかも知れない。
なんかとても愛らしくて人懐っこい犬みたいなイメージが今、彩に定着しそうだ。
見た目とのギャップが凄いな。
あと見た目といえば……………
「彩って綺麗な銀髪してるけど何処かのハーフか?」
「髪を褒めてくれてありがとーね!クオーターなんだ~おばあちゃんがロシア人なの。ほら目は青色でしょ?」
なるほど。
それで綺麗な銀髪と青い目をしてる訳か。
「目も綺麗だな」
「そ、そう?」
「ああ、羨ましいくらいだ」
「えへへ、この髪とこの目は大好きなおばあちゃんと一緒だから私の誇りなんだ!」
彩は照れているみたいで手を頬に当てながらはにかんでいて本当に嬉しそうにそう言った。
その様子から見てもどれほど大事にしているか分かる。
その仕草に貢は見とれてしまっていた。
そんな二人の雰囲気を壊すように玲が言った。
「ちょっと、そこのお二人さん?始業式が始まるよ?」
「あ、ああ!そうだな、忘れてた」
危なかった、もう少しで気がつかないところだった。
さすが玲だ、いつも俺が抜けているところをフォローしてくれると言おうとしたが何故かそっぽを向いていた。
何故か少し機嫌が悪いみたいだ。
ブツブツ「貢の馬鹿、可愛い子に鼻伸ばしちゃってさ」
「?なんか言ったか?」
「何もいってないよ!この朴念仁!!」
「おう?す、すまん」
やっぱり機嫌が悪い。
今回はどうして機嫌が悪いか分からないので後からパフェでも奢ることにする。
玲は甘いものが大好きだからな。
そして…
「目と髪褒められた~嬉しいな♪」
こっちはこっちでトリップしたままだ。
もう始業式がはじまるのですぐに呼び戻す。
「おい、彩?もう始まるぞ?」
「ふえ?あ、そ、そうだね!教えてくれてありがと」
「どういたしまして」
本当は俺も玲に教えられたんだけど今は気にしない。
またややこしくなるだけだからな。
そして俺達が前に向き直ったとき壮大な音楽がかかった。
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「入学式を始めます」
その言葉と共に入学式が始まり生徒一人一人の名前が呼ばれる。
そしてそれが終わると父兄代表からの挨拶へと繋がり、
生徒代表の言葉も筒がなく終わった。
あとは最後の理事長のお言葉だけである。
たぶん今から壇上に上がろうとしている人が理事長みたいだ。
てっきり、おじさんかと思っていたが見る限り20代前半くらいに見える女の人だった。
若くして学校を立てるくらいだから余程才能があるのか、お金持ちなんだろうか。
とりあえず話を聞いてみようと耳を傾けた。
そして第一声、
「この学園は人と魔物とがこの世界で初めて共に通う学校です!」
は?