処刑の時間
鉢
結局ぼくは処刑が決まったその日すぐに地下へと閉じ込められたため、執行の日まで何もアクションを起こせなかった。クドも一緒だったのだろう。クドからのアプローチも一切なかった。でも、これならそこまでの問題はない。
そんな事を考えていたら、鉄の重そうな扉がゆっくりと開いた。そこから顔を出したのは、クドリャフカ遊撃隊長。そして、リヒャルト狙撃隊長だった。
「来い落ちこぼれ。処刑の時間だ」
感情のこもってない声でそう告げたのは、クドだった。きっと辛いだろうし、きっと悲しいだろう。けれども、こうしなければ、クドの立場が余計危うくなる。ぼくなんかの為にクドはどうにかなるべきではない。
ぼくは立ち上がらなかったが、クドとリヒャルト狙撃隊長に肩を担がれ、無理矢理外に出された。
その後は悲惨だった。処刑用に身体を縛るために受け渡されたぼくは、抵抗していなかったのに殴られ、蹴られ、踏まれ、そして縛り上げられた。万が一でも生き残らないように、全身を痛めつけ、太い縄でぐるぐると縛り、足に重りをつける。たかが1人の落ちこぼれの処刑にここまでやるとは、やはりもう大婆様には余裕がないようだった。
ぼくは、地下を出てから一切話さないでいた。クドも声をかけてこなかった。けれども、怒りを飲み込んでいたようにも思えた。それは何故か、リヒャルト狙撃隊長も一緒だった。
色々と考えている間に準備は着々と進んでいた。大きな木とぼくを細いロープで繋いで、吊るすようにした。このロープを切ればぼくは下へ落ちるし、処刑の際に近付く必要がない。非常に合理的な作りだ。
「落ちこぼれ」
手際のよさに軽い感動をしていると、クドから声をかけられた。
「なんでしょうか」
「最後は俺だけで処刑を行うが、処刑台のセッティングまでは、他の者にも手伝わせる。構わないな」
「はい」
このやりとりが最期のやりとりになる可能性だって考えられるのに、クドはやけに冷静だった。気の利いた言葉でもかけてくれてもいいものじゃないかと思ったが、部下がいる手前、変な言葉は発せないのだろう。
そして、クドが言った通りに、他の隊員がぼくの輸送を始めた。これも嫌な運命だろうか、その中には、ウサギばかり獲るなと言ってきた奴も混ざっていた。結局そいつの名前を知ることはなかった。




