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始動胎動  作者: 未優
3/12

アルベルト元部隊長

ぼくは集落全体から落ちこぼれと呼ばれている。それなのに、ぼくが集落全体から期待され、信頼されているクドリャフカ狩猟部隊にいるのにはわけがあった。狗族と言うものは本来、集落の中だけで子孫を増やす。だから、例え同じ狗族であっても、違う集落の者とは深く関わることがない。しかし、クドは昔、どこの集落からも捨てられていたぼくを狩猟途中に助け、さらに集落に招き入れたのだ。

当時のクドはまだまだ下っ端だった。当然そんなことは許されるはずはなく、集落全体から非難を浴びていた。その頃のクドをぼくは知っている。何を言われようと志を曲げない強さを知っていた。けれども、それだけでは狩猟部隊長になり得ることはない。しかしながら、ある事件をきっかけにクドは一気にその地位をあげることとなった。

それは、彼がまだ遊撃隊の一員だった時、今は亡きアルベルト狩猟部隊長の元で狩猟をしていた頃に起こった。アルベルト部隊長は、集落で他に見ないほど強かった。しかし、自らが強いが故に、狗族の最大の武器である協力を欠いていた。その事件の日も、原因はアルベルト部隊長の判断ミスだった。


その日もアルベルト狩猟部隊は、いつも通りに狩りへと出発した。その時の部隊員で生きているのは、クドリャフカ、リヒャルト、そしてぼくだけだ。

その日は、絶好調だった。部隊全体のムードも非常に良く、ぼくもボウガンでウサギなどの小さい獲物を仕留めていた。

「落ちこぼれ! お前そんな小さいの狙ってないで、もっとでかいの狙おうぜ! このアルベルト様が居りゃ大丈夫だ! まぁ、ウサギの肉は干し肉に適してるから必要なんだけどなぁっ!」

と、ウサギを捕まえたぼくの背中を叩きながら、アルベルト部隊長は言った。彼は、本当に彼が居るから安心できると言っても言いほど強かった。ぼくはその時から今まで、仲間の力を借りずに龍族と真っ向から戦い、勝利した狗族を知らない。

アルベルト部隊長自身も、龍族に勝利したと言う事で、自分の強さを過信していた。だからこそ、注意力が落ちていたのだろう。

「おお! 見ろよ、クドリャフカ! あそこに小さい水牛がいるぜ! お前、若い水牛の肉大好きだったよな。俺様が獲ってきてやるよ!」

そう言ってアルベルトは走り出した。直後、違和感を感じたのはリヒャルトだった。

「待て! アルベルト! 何か様子がおかしい!」

水牛は本来警戒心が異様に高い生き物だ。アルベルトが見つけた時点で逃げ出してもおかしくなかった。なのに、その水牛は何故かぴくりとも動かなかった。

リヒャルトの声はアルベルトに届いていたのか、それも今となってはわからない。

狗族の天敵は虫族だ。彼らは狩りをする狗族に対して、狡猾な罠を仕掛け、部隊まるまる連れ去ってしまう。特に蟻と呼ばれる虫族は、長期間一箇所に留まるため、狗族のどの部隊がどのような獲物を主に狩っていくかを覚え、的確に罠を仕掛ける。

アルベルトは、部隊員の好きなものを積極的に仕留める癖があった。特に、若い水牛などは好む者が多いので、どんな時でも狙っていた。それを蟻は知っていたのだろう。

結論から言うと、アルベルトはそこで死んだ。地中に潜伏していた蟻が、飛び上がったアルベルトの身体を一撃で噛みちぎったのが原因だ。ぼくたちはここで何度も水牛を獲っていた。だから、その時にぼくたちがどんな陣形をしているか、どこに隊長レベルの隊員がいるか、蟻は理解していたのだろう。アルベルトが噛みちぎられるとほぼ同時に、他の蟻たちによって、遊撃隊長、狙撃隊長、捕獲隊長が一斉にやられた。

そしてこの時、部隊へのダメージと司令中枢の麻痺により、一瞬で部隊は壊滅状態まで追い込まれた。本来、個々が自ら考えて行動していればもっと被害は抑えられていたはずだったが、この部隊はアルベルトに頼りすぎていて、行動できたのはクドリャフカ、リヒャルト、そしてぼくだけだった。他の隊員は全員、噛みちぎられ、息絶えた。

その後の話は、ぼくは気を失っていたので、聞いた話になってしまうが、クドリャフカとリヒャルトがそこにいた蟻を全て撃退し、たった2人で、蟻の死体全てと、部隊の死体全てをかかえ、集落に帰ったとされている。

その時の事を評価され、クドリャフカとリヒャルトは集落の中で不動の地位を得ることとなった。ぼくは、気を失っていたとはいえ、一緒に生還したもの。さらに、クドリャフカとの信頼関係をかわれ、クドリャフカ狩猟部隊にいれられた。

ぼくは関係ない。けれども、集落の英雄2人がいる部隊に集落全体が期待するのは仕方が無い。

そして、クドは、アルベルトの様な事が二度と起こらないように、積極的に協力をし、部隊全体で狩ることを大切にしている。

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