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始動胎動  作者: 未優
11/12

落ちこぼれ

獣二

「大婆様。なぜこのような事をしたのですか」

クドリャフカはそう大婆様に尋ねた。蟻と魚は情報を漏らさないためか、動けないようにしたところで自害してしまい、話を聞けるのが大婆様だけになっていた。クドリャフカとリヒャルトに迫られて、大婆様はゆっくりと口を開いた。

「大婆様……ねぇ。悪いけどな、お前のところの大婆様と族長は、殺してしまったよ。本当は集落まるまる潰すつもりだったんだけどねぇ」

一瞬、何を言っているのかわからなかった。しかし、その言葉に反応して、リヒャルトが剣で大婆様の頭の上を振り抜いた事で、真相が見えた。

「狸……化かしていたのか!」

「そうだよ。アルベルトの奴を殺してからずっとな。なんとかして落ちこぼれを始末したけれども、お前は死んでくれなかったねぇ……。うん。雇い主の情報は流さないよ。これでワシもこの世からばいばいじゃ」

そう言って、狸は自分の尻尾を刃に変えて、自らの頭をかち割ってみせた。

結局、なぜこんな事をされたかがわからないまま、終わってしまった。落ちこぼれの事をぶつける先もなくなってしまったし、きっと集落の奴らは大婆様と族長を同時に失ったショックで、暫く機能しないだろう。

「クドリャフカ。落ちこぼれの家の地下に、蓄えがある。お前が族長として指示をだせるようになるまではそれで凌ぐんだ」

途方に暮れかけていたところで、リヒャルトがそう告げてきた。

「って、落ちこぼれからの手紙に書いてあった」

驚いてリヒャルトの方を向いたクドリャフカに、リヒャルトの手から一枚の紙が渡された。宛先はリヒャルトとクドリャフカ、書いた者は……。

「落ちこぼれ、いつの間にこんなものを」


「リヒャルト狙撃隊長。クドには既に指示を出してあります。恐らく、クドはそれに従って、今日の夜更けに水源の方で苦戦をしいられるでしょう。それをどうか助けてあげてください。そこには蟻もいます。普段は使わないような武器も持って行ってください。事が済んだら、クドが族長になると思います。リヒャルト狙撃隊長は、それを全力でサポートしてあげてください。そして、しばらくの間は、ぼくの家の地下にある蓄えを、集落のみんなで分け合って、協力して生きてください。リヒャルト狙撃隊長にこの手紙が届く頃には、すでにぼくは死んでいると思います。お願いばかりで申し訳ありませんが、クドリャフカをよろしくお願いいたします」


見間違えるはずもない。落ちこぼれの字だった。落ちこぼれは、死ぬことで、この会合を引き起こし、そして、集落を守ってくれていた。それに、集落の事を案じて、蓄えまで用意していた。

クドリャフカの目からは、自然と涙がこぼれていた。

「落ちこぼれは私たちの命の恩人だろ。アルベルトの時も、今も」

リヒャルトはクドリャフカの方を見ないで、そう呟いた。

今回の戦いは、結局のところ、ほとんど落ちこぼれの指示で事が進み、そして、落ちこぼれの指示が功をなして勝利できた。

「やっぱり落ちこぼれには不思議な力があったよ。案外、大穴に落ちても生きてたりするんじゃないか?」

クドリャフカはリヒャルトの言葉に返事をしなかった。いや、涙が溢れて返事ができなかった。

「きっとあいつは、アルベルトの時に、気を失ったのを私じゃなくて自分自身って事にした時から、この事まで勘付いていたのかもしれないな」

それほどの事ができて、それほどの予想を立てられていたのに、どうして死ぬ必要があったのだろうか。

この日は、日が登るまで、どこかで泣く声が聞こえていた。

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