最終話
とりあえず今起きていることを整理してみよう。
朝起きたら全裸の女の子が一緒に寝ていた。
言葉にしてみればただそれだけのことなのだが、実際にわが身に起こったら何が何だかわからない。
まじまじと少女を見る。
銀髪、貧乳、裸ティーシャツ……やはり良いものだな。
しかし僕が半裸になる必要はあったのだろうか。
平常心を取り戻してきたので僕の方から切り出した。
「で、胸の無い君は一体何者?」
「女性に対していきなり貧乳とかデリカシーの欠片もありませんね。だからオタクで童貞なんですよ」
「おおおオタクちゃうわっ!」
何気に心を抉られたような気がする。
「そっちは否定しないんですね。というかこの部屋の在り様でオタクではないと否定されても説得力がありませんよ。そんなだからオタクで童貞で彼女いない歴イコール年齢なんですよ」
アニメのフィギュアやポスターを横目でチラリと見てから少女は言った。
「なんかさっきよりひどくないか……」
最初の緊張はどこへやら。
「細かいことは気にしないでください」
細かくはないような気がするがここは気にしないことにしておく。
ふと僕はこの少女の名前を知らないことに気付いた。
「そういえば君の名前は?」
相手の心と距離を近付けるのに必要なものだ。
名前できさくに話しかけてみれば、対応も柔らかくなってくれるのではないかと思った。
ピクリと少女の眉が上がったような気がした。
一瞬間をおいて少女は言った。
「私はアールエックスななじゅうは……」
「ガ○ダムだねぇ」
突っ込まずにはいられなかった。
このベタベタなノリはどこかで感じたことがある。というよりいつも感じているような……。
そんな僕の小さな疑問など「取るに足らない無い」というように。まあ実際取るに足らないことなのだが、少女は胸に手を当てて無機質に答えた。
「私はマスターのお父様によってマスターの所持しているギターから作られました。アンドロイドのGT零型です。改めてよろしくお願いいたします」
「そうだねー。突っ込みたい所がいっぱい出てきて大変だよ」
話なんとなく見えてきた。
朝起きたら僕の理想の女の子がベッドで一緒に寝ている。
事件を確認した瞬間、僕の頭の中で色々な予測が駆け回りました……駆け回りましたとも! そこらへんのしょうもない高校生が、無い想像力絞って色々妄想しましたよ。
とりあえずクラスの女子ではない。親戚にもこんな子はいない。
実際「起きたら女の子と同じ布団で寝ていました」とか軽くホラーだよな。
それらの予想は最悪に近い形で外れたけれどもね。というより誰が予想できるんだこんなもの!
言葉は矛盾してしまうが、案の定予想外だよ!
「父ちゃん……。元凶はあんたかい」
エキサイトする僕の脳内と反比例して、口から出た言葉に力はこもっていなかった。
「好きやろ? そういうの」
幻聴までするようになったのか、他人の神経を逆撫ですることに特化した父の声が聞こえたような気がした。
気がしただけだ。
「好きやろ? 可愛い女の子」
聞こえた気がしただけなのに……。
「なんで部屋の前に立ってんだよおおおおおおおおおお!」
すりガラスの向こう側に仁王立ちしている父がぼやけて見える。
「好きやろ!?」
叫ぶと同時にバン、とドアを開けて父が登場した。
「いきなり登場しといて悪いけどな。このお話はこれで最終回や」
ポカン……。
一体何が起こったんだろうか。
「父ちゃん……。一体何言ってんだよ」
「せやから言うたやろ。これはお話……つまりここは小説の世界や。おかしいと思えへんか? 朝起きたら横に全裸で女の子が寝とるわ、それに対し健全な青少年が欲情するどころか絶対必要無いような会話しとったやろ。そして仕舞には関西弁の父親の登場! まあ解らんでも無理はない。しかしこの有様はなんや!」
もう何から聞いていいのか解らない。
「有様って……?」
「この話ができたのは何時やと思う? たった今や! 一話目が投稿されたのは七月やで。こんな小学生でも作らんような行き当たりばったりなお話を作るのに三ヶ月以上もかかってるんやで!」
父は続ける。明らかに怒っている口調で。
「それもこれで終いや! 打ち切りや! 途中放棄なんてさせるかい!」
言うやいなや、父は着ている作務衣のポケットから明らかに爆弾と解るそれを取り出した。そしてそれを見た瞬間、さっきまで無表情だった少女の表情に焦りの色が浮かんだ。
「お父様、それは……」
「強制終了型爆弾『ウチキリ』や……。これはな、どんなお話でも大団円で終わらせてくれる優れもんやで。そしてそのトリガーは皆知ってるあの言葉や!」
「やるのね……あなた」
いつの間にか母まで僕の部屋にいた。
「せや……。おまえ、秀二、それにギタ美……すまんな。こんな事に巻き込んで……」
ああ、この子名前あったんだ。それにしてもそのネーミングセンスはどうにかならなかったのか?
……まあでも。
「気にしないでよ父ちゃん。僕は好きだよ、そういうの」
「ええ。こういう体験、普通はできませんもの。あなたと結婚してよかったわ」
「私も全く問題ありません。それとマスター、これが終わったら結婚しましょう」
「そういうのはいいから」
それを聞いた父は照れくさそうに「ありがとうな」と言うと、爆弾をセットした。
「じゃあ皆、準備はええな? いくで!」
僕らは力強く頷く。
そして…………あの言葉を…………言った。
「「「「ご愛読ありがとうございました」」」」
くぅ~疲れましたw これにて完結です!




