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四神の枯れない花  作者: 月影 朧
玄武の花

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2/4

条件


 雪が降る日々が続きとうとう売りに出す野菜が採れなく成ってしまっていた頃

集落の隅に有る寺に全員が集められたのは咲が居なく成ってから七日後だった。

武史と椿が寺に到着し最後に花と幸生が入って来た。

「集落の皆さんに集まって頂いたのは今年に起きている不作、不漁、事件、飢餓についてです」

集落の全員が集まったのを確認し、住職が話を始めると周りはざわつき始めた。

そこへ一人の身なりの良い男が入って来た。

「貴方は」

市で花と椿の事を聞いて来た男達の一人が入って来て武史は驚き声を上げた。

「この方は領主様の代理で来られた田中殿です」

田中と呼ばれた男は礼をして集落の全員を見た。

「皆さんは昔、生贄を山に捧げていた事を知って居ますか?」

突然、生贄と云う言葉を聞き年老いた民は青ざめていた。

「今回の北の山での異変を治めて頂く為に生贄を北山の神に捧げる事になりました」

淡々と話す田中に民は皆怖がっていた。

「色々な文献などで調べたのですが、北山地方では決まりが無く昔、南山地方で有る条件を満たして平和に成ったとの文献を発見し、我々もその条件で生贄を選んだ」

誰も声が出せないで居たが幸生が

「この集落から生贄を選ぶのは何故ですか?」

弱弱しい声だったが、集まった人々には聞こえた。

田中は幸生を見てから少し微笑み

「まだ選ばれた訳では無い、生贄候補とでも云って置こう。今、私の様に北山地方の各集落には説明を行っている。各集落から一人を選び候補とし、九人を他の場所で生活させ、その中の一人を生贄に決める」

まだ条件を言われて居ないせいか自分が候補に成るのでは無いかと皆、疑心疑心暗鬼に成って居た。

恐る恐る武史が聞く

「南山地方の文献ではどんな条件の人が選ばれたのですか?」

一瞬、周りが静かに成り恐怖で震える目で田中を見ていた。

田中は少し間を置き話始めた。

「今回、参考にさせて貰った南山地方の条件を少し変えて九人としたが、歳は二十歳までで夫や子供の居ない美しい娘だ」

田中から条件が伝えられた瞬間、集落の人々の目は三人に注がれた。

しかし三人の中の一人はまだ十一歳だった。

「最近色々見て来たが、この集落で花、椿どちらかを候補として連れて行こうと考えている」

椿と花は自分達の名前を言われ混乱していた。

「そんな・・・・」

武史は何気なく聞かれた事が生贄の条件だったと知り、自分が情報を言ってしまった事を後悔した。

田中は二人を見てから静かに言った。

「花、椿、甲乙つけがたかったが領主様や他の者と話し合った結果」

其処まで言ってから椿の側まで歩き椿を見てから

「椿を候補として連れて行く」

そのまま椿の腕を掴んだ。

「い、いや」

椿は小さな声で拒否して首を振るが男の力が強い。

田中の言葉に数人の体格の良い男達が入って来た。

「この娘だ、連れて行け」

男達は椿の元にゆっくりと表情を変えずに近付いた。

椿は抵抗したが男達の力には適わない。

「何故、考え直して下さい田中様、花、椿以外で」

武史がそこまで言うと言葉が止まった。

椿、花以外だと十一歳の少女に成ってしまうからだった。

「娘で無いと駄目なのですか?私なら生贄に成れます」

手を挙げたのは幸生だった。

「私の話を聞いて居たのか?生贄は若い娘だ。さあ連れて行ってくれ」

田中の合図で椿は男達に抱えられ外に出て行った。

「誰か、連れ戻すのを手伝ってくれ」

椿を追いかけながら武史が後ろを見ると人々は顔を伏せて見ない振りをしていた。

「兄さん」

椿が手を伸ばし武史に助けを求めるが男達に阻止され籠に無理やり乗せられた。

武史も椿の手を取ろうとするが男達に殴られ倒れてしまっていた。

椿の乗った籠は足早に何処かに行ってしまった。

項垂れながら寺に戻り武史は怒りを露にした。

「何で、何で誰も助けてくれなかったんだ」

泣き崩れる武史を花と幸生が抱える。

「まだ椿が生贄に成ると決まって居ない、だけど誰かが犠牲に成って北山地方が助かるのならお願いするしか無いのだ」

「自分が助かる為に他人を犠牲にするのか!」

武史は勢い良く寺から出て行った。

「武史さん」

花は武史を追いかけようとしたが幸生に止められた。

「花、もう遅い私が武史を探して来るから花は家に居なさい」

花は泣きながら頷くしか出来なかった。

幸生が武史を見つけたのは領主の屋敷前だった。

「武史」

武史は何度も屋敷に入れてくれと交渉して居たが門番に断られ土下座をしていた。

「何度言われても此処には生贄候補は居ない」

門番の冷たい声が響いた。

武史の周りには同じ様に娘を連れて行かれた家族が居た。

幸生は武史の肩を掴み立ち上がらせ

「一度、家に帰ろう」

声を掛けるが武史は固くなに帰ろうとはしなかった。

籠から出された椿は目の前の大きな屋敷に驚いて居た。

「ここは?」

「場所は言えない、今日から此処で他から来た娘達と生活して貰う」

田中に言われ屋敷の中に入る。

椿は屋敷の綺麗さに汚れた着物で中に入るのに戸惑って居た。

一室に通されると泣いて居る娘が椿以外に八人座って居た。

「貴女が最後の椿ね」

老婆が声を掛けて来た。

椿は驚き老婆を見て頷き、促されるまま座った。

娘達を見て貧乏な家の娘だけではなく身なりの良い娘も居た事に椿は驚いて居た。

「先ず、その身なりを清めさせて貰います」

老婆が言いながら手を叩くと女性達が何人も部屋に入って来て椿達を連れて行った。

屋敷の裏側に連れて来られた椿達は着物を脱がされ温泉に入れられた。

身体、髪を何度も念入りに洗われる。

「あの、自分で出来ますから」

恥ずかしくて言うと女性達は一度顔を見てから

「私達の仕事ですから」

それだけ言ってまた洗い始めた。

何度も洗われた身体は赤く成って居たが赤みが引くと肌は白く髪はさらりとして居ると感じていた。

着て来た着物は捨てられ見た事も無い上等で奇麗な着物が用意されていた。

着物を着せられ、老婆が待つ部屋に戻された。

「皆さん奇麗に成りましたね」

微笑む老婆とまだ涙が止まらない娘達

「これからの事を話しますので良く聞いて下さいね」

娘達は老婆を見た。

「此処からは逃げられないと初めに言って置きます。外には武器を持った大勢の男達が昼夜番をしています。そしてもしも自害する様な事が有れば家族も同罪に成り各集落で最終まで残った娘が代わりに此処に来ます」

老婆の言葉に椿は血の気が引くのを感じた。

”もしも私が逃げれば兄さんが罪人に成り、花さんが生贄候補に成ってしまう”

考えれば考える程、椿は逃げられなく成っていった。

「今日はもう遅い、明日からは読み書きや色々な作法を教える。何か聞きたい事は?」

老婆が聞くと

「何故、私達だったのですか?もしも、最終の生贄に成らなかったらどうなるのですか?」

「各集落を見て回り、十三歳以上、二十歳未満で美しく清らかな娘、貴方達が選ばれた理由です。候補から外れた者は家に戻れるが、戻るかは貴方達の自由です」

老婆の言葉を聞き帰れるかもしれないと希望を持つ者も居た。

「貴方達は誰なのですか?」

北の山地方では見覚えの無い人々だった。

老婆は椿を見て微笑み

「名乗るのが遅れてすまない、私は外に居る男衆と皆の世話をする女衆のまとめ役でトキと云う。皆はおばばと私の事を呼ぶね。また聞きたい事が出来たら言いなさい。今日は疲れただろう、食事をして寝なさい」

トキが合図すると女性達が膳を持って現れ次々と娘の前に膳を置いた。

見た事も食べた事も無い豪華な膳に驚いて居るとトキは立ち上がり

「私が居ない間は自由に過ごして下さい」

それだけ言って部屋を後にした。

少女達は不安で食事が進まなかった。

「選ばれなかったら家に帰れるのよね?どうしたら選ばれないかしら」

寝る前の自由時間に一人の少女が言った。

「嫌われる様な事をするとか?」

逃げられないのなら選ばれない様にしようと考えているが、何を基準に選ぶのかさえ分からなかった。

「寝間の準備が出来ました」

女性に言われ寝間に行くと豪華で綿が沢山入っている布団が目に入った。

「凄い」

良い家の少女でも驚く様な食事や着物、布団に椿達は驚くしか無かった。

不安で仕方ないはずなのに柔らかく雲に乗って居る様な布団にいつしか眠りに就いてしまっていた。

翌日、女性達に起こされ身支度を整え終わると

「夢では無かったのね」

椿の言葉に皆が複雑な顔をしていた。

「本日から勉学と作法を教えます」

トキの言葉に

「何故、生贄なのにこんな事をするのですか?」

一番年下の少女が聞くとトキは微笑みながら

「花嫁修業だと思って下さい」

昨日とは違い優しい微笑みだった。

普段、畑仕事や漁の手伝いなどをしている娘達は読み書きが出来ない。

娘達は生贄の話が無ければ有難いと思い懸命に読み書きを覚えようとして居た。

昼になり、トキが一番年下の娘サエの前に座り

「本日、貴女は生贄候補から外れます」

トキの言葉に皆の視線が一点に集まる。

「え?」

サエの顔は嬉しいと云うよりも戸惑いが見られた。

トキはサエの顔を見て何かを察したのか

「家に帰る事も出来ますが、このまま私や世話役と共に居る事も出来ます。答えは今でなくとも良いですよ」

そして娘達に顔を向け

「少し話して置こうと思います」

トキの合図に世話人が茶と菓子を運んできた。

「奇麗」

初めて見る菓子が余りにも奇麗で美味しそうだったのか椿は思わず声を上げた。

「お茶や菓子を頂きながらで良いので私達の事をお話しますね」

トキは茶を一口飲み話始めた。

「私達はこの国の中央に有る山の麓から北の山地方の領主に呼ばれ来ました。古くから生贄に成る人を世話しています」

「でも生贄は長い間捧げられて居なかったのですよね?」

トキは頷き

「その時の為だけに存在する、私達の存在は各地方の領主が代々知っていて私達の事を裏家と呼んで居る。生贄の残った家族が生活出来ずに我々の所に来て世話人や警備人に成る事も有る、親に捨てられ子供の時に我々に引き取られた者も居る」

娘達は黙ってトキの話を聞いて居た。

その時だったサエが目に涙を浮かべて

「おばば様、私は候補から外れましたが、おばば様と共に居たい。だって帰る場所が無いから」

娘達は驚いてサエを見た。

「家には下に五人弟や妹が居る、候補に選ばれ私の食扶持が減り生贄に成れば家族に褒美が出ると聞いて親は私に絶対に生贄に成れと言った、だから帰れない」

そこまで言うとサエの目から大粒の涙が零れた。

トキはサエの頭を撫でながら

「辛かったね、しかし我々の所に来ても覚えないといけない、やらないといけない事が山ほど有るよ?」

「仕事はちゃんと覚えます」

トキは頷き世話人を呼んでサエを預けた。

「サエちゃんはこれからどうなるのですか?」

サエが部屋を出て行くのを見送りながら椿は聞いた。

「これから我々と共に生活しながら世話人としての教育をする、衣食住は保障するから大丈夫」

トキは優しく答えた。

残る候補は椿を入れて七人に成った。

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