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散歩


 水面の静匱で戦い続けた後、外に出ると、日時は経過して翌日に。しかし、まだ夜が明けたばかり。朝日が眩しい。綺麗な光景だけど。

 普通なら疲労と睡眠不足でフラフラになる所だがスキルとアビリティ、高いステータスの御陰で全く問題無い。無いから恐い。ワーカーホリックになる可能性がチラついている様に思えるから。


 先ずはカーンタラ湖の周辺に有る筈のアイテムを回収しよう。湖の北東の畔で対短剣[餓狼牙]を、そのまま北東に進み、カーンタラ山の麓、切り立つ崖をスコップで掘り、[大地の黒兜]を回収。


 湖の西側に移動し、西に向かって突き出した岬の先端で[流星の腕輪]を、其処から北上したら崖に囲まれた砂浜が有り、[星屑の腕輪]を、崖を登り草原を抜けて森に入り、真ん中の崖を降りたら東に進んで突き当たりをスコップで掘って、手甲付きの手袋[大地の剛腕]を回収。


 そのまま崖に沿って西に進み、南に曲がった先の砂浜で[水鏡の貝盾]を回収。

 この崖──谷は海の浸食で出来た、という設定。だから、突き当たりまで砂地になっている。

 その砂浜の東側の崖を登り、崖沿いに南に進んで森と草原を抜け、角端に着き[月華刀]を回収。


 ──と、ゲームなら、それだけだが、現実は他に色々と発見して採取。宿と食事以外に金を使う事は無さそうだな。まあ、貯めておこう。

 だが、必要な物は買う。目立つ事は避けたいが、仕方が無い。だから、カドセンの町に向かう。


 来た道を戻る様に北上し、森に入り、谷を越え、森を抜けるとカドセンの町の外壁と、町に続く道が見える。人目が無い事を、近くには誰も居ない事を探知で確認してから、町からは見えない場所で道に出て向かって行く。旅人らしく荷物も持ってだ。


 この世界には犯罪者を見極める為の魔道具が有る事によって身分証やパスポートの様な物は不要だ。勿論、場合によっては紹介状や保証状が有った方が良い事や必要な事も有るそうだが、稀だ。

 ──という話を門番の人達から聞いた。

 何処でも、出入りする際には必ず、その魔道具で犯罪の有無を確認するらしい。

 ……カーンタラ村は? いや、自分達は勇者だ。少なくとも降臨した直後は犯罪者ではないし、次に村に入った際には怪物騒ぎの真っ最中だったから、確認もしなかったのだろう。多分だけど。


 そんな事を考えながら、記憶の中のマップを元に冒険者ギルドを探す。ゲームにも情報収集や依頼を受けて稼ぐ為に、設置していたから有るとは思う。無かったら王都に行くしかないが……有った。

 一安心しながら中に入る。パッと見は、ハロワ。食事処や酒場が併設されてはいない。よく有る様な冒険者ギルドのトラブルの原因は人が留まるから。其処に居る理由が無ければ問題も起き難くなるのは必然だろう。そう思うとイメージって恐いよな。


 冒険者登録は直ぐに終わり、免許証の様なカードを受け取る。これは身分証の代わりにもなる。

 このカードには色が有って、今は灰色。初心者で一番下のランク。其処から茶・黄・緑・青・赤・白と上がっていくシステム。灰色がGランクで、白がAランク。その上が銀のS、金のSS、黒のSSSとなっている。ゲームと同じで助かる。

 依頼の受け方は張り出された依頼書を取り、受け付けにカードと一緒に提出。受理されれば成立し、依頼達成で報酬が貰える。失敗すると罰金や降格、場合によって登録の抹消も有り得る厳しさ。それで良いと思う。決して楽な職業ではないのだから。


 基本的な事と注意事項が書かれた小冊子を貰い、宿を取る為にギルドを出る。宿の情報を貰って。

 その宿に向かいながら、登録時に記入した書類や小冊子が日本語だったので普通に驚いた。しかし、自分が作ったゲームが日本語なので異世界だろうと同じなんだろうと割り切る。楽で助かる訳だから。文句なんて有りません。


 無事に宿を取ったら、次は買い物。真っ先に行く場所はゲームでの道具屋。現実では、ちょっとだけ怪しい雰囲気を出しているが、気にはしない。

 ドアを開けて入る──独特な音色の鈴が鳴った。聞き慣れないから軽くビクッとしたのは不可抗力。店主だろう無愛想な表情の御婆さんに会釈だけして店内を見る事にする。

 一辺8メートル程の正方形の空間に、棚が壁際と内側に合計六つ。出入口とカウンターが対面なので怪しい動きは出来無いな。遣らないけど。

 鑑定しながら見ていると薬草だけではなく色々と調合した回復薬──魔法薬(ポーション)の類いも有る為、此処はゲームでの道具屋だと確信する。そして、目当ての品である【遠見の腕輪】を発見。装備品ではなく、魔道具になる。これで探索が楽になる。

 更に、ゲームとは違う発見も有り、何だかんだで二十八点も購入。御婆さんは笑顔になった。




 食事を済ませてから宿に入り──頭を抱える。

 特に必要は無いけど、新しい発見が有る可能性を知ってしまったので装備品を始め、手当たり次第に御店に入ってしまった。そして爆買い。悪目立ちは間違い無いだろう。失敗した。

 だが、良い物が買えたのは確かだ。特に、最初の御婆さんの店の物が全て収納出来るだろうリュックタイプの[収納の大袋]は買いの一択。二軒目での発見だったから、直ぐに使えたし、その所為だが。後悔は無い。自制心に関しては反省が必要だが。


 ベッドに仰向けになり、天井を見詰める。其処にゲームのマップを映し出す様に想像し、考える。

 アビリティを得る為には北のサディアル村に行く必要が有るのだが、食事中に気になる話を聞いた。王都から、カドセンの町に来る為には途中、広大なヴィファレンツェの森を通り抜けるのだが、其処で最近、行方不明者が増えているらしい。

 そんなイベントはゲームには無かったし、買った地図にも森を通る道は記されていたし、長く人々が利用している街道なので安全性も高い。

 それが、となれば気にもなる。しかも、行方不明になった者は未発見。探しに行った者も居る様だが何の手掛かりも痕跡も見付からなかったそうだ。


 出来れば、先にアビリティを獲得しに行きたいが気にもなる。【破邪顕征】の事も有るし……仕方が無いな。行くか。


 そうと決まれば、さっさと寝よう。






「御早う御座います。昨夜は御疲れ様でした」



 そう言う宿屋の主人の笑顔が難い。

 寝ようとしたら、ドアがノックされ、探知したら宿屋の主人だと判ったのでドアを開けた。すると、御客が来ているという事で部屋を出たら、ギルドの受け付けをしていた女性が居た。話を聞くと、急を要する依頼で[エドゥキン草]が必要なのだとか。

 このエドゥキン草は薬草の一種だが、調合専用。その上、この辺りでは採取が不可能。海風が当たる場所でなければ自生しないからだ。

 当然だが、持っている。百株は有る筈だ。

 女性は他の職員達と手分けして冒険者達を訪ねて回っているらしいが、誰一人持ってはいなかった。だが、其処で自分が登録手続きを行った新人の俺を思い出した。まだ一度も依頼を受けてはいない為、訪ねた冒険者のリストに入ってはいなかった。

 そんな訳で、女性に連れられて町を治める貴族の屋敷に行く事になった。まだ三歳の息子さんが急病という事で必要になったのだが、運悪く何処も在庫切れだった為、冒険者に聞いていたそうだ。

 その貴族──母親に感謝され、安堵したのだろう気が緩んで倒れ掛けた彼女を抱き止めたら、何故か彼女を抱くという謎展開に。旦那さんは? 王都に出掛けている婿入りだから血筋は彼女が正統なので出来ても問題無し、という事で。はい、激しかった事は勿論、事後、帰る前に確認したら、彼女も妊娠していました。どうなってるんだっ?! まだ一夜も経っていませんけどっ?!


 そんな感じで宿に戻って自棄糞で寝た。

 そんな事は宿屋の主人は知らないが……だから、余計に苛っとする。笑顔で挨拶して出るけど。


 顔を出す様に言われていたので朝一だがギルドに行くと最優先で昨日の受け付けの女性に案内されて報酬と依頼達成の処理が行われる。

 採取系は物納なので受けていなくても専用窓口で常時、受け付けてくれる。買い叩かれたりはしないのだが、採取物の品質や状態は影響する。鑑定用の魔道具が有る為、結果も目の前で判る様だ。

 処理を待っている時に実際に見たから。

 報酬とカードを受け取……茶になってますが? 入手過程ではなく、偶然でも所有していた事が評価される訳ですか。判りました。

 GからFでも、丸一日と経たないでランクアップするのは世界記録(・・・・)だそうです。

 広めないで下さい。実力ではないので。

 そう御願いし、口止めします。


 町を出て、道なりに東に。本来であれば、通った筈の道なんですけどね。通行証や記録とかが無くて良かった。行動が怪し過ぎますから。


 ヴィファレンツェの森に入って、そのまま街道を進んで行き──問題無く北に抜けた。

 ゲームマップでは、森の東に王都が有る為、道は森の北側から入る形になっていたが、同じだな。

 途中、アイテムの回収や採取もしたが、気になる事は特には…………いや、待て。確か、森の中央は南に向かう道が有る筈だ。その先にはダンジョンが設置して有ったからな。

 しかし、その道が無かった。

 その道の近くには森に囲まれた花畑に通じる様に抜け道がゲームでは有ったが、現実では深い森だ。しかし、確かに花畑は有り、其処でアイテムの回収と採取をする事が出来た。

 つまり、ダンジョンに繋がる道だけが無い。

 行方不明(・・・・)と繋げるのなら、道が隠され(・・・)、其処に迷い込んでしまった。そう考えられる。

 取り敢えず、それを確認する為に行ってみる。



「…………これは判らない訳だ……」



 結論から言えば、ゲームに有った道は無かった。だが、街道を外れて森の奥に入って行くと、唐突に視界が歪んで違和感を覚えた。直ぐに振り向いたが見えない壁に阻まれて戻る事が出来無い。

 恐らくは、入れるが出られない結界の様なものが張られているのだろう。

 何の為に?

 普通のRPGなら敵が悪事の為や主人公を殺す為だったりするのだが、この世界では考え難い。

 そうなると、考えられる可能性は隔離(・・)

 何か(・・)を閉じ込める。その為の可能性が高い。


 一先ず、ゲームでのマップを参考に東に向かう。その先に有るダンジョンが一番怪しいから。


 そう思ったのがフラグだったのか。

 その手前に有った筈の草原部分で人を発見した。六人の男女が戦っている真っ最中。

 [ヴェノランテス]という未知の怪物。見た目は木や蔦草で出来たティラノサウルス。無属性だが、火・土属性に耐性を持ち、毒攻撃をしてくる。

 探知すれば他に三人、居るのが判る。瀕死か。

 戦っている六人も毒を受けている。


 どうやら、悠長には観察しては居られない様だ。情報は欲しいが人命救助が最優先。

 飛び入りし、あっさりと倒すと唖然とされるが、解毒と治療を最優先する。


 まあ、周回特典でステータスは強化されているし装備品も上位だが、レベルが違う。

 カーンタラ湖周辺のモンスターは周回必須の強敵ばかりの為、最低限で戦っても経験値が旨過ぎる。強さも行き過ぎると罪深いなぁ~。

 現在のレベルは83。爆上がりしてます。

 ヴェノランテスは再生していたが、無限にという訳では無かった様だし、上回るダメージを受ければ再生する前に倒せるのは当然。再生は生きている事が大前提の能力なのだから。


 そして、ヴェノランテスを倒した直後だった。

 結界らしき物が砕け散る様な音が聞こえた──が自分だけだったみたいだ。倒した者にだけか?


 まあ、兎に角、これで脱出が出来る様になった。重傷の男性達を動ける男性三人に任せ、女性三人と警戒しながらカドセンの町に向かう。

 戦闘になる可能性は低いが、無い訳ではないから気は抜けない。それでも、少しでも早く着いてから治療と休息、食事をするべきだから頑張って貰う。女性三人だけなら一人で運べるんだけどな。

 「男なら、自力で何とかしろ」とは思っていても言えはしない。



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