物語
ゲームでの規格は、村は2×2、王都は3×3、町等は2×3で縦型と横型の四種類。屋内マップを別設定していたので、それで十分だった。
鍛者の魔洞の出入口の有る川原の対岸。何段もの崖の上──カーンタラ村の左下のエリアの西の隣。壁が有り、通常では行けない場所に巨大岩が十二個並んでいる。攻撃しても無駄──に思えるが、実は隠し御助けオブジェクト。必要となるステータスが高いが、数周回していると自然と満たせる。
ステータスの条件を満たした状態で攻撃すると、巨大岩にダメージ判定が現れ、破壊が可能となる。必要回数は300回。その1回がモンスター討伐の1回としてカウントされる。経験値は入らないが。そのカウントが重要。しかも1回毎に別種を倒した扱いとなるのという超御都合的な謎仕様。
重影の腕輪を装備すれば、実質600回分。全部破壊すれば7200回分を稼げる。
当然ながら期間限定。ゲームを開始してから十日経過で巨大岩は消失。我ながら酷い仕様だな。
そんな訳で巨大岩を攻撃し、アビリティを獲得。レベルが上がらないのが大きい。レベルが上がると獲得出来無くなる物が有るし、必要となる装備品が手に入るのが後半だと既に空きが無かったりする。マジでプレイヤー泣かせだと思う。
大剣・剣・刀の強化アビリティを獲得し、短剣も合わせて【刀剣撃強化・小】に統合。小・中・大は問わず、揃えるだけ。只し、必ず統合後は小から。一番のネックになるのは刀の入手。
更に、槍・斧・拳・弓と獲得すると、刀剣と統合されて【武人の極致・小】に。これで常に全強化。
因みに、棒系は槍に、ハンマー系は斧に、素手は拳に、投擲系は弓に入る。細分化をしてしまったらアビリティ数が増え、所有数が不足するから。
それと、ゲーム内に装備品の鞭は一つのみの為、武撃でのみ強化される仕様だった。
アビリティの効果の昇格には熟練度に近い条件が多く設定してあったが、それでも簡単ではない為、最後の巨大岩を破壊し終わったが、流石に中までは届かなかった。まあ、十分か。
尚、ゲームでは巨大岩は砕けて無くなるだけで、何も残らないのだが、現実では砕けた破片が残る。しかも、[古鋼石]という謎の素材。今の自分では合成は出来無いみたいだ。残念。
あと、【自然治癒】が【自然回復】に。こういうパターンも昇格には有る。
そうこうしている内にも時間は流れる。また村に戻るのも可笑しいので今夜は野宿。携帯用テントやモンスター避けのアイテムも買ってあるし、村では使わない調理器具も貰った。食材も有る。それならソロキャンプを楽しむしかないだろう。
そんな訳で、更に西に移動。すると、巨大な湖が目の前に現れる。[カーンタラ湖]だ。綺麗だ。
その畔で野営の準備。南に行けば海なので食材も海産物を簡単に入手出来る。良い場所だ。
食事を済ませ、ぼんやりと星空と月明かりに輝く湖を見詰めながら、疲弊した心身を癒す。そんなに消耗はしていないけど。
そんな視線の先に有るのは湖に浮かぶ小島。実は其処が次の目的地。
ゲームでは1画面──1エリアを割り当てていたのだけど、現実では直径5メートル程。小さい。
その中央に小さな泉が有り、更に中央に祠が有るという設定だったが……流石に遠くて見えないな。湖自体が直径1キロは有るだろう。
ゲーム内でも三番目に大きな湖だったが、現実の湖は更に巨大に思える。まあ、カーンタラ湖だけに限らず、何もかもが規格が違うから当然だけどな。似ているから余計に比較してしまうのだろう。
爽やかで雄大な夜明けを迎え、小島へと向かう。移動の方法? 皮の靴にフーワン鋼石と[風石]を合成して出来た[水鳥の羽靴]を装備すれば、水の上を走る事が出来る。歩く・止まると沈むけど。
だから、あっと言う間に到着。ゲームだと湖からモンスターが飛び出したんだけど……あ、跳ねた。どうやら、速過ぎたみたいだ。速度超過禁止。
ゲームとは違って直径50センチ程の大きさは、泉と言っていいのか悩むが……気にしない。高さが50センチ程の祠は空っぽ。
聖母像を取り出し、振揺珠を持たせ、蓮花座へと立てれば真の姿[聖水蓮の女神像]となる。
それを祠に納めると──パスワードを入れた後と同じ様に世界がモノクロに。祠から光が迸ったら、次の瞬間には別の場所に居た。仕様通りだな。
「────ん? あれ?」
周囲を確認しようとした時、不意に目眩がした。倒れたり、手足を地面に付く程ではないが、体調に可笑しな所は無かった筈だ……が…………え?
念の為に自分を鑑定してみたら、何故か、魔力が減っていた──否、減っている。魔力吸収?
此処、[水面の静匱]に、そんな仕様は──っ!?
まさか、これが[呪い]の効果かっ?!
…………いや、可笑しい。確かに、少しずつだが魔力は減少しているが、それだけだ。先程みたいな目眩はしないし、倦怠感や違和感も無い。毒状態の時の方が辛く苦しかった。
……あの目眩は気付く切っ掛けか。
だから、今は何とも無い。そう考えると、やはり普通の[呪い]とは違うのだろう。
そうすると原因の前提条件も変わってくる。
……もしかして周回の絡む隠し要素か?
いや、だとしても、タイミングが……ああでも、そうか……「その力を何に使う?」という問いでの意味なら、あのタイミングだった事も一応頷ける。あの怪物を倒してから、[呪い]が表示されたのも不自然ではないだろう。
ただ、もし、あの時、村に行かなかったら?
果たして[呪い]は表示されなかったのか?
…………自分が[呪い]に関して設定するなら、今の程度では済まない状態になる気がする。うん、そうだな。“情けは人の為ならず”という事だ。
取り敢えず、疑問が一つ解消されて、スッキリ。魔力の減少の方も、【自然回復】になって回復量が増えたから問題は無し。回復量が上回っている為、一時的に減少はするが、直ぐに回復する。
そうと判れば気にし過ぎない。勿論、油断せずに定期的に確認はする。
本題に戻って。此処も異空間の為、鍛者の魔洞と同じ様に戻る為には歪みに入る仕様らしい。休息が取れる場所が有るのは助かる。
今居る小部屋から真っ直ぐに伸びる通路の先には大きな空間が有る。ゲームでは小部屋の八倍だが、果たして現実では、どうなのか。
その大空間には四方の壁には扉が有る。小部屋に続く扉は何時でも開くが、残りの三つは開かない。その扉から伸びる通路の先に小部屋の四倍の空間。まあ、大部屋・中部屋だ。
大部屋にモンスターが現れ、倒し切ると中部屋に続く通路の扉の何れかが開く仕組みだった。
小部屋から出て大部屋に入る。ゲームでは何処もBGMが流れているが、此処は無音の設定。
その理由は、天井から滴り落ちてくる雫の水音を際立たせる為の演出だから。
そして、雫がモンスター[ドロッペン]になる。水の塊、或いはスライム的な姿をしている水属性。そう、その殆どの攻撃は無効化される。悪いな。
さくさくと倒して、1体だけ残したら、購入した片手用の盾を取り出し、防御し続ける。連続百回、盾で防御するとアビリティ【盾強化・小】を獲得。これで、盾での攻撃が有効になる。
残した一体を倒し、自動で開く扉の先へ。
中部屋に入ると、大きな雫が落ちてくる。何処に落ちるかはランダム。[ビッグドロッペン]1体が中部屋に出現し、倒すと再び大部屋でドロッペンが出現する様になる。
当然ながら、此処でも経験値は入らない。だが、此処でも銀貨1枚を残す。
昇格した【武人の極致・大】と【盾強化・大】が統合されて【武神の寵愛】に。強化は小が三割増、中が六割増、大が倍増だが、寵愛は十倍。それだけ獲得条件は厳しいから。益々、温ゲーになるな。
アビリティ【自然回復】が【自然再生】に。
スキルも【防御】が【大防御】、【自己治癒】が【自己回復】を経て【自己再生】に。
そして、戦闘時に一万回の跳躍という条件を達成した事でスキル【月兎】を獲得。
戦闘時に、とは言っても単純に飛び回るだけではカウントされない。攻撃・防御と連動していないとカウントはされないから、地味に難しい。レベルが条件達成時に15以下でなければならないしな。
【月兎】は万能跳躍。壁や木や水面、空中でさえ蹴って跳躍する事が出来る。現実ではステータスが高ければ跳躍力は生まれるが、何処でも足場として蹴る事が出来るのは便利さが違う。注意点は着地や停止は自力で、浮く訳ではない事。
取り敢えず、此処での目標は達成したから出る。此処も出入りで滞在時間に関わらず丸一日経過する仕様になっていた。
──という事を思い出しながら小部屋に続く扉を開けようとしたが、開かなかった。
そして、中部屋に続く開いていた筈の背後の扉が勝手に閉じた。
予想通り、未知の存在[ギガントドロッペン]が大部屋の中央に出現した。
言うまでもなく、圧勝に終わった。白金貨1枚と情報の無い宝玉[悠久の輝跡]を入手。
「………………え?」
外に出て直ぐに確認をしたら、[呪い]が消えて未知のアビリティの【破邪顕征】を獲得していた。その効果は固有魔法【ピューリフィケーション】を使用可能になるというもの。
更に、善行を行う程、その効果や威力が高まる。逆に悪行を働くと低下していく上、その都度、罰を暫くの間、受ける事になるらしい。
…………なんて極端なアビリティなんだろうか。自分の事を棚に上げて言える立場ではないが。
まあ、社会的な常識や道徳的な価値観から大きく外れたりしなければ、基本的には真っ当な訳だから滅多に悪行とはならない……筈……多分。判断基準というのが不明だから、少し恐くも有るが、ずっとビビりながら生きたくはないから気にし過ぎない。正面に生きれば良いだけなんだしな。
……複数の女性との関係? 現地の風習ですから問題は有りません。“郷に入れば郷に従え”です。
それはそれとして。“破邪”の部分に付いて。
ゲームでは、主人公は勇者として人々の悪感情や世界規模の魔力の歪みや濁りが原因で生まれた存在、ラスボスとなる[邪悪王スルィウ]を倒すまでが、メインストーリーとなる。
真のエンディングというのは、更に深堀をした、所謂、“世界の真実”的な所に触れる内容。
この世界──現実では勇者が複数召喚されるし、それが十年も続いているのに実力が必要とは言え、一般人が一人旅が出来ているという現状は不自然。切迫した状況で最初の勇者達が召喚されたのなら、もっと世界は荒廃し、人口も激減、生活も困窮する事態になっていると思うが……そうは思えない。
そうなると、今現在の状況は、ゲームの開始時点よりも世界の状態は良いのではないか?
そう考えると、神々が早めに打開策として勇者を召喚──導いているとも思える。
丸投げな事は否めないが。
しかし、神々が勇者に直接は力を与えない理由は理解出来る。相応の努力や経験が伴わない貰った力というのは人を変え、狂わせ、害悪に堕とし易い。だから、相応しい者にしか力は与えない。
元の世界ではなく、この世界の生き方・在り方、何よりも歩み方を見ているのだろう。
……狡をしている訳では有りませんからね?
──とまあ、そう考えるのなら。この力に伴って目指すべきは世界の真実、という事になるのか。
よし。特に否は無いし、それで行こう。
まだレベルは8だが、それは問題ではない。
必要不可欠なスキル、攻略に必須なアビリティは既に揃っているから、後は好みになる。半分までに抑えないと自由度が失われるから、そうしていた。個人的に欲しいアビリティが一つ有るから、それを獲得するのが当面の第一目標だな。
因みに、隠し要素の強化施設は、もう二つ在る。何方らも期間の制限は無い。在る場所が遠いから。カーンタラ村の周辺ばかりに配置は出来無いから。周回して楽しむ為にも散らして有りました。




