目的
スクロールタイプのフィールドマップの場合には隣り合うマップの繋ぎに注意が必要。一度に画面に表示されるマップは一つ。そのマップの上下左右の全てを有効にしてしまうと斜め移動によるシステム負荷が発生する。区切られた画面内の斜め移動なら問題は無いのだが、マップ移動では大問題。だから基本的には道を通らないとマップ移動は不可能に。また、木や岩や崖等で移動出来無い様にして区切る事で画面切り替えをスムーズに。それを利用して、隠し要素を入れたりも出来る。
ただ、それはゲームだから。
現実では斜め移動の限りではなく、自分次第では何処でも移動出来るし、行ける。
つまり、大幅な近道も可能。
ヒャッホーイッ!
「この辺りだった筈だけど……お、有った有った」
村を出てから道なりに進み、二つ目の曲がり角を崖下に向かって飛び降りる。20メートルでも平気という身体能力に感謝。探していた大樹を見上げ、高さ15メートルは有る大きさに感動する。
ゲームでは見るからに怪しいが、何れだけ攻撃をしても何の反応も無い。だが、ちゃんとした意味が有っての仕様となっている。
ゲームでは周回プレイを前提としていたのだが、同じ事の繰り返しでは当然ながら飽きる。だから、周回する程に出来る事が増える様に考えて作った。楽しく遣り込みたいから。
その周回要素の中に、開始から王都に入るまでの間でしか不可能な事が有る。日時の制限は無いが、王様に会わないと最初は苦労するので悩む所だ。
周回特典によって、ステータスが強化される事で村人の反応が変化し、幾つかのアイテムを貰える。それが釣竿・大木槌・スコップ。何処にでも有る物ではあるが、辺境の村では大事な物なので簡単には入手出来無い──という設定だったから。
ゲームとは違ったが、村を助けた事で、それらを貰う事は出来た。序でに長い間使える者が居らず、倉庫の奥に忘れられていた大剣も。
その中の大木槌を使って大樹を叩く。
すると、大きく揺れて──上から落下する物が。それを落とさない様にキャッチ。直径5センチ程の真珠の様な白と赤に輝く変色の宝玉。
鑑定し、[振揺珠]と出て一安心。こんな場所に有る物だから、失われていた可能性も有ったから。入手出来て良かった。
RPGでは定番のレベル上げ。それには経験値をくれるモンスターが不可欠。しかし、モンスターが目に見える場合、どうしても数に上限が有るもの。だが、自然の生態系としては無限出現は有り得ない事である為、一度倒したモンスターは倒した時から丸一日が経過しないと再出現しない仕様だったのでスキルやアビリティの獲得条件を序盤で満たす事は難しくなっていた。
その解決方向の一つが鍛者の魔洞。同様の場所が他にも存在している。
振揺珠は、その一つに入る為のアイテム。
更に、この大樹から東に行くと泉が有る。此処で釣竿を使って釣りをすると、食用の[ヤマウォ]が連れるのだが、稀に他の物が連れる。木の枝とか。その中に[泥塗れの像]という高さ30センチ程の石像が有る。洗うと[聖母像]に変わる。
そのまた東に有る大樹を大木槌で叩く。すると、ガラガラと音がする為、周辺を探してみると大樹の裏側の根元の石が崩れていた。その奥に蓮花の様な直径20センチ程の立体的な淡い紅色の半透明な皿が埋もれている。これは[浄花座]。
そうこうしている間もモンスターとは遭遇する。必要最低限とは言え、モンスターも自然の一部だ。全てを避ける事は難しい。まあ、瞬殺だが。
条件を満たし、アビリティ【短剣撃強化・小】を獲得。其処で無駄を省く為に短剣から、村で貰った大剣[古びた鉄の大剣]にピピカ石とフーワン鋼石に泉で釣れた枯れ木の根に絡まっていた[水石]を合成した大剣[スワンウイング]に装備を変更。
水石は装備品の素材に混ぜると水属性が加わる。この大剣は更に【白鳥の水舞】という水属性の範囲攻撃スキル付き。優秀だねぇ~。
因みに、ゲームに水石は有ったが、泉で釣る事は無かった物。本来は中盤で入手可能になる。
二本目の大樹から南東に向かうと険しい岩場へと景色が変わる。其処に口を開けているのがゲームで一番最初に入る事が出来る“ダンジョン”。
ゲームシステム上、プレイエリアを拡張する為に独立マップとなっているのがダンジョン。
怪しまれない様にする為に村長達から情報収集は殆ど出来無かった為、現実との違いは不明だ。
このダンジョンは[カーンタラ山の洞窟]。内部規模は村の三つ分と小さい。出現するモンスターは無属性ばかり。デザインも普通の洞窟で罠も無し。チュートリアル的な場所だから当然だけど。
あと、[松明]や[マッチ]が必要。洞窟だから真っ暗なので。勿論、村の道具屋で購入済みです。だって、知ってますから。
初級編だけど、それでもリアルの初ダンジョン。ワクワクが止まらない!
──と思っていたのが懐かしい。如何、強過ぎて温ゲー化している。贅沢な悩みだ。
尚、ダンジョンとは言え、出現するモンスターは無限ではない。倒すと減り、出現には一日の上限が設定して有り、0になると翌々実まで出現しない。0でなければ、翌日には上限の半数まで出現する。改めて、面倒臭い仕様だと思う。
まあ、再度来る事は無いから狩り尽くすけどね。さあ、畜生共よ、我が為に糧と成れっ!
それは兎も角として。
通常では、王都に行ってから戻って来る。先ずは仕度金と割引券で装備を整える為に。
しかし、実は此処で装備品が手に入る。
頭装備の[皮の帽子]、腕装備の[皮の手袋]、胴装備の[厚手の皮鎧]、脚装備の[皮の靴]だ。そう、ド定番の皮装備シリーズ。鎧は隠し通路から入らないと取れないが、難しくはない。マップ上で隔離された“宝箱”が見えるしね。
そう、宝箱。ゲームでは当たり前だけど、現実に目の当たりにすると不思議な気がする。しかもだ、中身が入っていると尚更に。何しろ、十年も有って誰も見付けていない事になる訳だから。
まあ、カーンタラ山に戻って来ようと思わないと見付けられない。当然と言えば当然かもしれない。知っているから判るが、見付け難いし、王都に行く途中で見える訳でもない。ゲームならマップの端に見えるから判るんだけど。現実とは違うから。
入手したら装備する。それが基本だ。
洞窟の奥、光る魔法陣に守られた小さな泉を発見したので鑑定すると[癒しの泉]と出た。ゲームのセーブポイント&完全回復システム。一度だけだが無いとマジで無理ゲーに近付くからね。
現実では……回復だけか。そうですよね。
そんなこんなで最奥に到着。当然、ボス戦だ。
[ジャイアントモグモール]。[モグモール]の巨大版というだけ。体力や攻撃力は高いが、特殊な攻撃等はしてこない。残念。
倒すと金貨を残す。実はモンスターが残す硬貨は通常は金貨の一種類のみ。しかも1枚だけ。殆どがボスなのは言うまでもない。
ボスを倒して終了──というのが、通常時の事。実は王都に行く前に攻略すると、ボス部屋の左上に横に抜けられる隠し通路が有る。マップでは非表示なので知らないと無理。終盤に情報は隠してある。周回させる為の仕掛けだ。
壁に入ると真っ暗。手探りで進むと足が当たり、触ると宝箱だと判る。装備すると夜や暗闇でも視界良好となるアクセサリー[土竜の腕輪]を入手。
アクセサリーは最大で三つまで装備可能になる。そう、今は一つだけです。増やすには条件が有る。因みに、楽に増やせる巻物も有る。
ダンジョンを出ると太陽が真上に近かった。
攻略自体は楽だったんだけど、どうしても時間は掛かってしまう。こればかりはどうしようもない。ゲームでもリアルでも同じ様な悩みは有る訳だ。
洞窟から真っ直ぐ北上。崖を飛び降りながら進み高さが100メートル以上有る崖で止まる。人一人ギリギリ通れる細い崖の上を東端を目指して進み、行き止まりの地面をスコップで掘る。
装備するとスキル・アビリティの獲得条件であるモンスターの撃破数のカウントが二倍になるという装備品[重影の腕輪]を入手。
但し、カウント数が二倍なだけで、経験値が二倍になる訳では有りません。
これも王都に行く前でなければ入手が出来無い。そうでなくても現実だと無理だよな。
「さてと……何処に向かうかな……」
崖に座り、雄大な景色を眺めながら考える。
村長から着なくなった服を数着貰ったので服装で目立つ事は無いし、髪と眼の色も村人にも居たから特異という事は無い筈。王都に行ってもバレない。一緒に召喚された勇者達に会っても大丈夫だろう。一通り武器を買ったら離れればいい。
王都には行かず、王都の西に有るカドセンの町に行く事も出来る。距離は有るが、買い物も可能だ。但し、勇者達が向かう可能性は高いし、以前に召喚された勇者が居る可能性も有る。
視線の先、カーンタラ村の北に有るウドドン村を目指す事も出来る。ゲームでは直近で降った大雨の影響で橋が流され、復旧中で暫くは行けないのだが現実だと関係無い。川を飛び越えるだけだ。
近場だと、この三つが有力となる。
しかし、最優先は[呪い]を解く事だろう。今は何の影響も無いが、どうなるのかが判らない以上、解く事が出来るのなら少しでも早く解くべきだ。
ただ、手掛かりが無い。
改めて考えたが、村長達を見る限り、殺したり、犯したりした可能性は無いだろう。だから主人公の母子とは無関係で偶々、あの家の下に埋まっていた可能性が高いと思う。
関係が有るとすれば、主人公としての使命。
真のエンディングを迎えなければ解けない的な。村を救ったのに? ……やっぱり違う気がする。
まあ、ゲームには無かった事だから旅をしながら情報収集するしかないかな。王様とかの有力者達と親しくなれば色々聞けたり、調べ易いかもしれないんだろうけど……人間関係が面倒臭いしな。
取り敢えず、早めに取って置きたいアビリティを獲得する為に必要な物を手に入れないとな。
「いや~、ホンマに助かりましたわ~」
関西弁っぽい口調の細目の旅商人の男。見た目は弱そうだが、装備は確かだ。ただ、武器を落としてモンスターに襲われていた所を、偶々、山を降りた先だったから助けただけ。狙ってはいない。
聞けば少し前まで三人で旅をしていたが、一人が体調を崩し、しかし、自分は急ぐ必要が有るから、一人で移動していたそうだ。目的地は王都らしい。う~ん……送っていくべきか?
「んー……やっぱ荷物減らさなアカンかったか?」
「もして、収納系の魔道具を?」
「お? 気になるん? コレがそうやで!」
「へぇ~……実物は初めて見たな」
「まぁ、稀少やからな~」
「入れ過ぎて重いから動きが鈍って、か……他人事ではあるが、勉強になるな」
「兄さん、手厳しぃなぁ……せや! 兄さん、何か買うてくれへん? ちょっとでも減って軽ぅなれば助かるんよ! 安くするさかい、どうやっ?!」
そう言われ、王都まで同行するよりはいいか、と思って取り敢えず商品を見せて貰う事にした。
「ほな、また会ぅたら宜しゅうに」
笑顔で手を振りながら去って行く旅商人の男。
鑑定でも良い品だった為、色々買ってしまった。まあ、金は有るから構わないが。
だが、その御陰で買い物に行かなくて済んだのは大きい。しかも、ゲーム内でも後半にならなければ手に入らない“刀”を持っていた。侮れない男だ。胡散臭いとか思って悪かった。
広げた厚手の布の上に武器を並べて固定したら、巻いて纏めて持ち運ぶ為のツールロールという物が個人的には嬉しい発見。勿論、買った。その御陰で怪しまれはしなかったしな。
まあ、全部【収納】で片付けるんだけどな。
さて、これで行き先も決まった。
カーンタラ村の西、王都の南。複数回の周回後、条件が揃わなければ行く事が出来無い、強化施設。其処を目指して──下ったカーンタラ山を登る。
王都側から行くと人目に付き易いからなぁ……




