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隠道



「──はぁ……まあ、そうだよな」



 ゲームのシステムが生きていた事から、メニュー画面を開けるかもしれないと思って色々と試したが無理だった。「出来たらいいな」位だったが。


 ただ、ステータスに追加が有った可能性は高い。それを確かめたいが──その術なら有る。

 この三つの巻物とは特別なスキル(・・・)を入手する為の専用アイテム。

 早速使用し、スキルを入手する。

 触れても変化は無いから、開けばいいのだろう。その辺りはゲームとの違いだな。

 どの巻物がどのスキルか判らないが、全部使って入手するのだから気にしない。

 巻物を開くと不思議な文字……模様? が複雑に書き込まれている。

 じっと見ていると気分が悪くなりそうだ。

 ──とか思っていたら、自分の存在がブレる様な感覚がして、大きく鼓動が響いた。



「────あれ?」



 我に変えると開いた筈の巻物が消えていたので、今のがスキルを入手──刻み込んだ感覚みたいだ。今のは知らないと気付けないだろう。

 そのまま残り二つの巻物も開きスキルを入手。



「【鑑定】」



 そう口にしてみれば、目の前に半透明な見覚えの有る画面が出現した。

 指で触れてみようとしたが、通り抜けた。

 顔を動かせば付いてくるし、横にズラす横に意識したらズレてくれる。自分にしか見えない仕様だと思ってもいい気がする。


 それはそれとして、スキル【鑑定】により判る。判るが、ゲームシステムの様に操作は出来無い。

 まあ、当然と言えば当然か。


 ただ、ゲームの主人公(プレイヤー)と同じなのはステータスとスキル・アビリティ(・・・・・)が有る事。


 ステータスは数値が高い程、強くなる。レベル(・・・)が上がる事で自動的に上昇する。

 条件を満たすと、セルフビルドが可能になったが此処では出来るのかは現時点では判らない。

 筋力・丈夫・敏捷・器用・魔力の五項目。それに攻撃力・防御力・移動力の三項目。

 HP・LP、MPは数値化はしておらず、バーで表示する形だったので存在しない──筈だったが、MPだけは表示されている。数字で見ても、現状は比較対象が無いから良し悪しが判らないな。

 レベルアップで直接上昇するのは筋力等の五項目のみだが、攻撃力等にも影響は有る。ただ、後者は基本的には装備等の影響によるもの。

 筋力等は装備品の可・不可に大きく関係していて必要値に達していなければ装備は不可能となる。

 それ以外にも行動に影響する事も有る。


 スキルは任意使用、アビリティは自動適用。

 システムの特徴としては所持数に上限が存在し、一度入手した物は消去や変更──入れ替えは不可能という仕様になっていた。


 それらを踏まえた上で今のステータスを見る。

 アビリティ欄には何も無い。

 スキル欄には【鑑定】【合成】【収納】とある。この三つが巻物から入手した特殊スキルだ。


 スキル【鑑定】は得られる情報量が段違い。

 限定的な鑑定なら出来る魔道具は存在しているが主人公は入手出来ず、国等が所有・管理していて、持ち込みで鑑定して貰うのが常識。有料だ。

 一度鑑定した物は基本的には次からは判るのだが鑑定しないと判らない様になっている物も有った。そういう風に作ったからだ。


 収納も同じ様に可能な魔道具が有り、入手可能。但し、収納数には上限が有るし、対象制限も有る。収納する物の総重量は変わらない為、力が無い物は持ち運ぶ事が難しい。

 スキル【収納】には何の制限も無いし、無重量。現実でだと一番欲しいスキルだと言える。


 スキル【合成】は既存の物を融合・合体させる。その為、鉱石等から剣を作る様な事は出来無いが、既存の剣に鉱石を合成する事で強化する事は可能。但し、必ずしも強化されるとは限らない。

 【鑑定】が有ると合成後を先に知る事が可能で、失敗する事が無くなる。


 試しに引き継ぎシステムの岩を鑑定してみるが、表示されたのは単に[岩]とだけだった。その前がどうだったか判らない為、変化は不明だが。多分、役目を終えたのだろう。


 周囲を鑑定してみたら初期回復アイテムの代表格である[ナォーリ草]と毒消しの[ドッキェ草]が有ったので採取しておく。

 この辺りもゲームとの違いだな。ゲームの中では設置された場所以外では採取出来無いし、一度採取してしまえば二度目は無い。欲しければ別の場所を探すか、買うかだ。ゲームだから。

 現実だと、こうして採集する事が出来る。まあ、それも【鑑定】の御陰だ。判り易く形が違うのなら採取もし易いが、傍には瓜二つの雑草も有る。

 薬草に成るか、雑草に成るか。

 元は同じ植物だが……世知辛ものだ。

 まあ、薬草に成ると価値は上がるが採取される。雑草なら無視されるが、そのままだ。

 何方等が良いのか。草としても悩むのかもな。


 そんな事を考えながら、更に南に向かって進むと村を囲んでいる木壁に辿り着いた。

 コレが村の内外の境界であり、その向こう側には神様の加護──守護結界の様な効果は存在しない。つまり、モンスターが居る事になる。


 それでも、その先に進む。

 力を溜め──跳ぶ。右手を木壁の上に伸ばして、掴んだら身体を引き上げる。



「────は?」



 ──つもりだったが、跳び越えてしまった。

 一瞬、理解が出来ずに思考が止まるが、目の前の木々を見て我に返り、手近な枝に手を伸ばした。

 不格好になったが、直接の落下は回避して着地。まさか、7メートル近くも跳び上がるとは予想外。だが、それもステータスが強化された影響だろう。ゲーム開始時のステータスが、元の自分の能力なら確実に元の世界でも世界一に近い身体能力になった筈なのだから。ちゃんと確認はしないとな。


 村の中よりも大きな木々が立ち並び、一層鬱蒼と生い茂っている村人が踏み入れない場所。

 其処に人工的な布地が見えると警戒心が高まるが鑑定して直ぐに只のボロ切れだと判る。

 ──が、その傍に人工物が見えた。

 鑑定すると[錆びた鉄の短剣]と出たので回収。他にも無いかと探したが、何も無かった。せめて、短剣の鞘や装着用のベルトが欲しかったな。


 錆びてはいるが、これも正真正銘の装備品。手に握り、意識すれば装備(・・)が出来る。

 装備品は装備しなければ効果を発揮しない。

 ゲームでは常識だが、現実でも同じ様だ。

 自分を鑑定して確認すれば、ステータスに新しいページが追加されていた。装備品欄と所持品欄だ。まあ、心当たりの無い物は無かったが。


 短剣を手に進んでいると、林檎にそっくりの実が成っている木を見付け、鑑定すると[森リンゴ]と表示された。食べられる様なので十個程採取する。生態系の事を考えて全部取る様な真似はしない。


 鑑定して採取しながら進んでいると森が終わり、目指していた崖に出る。

 高さは10メートル程。下には川が流れていて、対岸までは30メートル近く。対岸も同様の崖。

 だが、よく見ると、対岸の崖下──川沿いに道の様な川原が有るのが判る。



「ゲームだと視点固定のマップだったから見えない様に隠れていたけど、現実だと判り易いよな……」



 それは周回しないと辿り着けない隠しルートで、発見は不可能──な筈だが、丸見えなのが現実。

 ゲームと同様に崖上から川の中の四つの大岩へと跳び移って対岸に着地する。

 因みに、ゲームでは十字キーを同じ方向に素早く二度押しする事でジャンプする仕様だった。


 川の水を鑑定し、問題無く飲めると判ったので、大雑把にだが【収納】で汲んでおく。

 川原は上流には続いていない。崖を上れば上流に行けるだろうが、今は行かない。

 下流に向かって鑑定しながら歩いていたら、石に紛れた[フーワン鋼石]を見付けた。コレを使って作製された装備品は羽根の様に軽くなる。ゲームの後半にならないと入手出来無かった物だ。

 更に[ピピカ粉]という装備品の錆落としに使うアイテムの原材料の[ピピカ石]を発見。



「【合成】」



 短剣に二つを合成すると[フェザーエッジ]に。ゲームには存在しなかった装備品に成った。

 装備すると羽根の様に軽く、刃の形も羽根の様で格好良い。だが、鞘等は無い。抜き身が問題だ。


 特にモンスターと遭遇する事も無いまま1時間程歩くと川原の終端に到着。

 川原と崖の境目に石が積み重なった場所が有る。その石を退けると小さな祠が出てきた。

 高さ50センチ程、直径30センチ程の石を彫り抜いて造られた扉付きの匠の技を感じさせる祠だ。装飾や着色は無いが雰囲気が有る。良い品だ。

 その扉を開けば中に納められた直径5センチ程の苔の生した二つの石玉。それを取り出し──合成。透明でありながら、中心には虹色に煌めく淡い光が宿る[導く光]というアイテムに。それを祠の中に納めると──周囲が歪む。

 空間そのものが捻れ曲がっている様な気持ち悪い視界に数秒間耐えると──光が弾ける。



「……そういう演出にしたのは俺自身なんだけど、実際に味わうと気持ち悪いだけだったな……」



 自業自得だが乗り物に酔った様な不快感が残る。誰にも文句を言えないが。

 周囲を確認すると、一辺2メートル程のブロック造りの部屋に居ると判る。ゲームと同じだ。


 此処は隔離された異空間で[鍛者の魔洞]という二周目以降、【合成】が使えると入る事が出来る。所謂、“強くて始める”為の一助となる場所だ。

 ただ、あの祠を見付けられるのは、一日目の夜になるまでの限られた間だけなので、後回しにすると入る事が出来無くなる。


 但し、此処に入ると王様からは支度金と割引券を貰う事が出来無くなる。滞在する時間に関わらず、此処に入って出るだけで丸一日が経過する。

 ゲームでだと、此処に来て、入って出て、村へと戻った時点で、どんなに最短・最小限に動いても、二日目の夜になる。夜になれば王様も眠り、御城も閉門してしまう。無駄にリアルな仕様だからだ。



「まあ、お金の心配はしてないんだけどな」



 出現するモンスターは[プレリューデア]という専用種だけなのだが、【収納】を持っていると一体倒す毎に銀貨を1枚獲得出来る。

 現実の通貨や単位は判らないが、ゲームの中での単位はイェン(・・・)

 銅貨1枚が1イェン、銀貨1枚が100イェン、金貨1枚が10000イェンだった。

 つまり、条件さえ整えば大金持ちになれる。


 因みに、【収納】無しだとプレリューデアは何も残さないという仕様だった。


 ただ、そのプレリューデアもザコ設定ではない。はっきり言えば、二周目で【合成】と引き継ぎ加算されたステータスで装備可能な武器と防具を選んで挑んでも1匹倒せるか、という程度には強い。

 レベルを上げてから挑む事も出来ず、アイテムも買い揃えたりも出来無いからだ。

 だから此処では自力(・・)が試される。



「加算値も最高の状態でなら、ゲームでは戦えたが現実では果たして通用するのかどうか……」



 そう不安そうな事を言いながらも口元が緩む。

 別に、“此処では例え死んだとしても現実世界に戻されるだけです”なんて仕様にはしていない。

 自分の作ったゲームに基本的に遣り直しは無し。死ねば即終了。また最初から始める事になる。

 現代のゲームとしては有り得ない仕様だ。


 それを、“クソゲー”と呼ぶのか、“神ゲー”と呼ぶのかで、ゲーマーとしての在り方が問われる。


 言うまでもなく、個人的に本気で挑戦出来無い、夢中になれないゲームを面白いとは思わない。

 勿論、ハマり方は人各々。色々と有るものだ。

 だから、自分の“楽しい”を押し付けはしない。ただ、共有したいとは思ったから、そんな鬼畜的な面倒臭さが有るゲームを作った。

 手軽なゲームが好きな者は手軽な人生しか送れず手軽な事しか成し遂げられない。

 高がゲーム、然れどゲーム。

 幼かった自分は、ゲームにすら全力を出せないで現実で全力を出せるとは思えなかった。


 まあ、それも一度は途切れてしまった思いだが。だからこそ、この現実に本気で挑みたいと思う。



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