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妖精


 助けたエルフの女性──ディアナに採取してきたモヴェアを見せる。蕗にしか見えないが、鑑定では薬草となっているから間違い無い。

 歓喜・感謝し、泣きながら抱き付いたディアナ。受け止めながらエルフとの別れを惜しむ──筈が、恩人だからと里に招待された。良いのか?

 エルフの里はヴィファレンツェの森の東側の奥。ゲームでは未使用(塗り潰し)エリアに当たる。

 其処に結界が張られている為、誰も入れないし、誰にも気付かれない。結界って凄いな。

 そんな事を考えながら、採取したモヴェアを薬に調合する手伝い、病を患うエルフ達に飲ませる。

 驚く程に効果覿面で、目の前で完快されると逆に引いてしまう。ただ、これはエルフ専用薬。人には効かない。だが、【合成】が有る。十株だけ手元に残して試してみる。残りはエルフに渡すけど。



「ディアナの母で里長をしております、エレイアと申します。娘を、里を救って頂き、感謝致します」

「助かって何よりです。ところで一つ聞いても?」

「何でしょうか?」

「子供は居るみたいですが、成人男性の姿が一人も見当たらなかったのですが、何処かに?」

「……一年程前の事になります。モンスターも入る事の出来無い結界の中に、突如として見た事の無い怪物が現れました。私の夫を始め男達は戦って散り何とか怪物を里の外へ……最後は長である私が力を使って結界に封じました。孰れ、息絶えるのを待って……」

「あー……もしかして、ダンジョンの有った場所の西の草原ですか?」

「そうですが……まさか、結界が消えたのは?」

「俺が倒しました。あ、コレが後で拾った物です」

「……確かに、コレは結界の要石の欠片です」

「何故、そんな危険な真似を?」

「最近、行方不明者が出ていて、その調査をしたら結界の中に入って、其処で戦闘になった。結界から出られなかったしな」

「結界の中に? アレは完全に内外を隔離する結界だった筈ですが……宜しければ、この欠片を譲って頂けないでしょうか? 調べれば結界が歪んだ原因が判るかもしれません」

「ええ、どうぞ。役立てて下さい」

「有難う御座います」

「ですが、里の立て直しは大変でしょうね。他にもエルフの里が?」

「有るには有りますが……少なくとも三百年以上は他里との交流は有りません。まあ、稀に里を旅立つ者も居ますから、もしかしたら他里に行った者も居るのかもしれませんが……」

「そうですか……では、これから大変ですね」

「ええ……ですが、希望は有りますし、ミヒラ様が繋いで下さった命を大事にして生きます」

「出来る事であれば協力します」

「その御言葉に勇気付けられます」



 そんな社交辞令の一言が自分の首を絞める展開は異世界物では珍しくはないのだが……失念していた自分を殴りたい。

 もう日が暮れるし、御礼もしたいから、と泊まる事になったのだが……里の女性達が群がってきた。既婚者──否、未亡人が三十八人。エレイアさんが含まれていても驚かない。言質を取られた訳だし。ただ、未婚のディアナ達が十七人。それには流石に戸惑った。今までとは違うから。

 将来的な事を考え、種族や血統を理由に粘り強く交渉しようとしたが──押し切られた。特に最後のディアナの涙目は卑怯だった。

 結論、本物のエルフは本当はエロフだった。






「ミヒラ、私は元気な子を産むから、その……」



 そう言って何度目になるか判らないディアナから御強請りをされて励む。既に全員妊娠しましたが。まあ、これもアフターケアでしょう。判ってます。ちゃんとしますから順番にね? エレイアさん? 娘と張り合わない。貴女も素敵ですから。


 里の様子は問題無し。エレイアさん達、出産経験の有る女性陣が集団妊娠でも大丈夫だと言うので、それを信じます。他に出来る事は幾つか外の作物の種や苗を提供する位……滅茶苦茶喜ばれた。そして感謝の印だと襲うのは如何なもので?


 何だかんだと遣りまくって昼過ぎに里を発つ。

 エレイアさんの張った結界が歪んだ原因に付いて改めて聞きに来る事にはなると思うけど。

 因みに、エルフは長命種ではない。魔力量が多い事により、老け難くて、若々しいらしい。それでも人の寿命が六十歳前後の世界で、百歳まで生きれば十分に長寿だと言える。()も予約済みです。


 西に向かうが、カドセンの町には寄らずに北へ。寄ったら一泊確定ですから。今は先を急ぐ。

 ──とは言え、遣る事は遣る。カドセンの町の北には森が広がり、その奥、崖際に泉が有り、釣竿を使っていると、宝箱が釣れる。不思議だよな。

 崖上にも泉が二つ。西側の泉の南西の端で釣ると宝箱が釣れる。更に北にも二つの泉が有るが、釣れない。魚は居るよ。

 スコップで掘り、鶴嘴で岩を砕き、隠しアイテムを回収してから街道に沿って歩く。サディアル村は高い山の上に有る為、街道は大きく蛇行している。カドセンの町からは1000メートルは標高が上。当然、空気も薄くなる──筈なのに平気だ。草木が多く、自然が豊かだからか? 異世界だもんな。


 そんな訳で、夕暮れ前にはサディアル村に到着。先ずは宿を確保。それから店を見て回る。品探しと人物鑑定で勇者の有無を確認する為に。

 七点の購入と、倒したモンスターの素材の売却。持っていても使い切れないしな。そして、ギルドでDランクにランクアップ。素材の売却も貢献だし、前の功績の余剰分も有るからな。驚きはしない。


 村長を訪ね、長老に取り次いで貰う。ゲームでは百歳を越えた人──ヒューマの御婆さんという設定だったが……おおっ、現実でも同じだ。生きてる。いや、他意は無い。単に感心しただけだから。

 長老──通称、オババに許可を貰い、特別な札を受け取って失礼する。


 村を出て南に行くと、村の側には巨大な渓谷が。其処に吊り橋が掛かり、対岸には塔が聳える。その塔に入る為であり、吊り橋の手前の門を開く通行証代わりなのが、受け取った札。紙ではなく、蒲鉾板みたいな感じのね。

 門に翳せば自動的に開き、吊り橋を渡って、塔の扉に札を嵌め込んだら扉が開く。挑戦は一度のみ。遣り直しは出来無い。

 搭には一人でしか挑めない。ゲームが一人プレイだったからかもしれないな。だが、自分の力を示す必要が有る、という意味で考えるなら正しい。

 また、この塔の中でだけは死んでも塔の外に放り出されるだけ。まあ、ゲーム的には死んでいた方がマシかもしれないんだけど。


 特殊ダンジョン[洗礼の儀塔]。モンスター達は倒すと消え、再出現はせず、何も残さない。経験値だけはくれるが、倒した者の総経験値の千分の一。獲得経験値が多い程、強さも増す。それでも余裕で進んでいる自分が恐ろしい。

 搭内は全て一本道。迷路みたいだが、前に進めば必ず先に行ける。まるで人生の様だ。

 搭は全十二階。九階に上がると今、上がってきた階段が消え、ボス級の敵が現れる。九階からは雑魚モンスターは無いが、引き返せない。さあ、進め。進んで、その手で掴み取れ!

 ──という訳で、十二階をクリアし、最後に開く通路の先の魔法陣に入れば、搭の外──扉の前に。見上げれば既に夜。晴れているので、そのまま南に向かって渓谷を飛び越え、森の中の高い崖の上へ。其処には人目に触れない綺麗な丸い泉が有り、夜、月が映り込んでいる時に此処で釣りをすると、稀に首飾りの[月の雫]が釣れる。

 稀少な魚も居るから少し楽しみながら小休止。


 村に戻り、オババに挨拶。まあ、無事に終わった報告と許可を貰えた御礼だ。

 許可の条件は冒険者としてDランク以上な事で、勇者と言えど満たせないなら許可は貰えない仕様。しかし、勇者と言っても人間性は判らない。犯罪者ではなけても善人とは限らないからな。その点で、冒険者のランクは信頼性が高い。金や権力は勿論、実力だけでもDランクには上がれないからだ。


 遅い夕食を済ませ、ベッドに入る。ゲームでだと搭に挑めるのは進めてから。現実でも簡単ではない事は言うまでもない。

 その搭の効果は“魔法”の発現と習得。

 自由に創造したりは出来無いが、魔法は主戦力。魔法無しでの攻略は不可能に近いと言える。

 その魔法だが、搭のクリア回数や所要時間、更に自らの歩みを反映する。

 初回だと、四属性の内の何れか一属性だけだし、各属性毎に有る全十二の魔法の内、幾つかだけしか習得が出来無い。それも遣り込み要素だからだ。

 ──で、【九耀の天恵】を所持して、入ってから三時間以内に完全制覇すると、無属性を含めた魔法全十属性の適性が発現し、全十三(・・・)の魔法を習得可能となった上、アビリティ【魔法強化・小】を入手。これが欲しかった。

 十三番目の魔法は真の最上級、究極魔法。何度も周回をしなければ手にする事は不可能。その存在はゲーム中でも示唆される為、探したくなるものだ。まあ、直ぐには使えはしないがな。


 現実ではどうなるのか楽しみではあるが、魔法は明日にでも試せば良い。御休みなさい。






「ホッホッホッ、これで村の未来も安泰じゃわい」



 オババの笑顔が難い。そして、油断していた。

 すっかり忘れていたが、魔法の適性はオババから教えて貰う仕様だった。周回するとメニュー画面で確認出来る様になるから、遣り込みの弊害か。

 昨夜、十代の七人の既婚女性が部屋に来ていた。慣れって怖いもので、半分寝惚けて抱き締めてキスしてから目が覚めた。手遅れだったが。断る口実や正当性を失い、頑張るしかなかった。当然、妊娠。そして、まだ子供が居ない為、朝から貪欲だった。つい、さっきまでしていた。だって、宿が貸切状態になっていたから……つい。後悔はしないが反省。まあ、オババの眼鏡にかなったと思おう。


 サディアル村を出て、近くの山に登る。別に何か有るという訳ではない。まあ、モンスターは居るし採取出来る物は有るのだが。



「んんーーーっ…………良い眺めだなぁ……」



 背伸びをし、肺一杯に朝の少し冷たい、けれども澄んだ空気を吸い込めば、それだけで目が覚める。まあ、この世界が夢オチになる事は望まないけど。

 視界に広がる空は夜こそ違うが、日が昇っている間は自分が生まれ育った世界と大差が無い。

 しかし、その空の下に広がる大地や大海は違う。以前の自分にとっては想像の中にしかなかった景色であり、現実では有り得なかった存在ばかりだ。


 自分が作ったゲームの世界。

 確かに、そう言う事は出来るのだろう。しかし、自分にとっても未知の存在が有るし、世界の全てを知っているという訳でもない。

 寧ろ、この世界の一部を除き見て、それを参考に自分がゲームを作った。そう言った方が聞いた人は納得し易いのではないだろうか。そう思う。


 尤も、そんな事はどうでも良かったりする。

 自分だけが知る情報が有る事は間違いないけど、世界の存在の真偽は今は興味が無いに等しい。まだこの世界の事を知り始めたばかりなのだから。

 強くなる為に地道な作業の様な鍛練も必要だが、それは何方等の世界でも変わりはしない。

 ただまあ、この世界だと肉体以外に強くなる為の要素が存在するから、より強くなる気がするだけ。積み重ねが大事な点では同じだ。

 結果や成果が判り易いから頑張れるという事では遣る気に違いが生じるのは仕方が無いとは思う。



「さて、何処に行こうかな」



 ゲームとして自分の綴ったシナリオは有る。

 でも、それは一つの可能性、一人の物語として。そして、その一人とは自分の事ではない。あの様なエロゲーみたいな内容ではなかったのだから。

 「何故こうなった……」と思う一方、自業自得と受け入れている自分も居る。嫌ではないからな。

 ただ、1年後には百人以上の父親になる。それも現時点での話だから……まだまだ増えそうだ。

 何処かで大人しくしているなんて勿体無さ過ぎて出来る訳が無い。何の為に力を得たのか。異世界を満喫する為だ。それなら行くしかない。何処までも自分自身が思うが侭に。

 勿論、自分の言動に対する責任は背負ってだ。

 決して無責任な真似はしない。それが自分自身の生き方であり、在り方だから。



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