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五月 6

「え、いや……」

「嫌?」

「嫌、ではなくて。えっと、何だろ」

 斉藤センパイの圧に耐えきれずに顔を背けるが、視界から外れても至近距離まで近付かれているだけで落ち着かない。顔が良い人はずるいと思う。

「まあ不安はあるだろうけどさ。これは柊真のためでもあるから」

「はあ」

「ほら、柊真って半分契約してるわけじゃん?」

 わけじゃん、と言われても知らない。そもそも契約って何だ?

「だから柊真はセカイに呼ばれやすくなってるんだって。また昨日みたいになったら困るでしょ?」

「そりゃ、まあ」

「だからね、私と一緒に居れば安心安全。問題無しってわけ」

「はあ……」

 なんか色々引っかかる。全部話してもらえてない気がするし、メフィはどうにも胡散臭い。

「あの、一緒に戦うって何する感じですか?」

「何する感じ?」

 斉藤センパイがそのままメフィに丸投げする。なんかこう……センパイって意外と天然?女子がキャーキャー言ってるイメージとかなり違うような。

「基本的にはお互いの位置を把握しつつ、なるべく早く合流してもらうことになる。実質的な戦力になるのは斉藤凛音だからね。君も正式に契約するなら話は別だけど、高野柊真」

「えっと、その、契約って何すか?」

「昨日、君とは話したはずだけどね。忘れてしまったかな?」

「昨日……?」

 言われてうっすら思い出した。あの変な教室の中で、メフィがそんなことを言っていた。このままでは大変なことになる、契約するか、みたいな。返事をする前にセンパイが来てくれたんだった。

「じゃあ、柊真もオッケーってことで。どうする?チーム名とか決めちゃう?」

「え、まだいいって言ってないですけど」

「え?」

「え?」

 さっきから噛み合ってないこの感じは何だろう。センパイ、こんな感じの人だったんだな……。

「斉藤凛音の提案に従っておいた方が良いと思うよ、高野柊真。さっきも言ったように、君は半分契約している状態だ。セカイに呼ばれるのに、セカイに存在するアクイに対抗する力を持たない。それが危険だというのは分かるだろう?」

「それは、まあ」

 メフィが尻尾のようなものをぱたぱたさせながらオレに話し掛けてきた。昨日の女の子のような何かがアクイなら、アクイがヤバいのは分かる。具体的に何をされるのか分からないのが余計に怖い。

「君がどう思っていようと、危険は必ずやってくる。斉藤凛音に守ってもらう以外の選択肢は無いんだ」

 そう言うメフィから、何かの感情を読み取ることはできない。目のような何かと、口のような何か。顔に見えるそれがあるせいで意思疎通ができそうに感じてしまうけど、こいつはなんかマズい。直感でしかないけど、それだけは分かる。ちらっとセンパイを見ると、キラキラした瞳と目が合った。

「大丈夫、ちゃんと守るよ。一緒にやろう?」

「……分かりました。お願いします、センパイ」

「うん。よろしくね、柊真」

 分からないことだらけだしメフィは信用できないけど、斉藤センパイは信用してもいいと思う。キラキラした屈託のない笑顔が、綺麗だと思った。

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