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落ちこぼれ学生、異世界で最強になる-翼ある姉妹と挑む運命の戦い-  作者: NOVENG MUSiQ
集結する闇と広がる翼

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迫る脅威――呪術師の最終陣形

クヴァル防衛線が激戦の舞台となった日々の余韻がまだ色濃く残る中、我々は一時の勝利を得たものの、街は依然として闇の影に覆われたままだ。魔物襲撃による被害や、深い闇の術式を操る呪術師たちの脅威に晒されたクヴァルは、住民たちの不安と騎士団の疲弊を浮き彫りにしている。

決して完全な勝利を収めたわけではなく、その背後に潜む謎と、闇の勢力がまだ次なる大きな脅威となる可能性が示唆される。こうした厳しい戦場の中で、我々の連帯感と決意が新たな未来への希望となる――それが、この戦いの真髄である。

 黒翼の男の出現から数日。クヴァルは防衛に成功したものの、街の被害を完全には回復できず、あちこちで修復や救護活動が行われている。魔物襲撃による負傷者も多く、騎士団は疲弊の色を隠せない。

 そんな中、新たな情報が舞い込む。呪術師たちが“最終陣形”を組み、クヴァル北門で大規模な儀式を行おうとしているというのだ。

「また呪術師……懲りない連中だね。今度は何を企んでるんだろう」

 ナスティアが尻尾を揺らしながらあきれ顔を見せる。セラは険しい表情を浮かべ、地図を指さす。

「この間の襲撃で魔物を放った連中と同じかしら。もしそうなら、黒翼の男とは別働隊として行動しているのかも。もっと大きな儀式を完遂するために、最後の仕上げを……」


   街の動揺と覚悟

 街はすでに動揺しきっており、「これ以上の闇の脅威を受け止められるのか」と悲観的な声が多い。中には他の都市へ逃げ出す住民も出始めている。

 しかし、騎士団や冒険者の一部は「ここが落ちれば北方全体が危険になる」と考え、最後まで守る構えを崩さない。ノーラもその一人だ。

「この街が陥落すれば、王都と北方の間の連絡は絶たれる。絶対にそんなことはさせない」

 彼女の騎士団は、負傷兵を含め再編され、わずかばかりの増援も加わった。彼らは防衛しながら呪術師の動きを探り、もし本当に最終陣形なるものを発動するなら、先に潰してしまおうと考えている。

 俺たち――ミレイ、パサラ、ナスティア、セラ、レナも、それぞれの意思で参戦を決意する。


「黒い翼の男はまた姿を消したけど、裏から糸を引いているかもしれない。まずは呪術師の計画を阻止しなくちゃ」

 パサラが小さく決意を語り、ミレイもうなずく。「私も姉妹として、パサラを支えたい。……それに、黒翼を持つ者として逃げるわけにはいかない」

 こうして一行は、城壁の外に広がる雪原を探索し、呪術師たちが結界や陣形を組んでいるポイントを探り当てる作戦を始める。


   雪原の伏兵

 クヴァル北門から出て雪原を進むと、風は相変わらず冷たい。魔物の死骸が残る場所を通りすぎ、やがて新たな足跡や符文の痕跡が点在しているのを見つける。

「このへん、一帯に結界の紋様が散りばめられてるわ。古い術式のアレンジみたい」

 セラが膝をついて雪をかき分けると、闇のルーンが埋め込まれた小さな石版が現れた。レナが「ここでも闇を集めようとしてるのね」と顔をしかめる。

 すると、不意に周囲から魔物の呻き声が響く。雪原のあちこちで闇色に染まった獣型の魔物が起動し、こちらへ向かってくる。どうやら呪術師が伏兵として配置していたらしい。


「まったく、しつこい連中だ!」

 ナスティアが爪を伸ばし、俺は光弾を生成する。ミレイとパサラは後方から援護し、セラとレナが魔術の支援を加える形で、素早く魔物を掃討していく。

 ただ、敵の数がそれほど多くないのが救いだろう。

「これは陽動かもしれないわね。もっと奥に本命があるんじゃない?」

 セラが邪推し、ミレイも頷く。「私たちを消耗させたいだけなら、あり得る話ね」

 幸い大きな被害もなく伏兵を片づけ、さらに先へ進む。ノーラや騎士団の別働隊も後方で援護しており、もし緊急事態になればすぐ呼べるはず。


   最終陣形との対峙

 雪原の奥、地形がわずかに盛り上がった平地に到着すると、そこには巨大な紋様を描いた闇の陣形が展開されていた。中心には6人ほどの呪術師が円を囲み、闇色の法衣をまとって何やら儀式を進めている。

「ようこそ、我らの“最終陣形”へ……」

 1人の呪術師が口元に笑みを浮かべ、他のメンバーも低い声で呪文を唱えている。まるで、ここで闇の力を極限まで高め、一気にクヴァルを呑み込もうという算段らしい。

 周囲には魔物も控えているが、その数は多くはない。おそらく質の高い儀式を優先し、彼ら自身が強大な力を発揮しようとしているのだろう。セラが歯を食いしばる。

「面倒な連中ね……でも、ここで止めないと街が危ない!」


 一同が陣形の外縁へ踏み込もうとした瞬間、呪術師たちが結界を発動する。黒い霧が渦を巻き、空気が重く沈むような圧力がかかる。

「なんて濃い闇の魔力……! まるで前に遭遇した儀式より数段上だ」

 レナが身体を震わせる。ナスティアは尻尾を逆立てながらも、「何度でもブッ壊す!」と前に出る。

 しかし、足元から闇の触手のような術式が伸び、動きを封じようとしてくる。パサラが光のバリアを展開し、俺は光弾で攻撃するが、黒い結界は頑丈で簡単には崩せない。

 さらに呪術師たちが詠唱を進めるたび、地面から亡霊兵士や獣型の闇の化身が出現する。大規模な“闇の召喚”を行っているようだ。


「くっ……どうすればいい?」

 現状、突撃しても闇の触手に邪魔される。セラは集中して対抗呪文を組み立てているが、間に合うか分からない。ミレイとパサラも翼の力を試みるが、敵の結界が想像以上に強固だ。

 そこへノーラたち騎士団が合流し、遠巻きに弓や魔法を放って援護するも、結界の外からでは効果が薄い。ナスティアは苛立ちを露わにする。

「あんまり時間かけてたら儀式が完成しちまう! どうにか強行突破しなきゃ!」

 ミレイが黒い翼をわずかに展開し、視線を合わせる。

「パサラ、あなたの白翼の力で結界を揺さぶれない? 前に似たような呪いを中和したでしょ」

「うん……やってみる。ただ、さっきの大技をもう一度使うには集中が必要で……」


 パサラは深呼吸をして目を閉じる。俺やセラ、レナが周囲を警戒して魔物を蹴散らす中、パサラの翼がぼんやり光を放ち始める。

「……ルーン・オーバーレイ……もう一段階解放!」

 一瞬の閃光が走り、闇の結界に網目状の亀裂が入る。が、完全に壊れたわけではない。呪術師たちが意地でも耐えようとする。

「ナスティア、ノーラ、頼む!」

 ミレイが合図すると、獣人の爪と騎士の剣が突撃し、結界の亀裂を大きくこじ開けるように斬り込む。セラとレナも魔法でサポートし、最終的に結界の一部が崩れ落ちた。


「今だ、突っ込め!」

 俺が叫ぶと、ナスティアとノーラが呪術師の陣形に切りかかり、ミレイやセラ、レナが外側から魔法で援護。パサラはバリアを張りながら少し後方で支援する形だ。

 呪術師たちは絶叫しながら闇の力を振りかざし、最後の抵抗を試みる。だが、結界が破られた以上、まともな防御を張る余力はない。ナスティアの鋭い一撃やノーラの剣が次々に呪術師を倒し、セラとレナの複合魔法が亡霊兵士を浄化していく。

 俺も光弾を連射し、一人の呪術師が何かを唱えようとするのを阻止。「これで終わりだ!」と思わず声を荒げ、光の矢を放った。


   後始末と新たなる予感

 こうして“最終陣形”を自称した呪術師の儀式は未完に終わり、崩壊した闇の陣形から立ち上る黒い靄が風に溶けて消えていく。

 激戦を終えた俺たちが息を整えていると、倒れた呪術師の一人がうわ言のように呟いた。

「……いずれ、黒翼の主が……“深淵”を開くだろう……」

 もう明確な意識はなく、すぐにノーラの騎士が拘束し、引きずっていく。

 闇の術師は大半が戦闘不能、わずかに数名は逃亡に成功した可能性もあるが、大勢は決した。クヴァルを脅かす大規模な儀式は阻止できたのだ。


「やったね……これで少しは落ち着くかな」

 パサラが深い息を吐いて笑顔を見せる。真っ白な翼が少しだけ輝き、彼女の身体を支えているように見えた。だが、彼女自身かなり疲弊しているし、周りの仲間たちも消耗は大きい。

 ミレイは呆然と闇の残滓が漂う空を眺め、「黒翼の男……現れなかったわね。やっぱりこれは駒の一つに過ぎなかったのか」と苦い表情。

 セラやレナ、ナスティアも同じ思いだろう。ここで“最終陣形”をぶち壊したところで、黒い翼の男の本当の狙いはまだ未知数。だが、一つの障壁を乗り越えられたのは確かだ。


 周囲を見渡せば、ノーラや騎士たちが被害を確認しながら、闇の遺物を撤去している。大怪我を負った者もいるが、命に別状はないという。

「私たちの勝利……なのかな」

 レナがそっとつぶやく。彼女の雪の魔法が、まだ赤い雪面を少しずつ浄化するように白く染め上げていく。

 黒い翼の男や魔族の本流は現れていないが、呪術師の脅威はこれで大部分を潰せたはず。クヴァルを守るための大きな一山を越えられたと考えれば、前進だろう。

 それでも、消えゆく呪術師の残響や黒翼の主への示唆は、まだまだ未来に大きな戦いが待つことを告げているようだった。


「ねえ、現太さん。これから、もっといろんな困難があるのかもしれないけど、私……頑張るからね」

 パサラが横でそっと微笑む。彼女の翼に刻まれたルーンがうっすら光を帯び、疲れた体を支えてくれるようだ。ミレイやセラ、レナ、ナスティアも思い思いの表情で佇みながら、俺たちはクヴァルの街へ戻り始める。

 凍てつく北の大地で、なお続く闇の陰謀。それを破るのは俺たちの絆と、各々が抱く使命だ。もし黒い翼の男が“深淵”を開くというなら、こちらもそれを阻む手段を探さなくてはならない。

 クヴァル周辺での呪術師の“最終陣形”を阻止したことで街はひとまず救われた。しかし、次に待ち受ける戦いはこれまで以上に苛烈かもしれない。そう予感しながらも、俺たちは少しだけ安堵の息をついて、仲間と共に雪の道を踏みしめた。

激戦の末、クヴァル防衛線は一時の安堵を迎えたものの、我々の戦いはまだ終わっていない。倒された魔物たちと、捕縛された呪術師の残響が示す通り、闇の勢力の根源、そして黒い翼の男の存在は、未だ完全に解明されていない。

今回の戦闘で、仲間たち―ミレイ、パサラ、ナスティア、セラ、レナ、そして勇敢なノーラ―は、互いの力を合わせることで、一致団結して街を守ることに成功した。だが、その勝利はあくまで序章に過ぎず、これから更なる試練と、謎多き闇の儀式、そして黒い翼の男の真意に迫る戦いが待ち受ける。

我々の決意と絆は、未来への大きな希望へと変わる。たとえ闇が深く、試練が過酷であっても、仲間と共に歩むこの道こそ、我々が選んだ生きざまだ。次なる戦いへの準備を胸に、俺たちは再び雪原を踏みしめ、未来へと歩みを進める――。

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