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落ちこぼれ学生、異世界で最強になる-翼ある姉妹と挑む運命の戦い-  作者: NOVENG MUSiQ
集結する闇と広がる翼

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19/48

クヴァル防衛線――迫り来る黒翼の影

クヴァルの街に戻って数日が経ち、闇の術式や魔物襲撃への対応で忙殺された日々の中、街はかすかな平穏を取り戻し始めたかに見えた。しかし、その表面の落ち着きの裏には、黒い翼の男をはじめとする闇の勢力が、今もなお静かに、しかし確実に影を落としているという不安があった。

新堂 現太と仲間たち―白翼のパサラ、黒翼のミレイ、獣人のナスティア、そして騎士団のノーラを中心に、街の不穏な空気の中で防衛体制を強化し、未知の闇に立ち向かう決意が描かれる。昼過ぎの防衛会議、そして夜の宿で交わされる温かい仲間との会話と、明け方の激しい戦闘シーンが、次なる大きな試練への布石として物語の新たな局面を迎える―

 クヴァルに戻って数日。闇の術式や魔物襲撃への対処に慌ただしかったこの街は、ようやく少し落ち着きを取り戻したかに見えた。だが俺――新堂(しんどう) 現太(げんた)には、どうにも嫌な胸騒ぎが残っている。

 氷壁の迷路での手掛かり、亡霊の祭壇での激突……たしかに目先の事件は解決してきたが、黒い翼の男や、その背後にある強大な闇の存在は、依然として暗躍を続けているようだ。


「現太、そっちの道具はもう足りてる?」

 宿の一室で、白い翼のパサラが笑顔で保存食や回復薬の整理を行っている。姉のミレイも黙々と武器の点検をしながら、「最近は街に魔物こそ来ないが、不気味な噂が増えたわね」と低く呟く。

 噂とは、街の上空を“黒い翼”で飛翔する人影が度々目撃されるというものだ。実際に見た者は少ないが、その姿を認めた者は皆口を揃えて「背から漆黒の羽を広げていた」と証言している。

「私たちがいない間にクヴァルを攪乱していたんだろうな。あの男が本気を出すときって、どうなるんだろう」

 俺はそう言いながら、かすかな恐怖を感じる。今まで直接何度か相対したものの、まともに戦ったことはない。あの男には圧倒的なオーラがあったし、背後の“主”らしき存在まで示唆されている。


 一方で、街は着実に防衛体制を整え始めていた。ノーラ(エレオノーラ・フォン・アルトシュタイン)を含む騎士団が、城壁周りに見張りを置き、冒険者や有志も協力する流れになっている。

 そして俺たち――ナスティア、セラ、レナ、ミレイ、パサラ、ノーラといった“連合チーム”も、その防衛計画に組み込まれる形で準備を進めていた。


   街の不穏な空気

 その日の昼過ぎ、クヴァルの有力者が中心となって開かれる防衛会議が行われた。俺やミレイ、セラなども招かれ、闇の勢力への対策を話し合う。

「近頃、黒い翼の目撃報告が増え、街の外れでも闇の魔物が現れているという話があります。このままだと正面からの大規模襲撃もあり得るでしょう」

 防衛隊長が神経質そうに言葉を継ぐ。ノーラや騎士たちも緊張した面持ちだ。


 そこで俺たちは、北門と南門を中心に防衛線を築く案を提示する。街の周囲は堅固な城壁に囲まれているが、魔物や呪術師がどこから来るか分からない。複数の防衛線で準備し、何かあればすぐ合流できるようにするのが得策だ。

「全員が同じ場所に集中していては、分散攻撃を受ける可能性がある。かといってバラけすぎると各個撃破されかねない。……だから、要所を固めて、合流を容易にするルートを確保しましょう」

 セラが地図上に魔術で印をつけながら説明する。彼女の冷静かつ合理的な分析に、騎士団の面々も納得した。


 会議がひと段落し、俺たちは街の大通りを歩きながら警備ルートの下見を行うことになった。ナスティアが尻尾を振りつつ、「何だか面倒が多いな」と不機嫌そうだが、やる気は失っていない。

「闇の気配を感じる以上、放っておくわけにはいかないしね。あたしもさっさと倒したいよ」

 一方、レナ(エレーナ・イリイナ)は遠くの空を見つめ、「雪がやけに重たい気がする……近々また大きな吹雪が来るかもしれない」と口にする。天候まで闇に操られているのだろうか。

 そのとき、ミレイがピタリと足を止め、耳を研ぎ澄ませるように視線を上げた。


「どうした、ミレイ?」

「……今、上空を何かが横切ったわ。気のせいかもしれないけど」

 言われて見上げると、灰色の雲が低く垂れ込めていて、視界は良くない。けれど確かに、一瞬だけ漆黒の影が雲間を滑るように見えたような――。

「まさか、あの男……?」

 俺たちがざわつく中、少し離れた大通りのほうで人々のざわめきが聞こえた。駆け寄ってみると、数人の住民が空を指さして怯えている。


「い、今……黒い翼を広げた人影が、街の上を通り過ぎて……」

 住民が震える声で言う。ミレイは険しい顔で空を睨むが、既に何も見えない。

「奴はわざと街の頭上を飛んで、恐怖を煽ってるのかもしれないわね。直接の襲撃じゃないにしても、心理的に追い詰めるつもりかも」

 セラが唇を噛む。明確な攻撃行動はしていないが、このままでは街の士気が下がる一方だ。


   夜の宿

 会議後、俺たちは宿屋に戻り、翌日に備えて休息と最終確認を行うことになった。

「明日は早朝から詰め所で待機でしょ? ちゃんと暖を取って寝ないと死ぬわね、この寒さ」

 ナスティアが暖炉の前で尻尾をぱたぱたさせながら愚痴をこぼす。セラはタオルで髪を拭きながら、「冬って髪が乾きづらいわ……」とぼやく。レナも風呂上がりらしく、わずかに湯気が立つ柔らかい髪をなびかせている。

 男性と女性で部屋を分けたいが、宿は騎士や冒険者で溢れており、どうしても相部屋になる状況だ。仕方なく、カーテンやパーテーションで簡易的に仕切りを作り、狭い空間で毛布を広げる。


「騎士団にはベッドが足りてないって言うし……こればっかりは仕方ないよね」

 パサラがすまなそうに笑いながら毛布を持ってきてくれる。俺は宿の一角に座りつつ、女性陣の気配を意識しないようにするが、どうしても視界に入ってしまい、ドギマギする。

 湿った髪や軽装の女性陣は十分刺激的だ。ミレイが「何を赤くなってるの?」と突っ込み、セラやレナは呆れつつも笑みを浮かべる。ナスティアは「へへっ、情けないやつ」とからかう。

 わずかな緩みを感じる一夜だが、皆の頭の片隅には“明日の防衛戦”という緊張感がある。結局、雑談はそこそこに切り上げ、早めに目を閉じて仮眠をとることにした。


   夜明けの衝撃

 翌朝早く、街の鐘がけたたましく鳴り響いた。何事かと飛び起きると、騎士が駆け込んできて「北門付近に魔物の大群が現れました!」と叫ぶ。

「ついに来たか……!」

 俺たちは慌てて防寒具と装備を整え、宿を飛び出した。パサラやミレイ、ナスティア、セラ、レナもそれぞれ戦闘体勢。ノーラたち騎士団は既に北門へ向かっているらしい。

 吹雪の中、街の外壁を見上げると、闇色の魔物が雪原を埋め尽くすようにこちらへ迫っているのが見えた。やはり大規模な襲撃だ。

「まずは上から攻撃を加えて数を減らそう。セラ、レナ、頼む!」

 俺の指示に頷いた二人が魔法陣を展開し、範囲攻撃で先頭の魔物を蹴散らす。地響きのような咆哮が上がり、戦闘が始まる。


 城壁上にはノーラたち騎士が弓や魔法で応戦し、地上では冒険者が布陣を組んでいる。俺とミレイ、ナスティア、パサラも合流し、まずは魔物の先頭を削る動きだ。

「黒翼の男は……まだ来ないのか?」

 周囲を見回すが、空には灰色の雲が広がるだけで、人影は見えない。あれだけ街の上を舞って見せた男が、ここぞという時に姿を隠しているのは気味が悪い。

 しかし、魔物の数は相当多く、まるで陽動のようにも思える。街を弱らせるためか、あるいは何か別の狙いがあるのか――いずれにしても、クヴァル防衛線が本格的に稼働し始めたのだ。


 街に危機が迫る中、俺たちも正面を食い止めようと移動を開始。吹雪に阻まれながらも、北門近くの前線へ駆けつける場面で今回は幕を下ろす。

果たして、これが本格的な決戦の始まりなのか、それともまだ序章にすぎないのか。黒い翼の男がどこかで見ている気がして、俺は不安を払えないまま、剣と魔法の力を握りしめた。

激戦の末、クヴァルの街は一時的な勝利を収めたものの、失踪した騎士たちや、闇の術式の痕跡、そしてあの黒い翼の男の存在は、依然として大きな謎として残っている。仲間たちは、ノーラをはじめとする騎士団や冒険者と連携しながら、防衛と情報収集に奔走し、街に僅かな希望の光を取り戻した。

この物語の後半部では、互いの信頼と決意が固く結ばれ、次なる大いなる闇への挑戦へと歩みを進める。仲間たちとの温かい絆が、どんな困難な状況にも打ち勝つ力となる――。これからも、未来を切り開くために、俺たちは決して立ち止まらず、闇に抗い続ける。

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