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落ちこぼれ学生、異世界で最強になる-翼ある姉妹と挑む運命の戦い-  作者: NOVENG MUSiQ
集結する闇と広がる翼

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失踪した騎士たちと薄闇の結界

クヴァルの最北端に位置する監視所が突如として無人の状態に陥ったことから、仲間たちが消えた騎士たちを捜索するために雪山の厳しい環境へ足を踏み入れる緊迫した展開が描かれる。

新堂 現太を中心に、女騎士ノーラ、獣人ナスティア、魔術師セラ、そして雪国出身のレナといった多彩な仲間たちが、共に力を合わせ、失踪した仲間たちの行方や、そこに隠された闇の術式の痕跡に迫ろうとする様子は、彼らの絆の強さと、未知への挑戦心を物語っている。

厳しい自然環境と、闇の力に染まった監視所の異常な状況が、これから待ち受けるさらなる試練の序章であることを感じさせ、次章への期待と不安が交錯する、重厚な雰囲気を醸し出している。

 峠の監視所が空っぽであった事実は、俺たちもノーラたち騎士もショックだった。そこはクヴァルにとって重要拠点のはずなのに、まるで何もなかったかのように人影が消えている。

 消えた騎士たちを捜索するべく、周囲の地形を調べ始めた矢先、ナスティアが険しい顔で鼻をひくつかせる。

「血の匂いは薄いけど、戦いの名残はある。こっちのほうから少し漂ってるんだが……」

 彼女の指し示す先は、峠から外れた雪山の中腹。通常のルートからは外れ、地図にも載っていない道だ。


「そんな所に道があるなんて聞いたことがないわ」

 ノーラが首をかしげるが、ナスティアは「獣の嗅覚を信じろ」とばかりに進み始める。セラも雪に隠れた足跡を魔力感知で探りながら、「微弱な闇の残滓がある」と補足。

 俺たちは騎士隊の数名を監視所周辺に残し、捜索隊を組んで雪山へ踏み込むことにした。ノーラも同行を希望し、負傷していない騎士を2名連れてくる。

 吹雪に覆われ、踏み入るたびにブーツが膝まで沈むような道なき道を、慎重に進んでいく。レナは氷魔法で足元を固めたり、崩れそうな雪塊を凍らせて落下を防いだりと大活躍。寒さに強い彼女の存在が心強い。


 しばらく進むと、雪と氷でできた峡谷のような場所に出た。高い氷壁が両側にそそり立ち、足元は細くなっている。

「まるで自然の迷路だね」

 レナが呟くと、セラは地図を見つつ首を振る。

「ここは地図にない。たぶん雪崩や氷の浸食でできた新しい地形よ。……でも、何かいるわね。強い魔力を感じる」

 その言葉にノーラや騎士たちが緊張感を高める。ナスティアは尻尾を動かしながら匂いを辿る。

「鼻にくるな……明らかに獣や魔物とは違う。もっと嫌な感じの臭いがする」


 さらに奥へ踏み入ると、不意に視界が開けた。そこに、薄暗い光を帯びた結界のような半透明の膜が張られている。その向こうには、鎧を身にまとったまま倒れている騎士の姿が数名見える。

「仲間たち……!」

 ノーラが駆け寄ろうとするが、結界に阻まれて足を進められない。仲間たちは気を失っているのか微動だにしない。

「くそっ、どういう術なの?」

 ノーラは剣で結界を叩くが、白い火花が散り、びくともしない。セラがすぐに呪文を組み立て始める。

「闇の結界ね……規模は大きくないけど、鍵となる呪術具がどこかにあるはず。そこを破壊すれば解けるかもしれない」

「じゃあ、手分けして探そう。俺は……」

 と提案しかけたところで、結界の向こう側に黒いローブをまとった人物が現れた。そのローブの下から灰色の手が覗き、ただならぬ魔力を放っている。


「あんたたちか……邪魔をするなよ。これは儀式の途中だ」

 ローブの人物は低く、くぐもった声で警告する。まさか呪術師の一派か? 奴らはどうやら騎士たちを生贄に闇の力を蓄えようとしているらしい。

 思わずノーラが剣を構える。

「仲間を返せ! この地をお前たちの好きにはさせない!」

 だが、ローブの人物は鼻で笑うだけ。結界の内側から新たな魔物が姿を見せる。体毛が黒く毒々しい狼が2匹、騎士たちを守るように配置されている。

「セラ、どうにかして結界を破れないのか?」

 俺が焦って問いかけると、セラは冷静に瞳を閉じる。


「結界の外から攻撃しても、内部に作用しない可能性が高い。……鍵となる呪具がどこか周囲に仕掛けられてるはずよ。レナとナスティアで手分けして探ってもらえる?」

「了解!」

 ナスティアは嗅覚を研ぎ澄まし、レナは氷魔法で足場を整えつつ氷壁に開いた裂け目を探索する。ノーラと騎士二名は結界周辺で待機し、俺とセラは結界本体への攻撃を試す。

 闇色に揺らめく結界に向けて、セラが輝く光弾を撃ち込む。けれど、外側で弾かれてしまい、内部には干渉できない。俺も光の矢を放つが、同じく弾き返される。


「手こずるわね……」

 セラが苦笑いを浮かべたそのとき、ナスティアの声が響いた。

「あった! これかもしれない!」

 見れば、氷壁の裏手に怪しげな祭壇の欠片が埋まっていて、そこに漆黒の水晶が鎮座している。ナスティアが雪を払い、レナが氷魔法で掘り出した。

「この水晶に闇の術式が仕込まれてる!」

 レナがそう言った瞬間、ローブの人物が結界の向こうで動揺したのか、狼たちをこちらへけしかける。

「やらせはしない……っ!」


 結界の内側から狼の魔物が跳びかかってくるが、結界自体に阻まれて噛みつかれない。しかし、魔物の爪と闇の衝撃波が外側に漏れ出し、ノーラや騎士が必死に防御している。

「現太、時間を稼いでちょうだい!」

 セラは急いでそちらへ駆け、呪文を組み上げる。俺は魔力を集中し、結界の表面へ光弾を連続発射する。派手な爆発はないものの、結界の闇を少しずつ浄化していく手応えがある。

 ナスティアとレナは発見した黒い水晶を叩き割ろうとするが、強い呪力で守られているのか、なかなか砕けない。ふたりが苦戦しているところへ、ノーラが加勢に走る。


「私の剣でどうにかなるなら……!」

 ノーラは騎士として研鑽を積んできた剣術で、一撃を水晶に叩き込む。金属が軋む音とともに亀裂が走るが、まだ割れない。

「もう少し……!」

 ナスティアは爪を振り下ろし、レナが氷の槍を生成して同時に攻撃。三方向からの集中攻撃を受け、水晶はついに砕け散った。


 すると、結界がわずかに揺らぎ、ローブの人物が「くっ……」と呻く声が漏れる。

「今だ……!」

 セラが結界に向けて大きな魔力をぶつける。俺も光弾で一気に押し込み、結界は音を立てて崩壊し始めた。中で苦しがるローブの人物と狼の魔物も、闇の術式を失ってか動きが鈍い。

 ノーラや騎士たちが一気に突撃し、魔物を討伐。ローブの人物は間一髪で黒い渦を生み出し、姿を消してしまう。まるで闇の空間に逃げ込むように消え去った。


「逃げたか……! あいつ、一体何者なんだ」

 俺が悔しそうに拳を握る。闇の呪術師なのは間違いないが、どこかで指示を受けている気配もある。

 一方、結界の解放で取り残されていた騎士たちは、意識を失っていただけで命に別状はなかった。ノーラは涙を浮かべながら仲間の無事を喜び、騎士隊全体で簡易的な救護を行う。

「ありがとう……本当に、あなたたちがいなかったら」

 ノーラが俺たちに頭を下げる。仲間が救われた安堵と、闇の術式を打ち破った感謝が入り混じった表情だ。


 セラは崩れかけた祭壇の痕跡を調べながら言う。

「ここで闇の力を蓄えて、さらに大規模な儀式をやろうとしていたのかもしれない。騎士たちを生贄にするつもりだったのね」

「ふざけた真似を……」

 ナスティアが舌打ちする。レナは震える声で「魔族や呪術師……まだまだ油断できないわ」と呟く。

 こうして、監視所の騎士たちの失踪事件は解決したが、手放しで喜べる状況ではない。ローブの人物が残した“本当の災厄”が何なのか、依然として闇のベールに包まれているからだ。


 俺たちは救出した騎士たちと共に監視所へと戻り、再び拠点を取り戻すことを確認。ノーラと数名の騎士はここを守りながら復旧に努め、俺たちはクヴァルへ報告に帰ることになる。

 ただ、この雪山と闇の呪術師。もしももっと大きな組織が裏で暗躍しているなら、再び襲撃される可能性は高い。ノーラが心配そうにこちらを見やるので、俺は笑って言った。

「大丈夫。また何かあったら、すぐに駆けつけるさ。……俺たちはクヴァルに留まってるから」

 そう言うと、ノーラは少し顔を赤らめ、ぎこちなく微笑んだ。


 峠に冷たい風が吹き、雪が舞う。失踪した騎士は救えたが、闇の勢力は逃れた。俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。

 クヴァルで待っているミレイやパサラにも、この一件をしっかり伝えなくては。再度雪山を下る覚悟を固める俺の心には、「こんなのは序章に過ぎない」という予感がはっきりと芽生えていた。

捜索隊が雪山の険しい道を進み、監視所の謎と消えた騎士たちの痕跡を突き止める中で、仲間たちはそれぞれの決意と絆を深めながら、闇の勢力が仕掛けた不吉な術式の断片に向き合いました。

今回の戦いで、仲間同士が互いに助け合い、協力して危機を乗り越えたことは、今後のさらなる大きな戦いへの大きな一歩となるはずです。

しかし、解明されぬ謎と、残された「闇の痕跡」は、今後も新たな脅威として俺たちの前に立ちはだかるだろう。

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