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ホワイトエレゲイア  作者: 奥村 葵
第四章 エアリーの生い立ち編
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第40話 王国騎士団

 ドアを蹴り開けて外へと勢いよく飛び出す。

 すると目の前に、()()()()()()()()()()()が五……いや、六人固まって突っ立っていた。


 彼らは輪郭しかわからない程、頭から足先にかけてグラデーションのかかった虹色に輝いており、しかもご丁寧に上から下へと色が移動している。

 そしてこれがまた本当に目に悪い発色で、これならどこに隠れても一瞬でわかるだろう。


 正直、ありえないほどに面白い。


「あ、アッヒャヒャヒャッ!めっちゃ光ってるやん!あ、アッハハ、ヒャハハハゴホッ、ゲホッ、は、は、腹痛い腹痛いあひゃひゃひゃ……!ヒーッ!」

「エ、エアリー!お前これッ、アッハハハハ!なな、なん、フハハ……!」


 抱腹絶倒とはこの事を指した言葉なのだろう。目の前にいるのは明らかに不審者だが、あまりにも滑稽すぎる。何の目的で外に出たのかさえ忘れてしまう程だ。


「わ、罠は無いって話だっただろ!」

「詠唱は確かになかったんです!こ、痕跡だって無くて……!」

「私の魔術嘗めるからそんな光んねん!フッ、アハハハ……!」


 エアリーは変わらず笑い続けている。目の前の不審者は身動き一つ取れないようで、腰を低くしたまま虹色に輝き続けている。

 

「はぁ、あのな?分かりやすい痕跡あったら罠ちゃうやん。そんなヘマするわけないやろ?自分ら、もっと勉強し。フハ、ヒヒヒッ……!」


 あれ?確かエアリーは、使用した魔術には痕跡が残るとか言っていたはずだが……。


「馬鹿な、痕跡を残さない魔術だと!?そんな事がある訳――」

「痕跡はあるで。自分らが探知できんほど微弱にしとるし、なんなら性質もちゃうからな」


 うーむ、何の話か全くわからない。とにかく、普通の調べ方だと足がつかない魔術だったってことか?


「ッ……嘗めるな!」


 そう叫んだのは、きっとリーダー格の男だ。輪郭しか捉えられない為、具体的に何を持っているのかは分からないが、棒状のようなもの――恐らく剣の類だが、それを振り回し、その先端をこちらに向けた。


「我々にも意地がある。エアリー・アルパール、ここで始末させてもらう!」


 ……え?始末って言った?何、え?殺す気?俺もいるんだけど。まさかとは思うが……!


「バーニングブラスト!」


 リーダー格の男がそう叫ぶと同時に、激しい閃光が剣の先から放たれた。


「嘘やろッ!」


 エアリーは反射的に、持っていた杖を音が鳴るほど勢いよく横に一振りした。その直後、目の前の不審者よりも奥の方で大爆発が起きた。


 何が起きたのか、俺にもよく分からない。ものの一、二秒だが、情報が多過ぎる。

 激しい閃光、エアリーの杖、大爆発……。まるで分からない。


「“バーニングブラスト”っちゅうたな……。相手を高威力の火で貫き、体内に活性化状態の魔粒子を残留させる。そしてそれを爆破魔術へと変換し、内側から爆発させると……。ほんまに殺す気やん、それも私だけやのうて、夏月諸共か」


 普段の軽い言葉じゃない。訛りも少し修正されているような気がするし、何より声が少し低い。

 エアリー本人は至って冷静で、相手が使用してきた魔術を丁寧に分析していた。

 

 というか、俺も殺されかけたってことか?冗談じゃない。一体、何の理由で。


「ッ……。何をした、何をされた、何が起きた!」


 不審者一行は、何が起きたのか一切理解できていないらしい。

 だが、それは俺も同じ。とにかく今は状況を把握したい。目の前の事情もそう、俺の今の立場も何もかも、把握していないことが多過ぎる。


「しっかし、私だけならともかく、夏月にも手を出そうとするとはな……。ほんまは悪戯程度で許したろ思っとったけど、もうそういう訳にはいかんわ」


 そう言ってエアリーは再び杖を振った。すると、目の前の不審者六人の体が発光をやめ、本来の姿を取り戻した。


 一見して山賊の類ではないと分かる程に整えられた装備。金がかかっているであろう鎧、甲冑、そして白銀の剣と杖……。どれをとっても一流だと分かるほどの輝きがある。

 そんな装備を纏った人物が六人いる。顔まではよく認識できない。


 だが、こいつら一体何者なんだ……?


「……王国騎士団やと?」

「王国騎士団!?なんでこんなとこに……?」

「わからへんけど、まあ、穏やかやないな」


 目の前の六人は、王国騎士団らしい。元々城に勤めていたエアリーが言っているんだ、見間違えることはないだろう。


「ああ、勘違いすんなよ。自分ら全員、こっから無事には帰さんからな」


 本来平和主義である筈のエアリーの口から、こんな言葉が出てくるとは思ってもいなかった。それと同時に、言葉からその内容相応の圧を感じた。

 よく見ると、いつもは飄々としているような表情が、今は違う。

 冷めたようで、それでいて鋭い目。ほんの少しだけ開いている口元、その口角は下がり気味。誰がどう見たって、不機嫌を通り越した怒りの表情だとわかる。


「た、隊長……」

「なんだ!こんな時に――」

「包囲魔術――その類が今、張られ、ました……」


 側から見ていた俺も、その発言には驚かされた。

 “無事には帰さない”というエアリーの言葉に、嘘偽りはないらしい。


「よう分かったな。なら、球状やってことも分かるな?」


 包囲魔術というものが球状であること以外、どういったものなのか知る由もないが、エアリーの魔術なのだから、きっと生半可な実力なら、ここから外に出ることは決して叶わないだろう。


「……エアリーエアリー、さっきの爆発、何?」


 この声は、クラリスか。爆発音で起こしてしまったらしい。目をこすりながらこちらへと歩いていた。

 寝る時は飛竜態だったが、人間態の方が行動がしやすいということだろうか。まあ、そこは今はいいのだが……。


「ああ、クラリスか。大丈夫や、大したもんちゃうよ」

「ふーん……。じゃあ、あの人間擬きは?」

「まあ、敵やな。私と夏月に用事あるらし――ん?()()()()?」


 それには俺も驚いた。あの不審者六人、人じゃないっていうのか?


「人間の匂いじゃないよ、アレ。多分――あ、違う。なにか混ざってるんだ」


 混ざってる?純粋な人では無いって事なのか?


「何かわかるか」

「ゴブリンとかオークでもたまに、この匂いがする奴はいたけど、みんな()()されてたね」

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