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特別短編 ドキドキ!?バレンタインデー

遅くなりすぎました。

ごゆるりとお楽しみ下さいと言いたいのですが、ごゆるり過ぎたので化石を見物するような気持ちでお楽しみ下さい。

「お前にはまだまだ早い、もやしがチョコレート貰うんじゃねぇ!」

 

 中学三年の三学期、人生初の受験を終えた生徒が解放感に満たされていた。僕はというと蹴られていた。というか逆さまに吊られていた。

 

 バレンタインデーとは利益を追求するためにお菓子会社が勝手に広めたキリスト教の文化で、無理やりチョコを送る日と決めたという認識だった。

 

 実際今までにチョコを貰ったことも渡したことも無かったので全員がそういう認識なのかと思っていた。

 だから小学校で教師が「バレンタインにチョコを持ってきてはいけません」と言った時には強烈な違和感を覚えた。

 しかしそんな認識も今日、音を立てて崩れた。


「ごめんなさい」


 顔を主に殴られていたので頬が腫れてくぐもった声になってしまう。もう一度謝ろうかと思っていると僕を蹴っていた男子が怒鳴った。


「お前馬鹿にしてんだろ! ちょっと顔がいいからって虫ケラが」


 理由はわからないが神経を逆撫でてしまったことはわかった。なのでもう一度謝る。


「ごめんなさい」


「こいつ、俺らのこと舐めてんだろ」

「舐めてないです」


 腹部に強烈な痛み、囲んでいる男子たちの表情を見るにまた怒らせてしまったらしい。


 放課後に呼び出されてからはずっとこの調子だった。

 

 蹴られる→謝る→怒鳴られる→謝る→蹴られる

 

 ずっと同じことを繰り返して飽きないのだろうか。僕はそろそろ飽きてきたのでここを出たいと思った。


「そろそろ解いてもらってもいいですか?」


 長時間逆さになっていると体に悪いらしい。その証拠に僕の頭はボーっとし始めていた。

「これを飲み込んだら解いてやるよ」

「嫌です、まずそうですし」


 差し出されたのは一本の煙草。校内禁煙なのだが煙草には火がついている。正直成人したら一度は試してみたかったが、この男子生徒はさもまずそうに煙草を吸っている。

 

「俺がまずそうな顔してるのはお前のせいなんだよ、お前の言葉がいちいちムカつくからこんな顔してんだ」


 なるほど、まずそうな顔をしているのは怒っていたからなのか。ならいずれ試してみたくはある。世界的に煙草は禁止の流れになっているし、日本で吸えなくなるのも時間の問題だからだ。


 もしかして彼らはそのことを見越して煙草を吸っているのだろうか、だとしたら見かけによらず賢い人たちなのかもしれない。


「じゃあ解けないな、残念だよ」


 そろそろ飽きてきたので足をよじってロープから抜く。運が良かったので、一人が殴りかかってきたのを寸前のところで避けることができた。呆然と煙草をくわえている男子にその煙草を押し込んでやれば全員が吐き始めた。


 床が汚れていくのが気がかりだったのだが掃除する気にもなれずそのまま家に帰った。制服に煙草の匂いがついていたせいで母親にはさんざん持ち物を検査された。そのときに貰ったチョコも見られてしまい少し悲しかった。


 お菓子があるとばれてしまった以上親に分けてあげなくてはならない。できれば独り占めしたかったので悔しくて仕方がない。次吊るされそうになったら顔がつぶれるまで殴ってやろう。


 母親にチョコを一粒分けようとするとまた怒られた。もっと欲しいのかなともう一粒上げたらもっと怒られた。なにやらこういう物は人に分けてはいけないそうだ。


 僕は貰ったチョコを抱きかかえて喜んだ。独り占めできるなんて幸せすぎる。さっきとは違って母は微笑んでいたので僕には何が正解なのか分からなくなってしまった。



 そして次の日から吊るされなくなった。せっかくなら三年間やり通せばいいのにと思った。

『特別短編 ドキドキ!?バレンタインデー』は3月に投稿する予定がホワイトデーも過ぎた4月になったこと、改めてお詫び申し上げます。

そして、改めてお詫び申し上げます。

次回作は暫く先になりそうです。

多重債務者みたいになっているので、なろうに手がまわらないです。

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