表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

サイコパスのデートプラン

みかんでも食べながらごゆるりとお楽しみください。

 衝撃の告白から3日経った。告白の理由が分からないということに加え、桐生は付き合っていることを内密にしろと言ってきた。謎に謎が重なって相手の思惑が見えない。秘密にしろと言ってもばれるのは時間の問題だ。

 例えば、桐生は初デートは桜町がいいと言ってきた。桜町は学校がある向日葵町の隣町で同じ高校の生徒がたくさんいる。向日葵町にも娯楽施設は十分あるが、教師の見回りがきつく羽を伸ばせない。


 もし、普通の恋人同士であれば桜町を選ぶことに何ら疑問はない。しかし、同級生たちに知られたくないのであればもっと遠い場所に設定すればいいのだ。それこそ恋人の巣窟であるディズニーとか。


 だめだ、とにかくデートプランを考えなくては。

 それはつい昨日のこと

『初デートはどこ行く?』

 メッセージが届いた瞬間いろいろな選択肢が頭に浮かんだ。しかし、そのどれもが一般的なのか分からなかった。探りを入れてみよう。

『行きたいところはないの?』

『ごめん、思いつかなくて』


 ここで僕は頭を抱えた。聡明な彼女のことだ。どこに行くか思いつかないから連絡をよこしたというのに、呑気にも行きたいところを尋ねてしまった。

 

 彼女にしてみれば『思いつかないから聞いてんだろ』という具合だ。慣れないことをすると必ずぼろが出る。僕は頬を二回叩いて深呼吸をする。


『じゃあ、僕が計画しようか?』

『ありがと、楽しみ』


 とってつけたような『楽しみ』だ。きっと僕に疑いを持っているのだ。こいつ、『普通の男子と違うな』といったように。


 

 「弱ったな」

 昔近所のお爺さんが言っていた口癖がこぼれた。


 僕が一番憂慮しているのはここまでのメッセージがすべて誘導されたものということだ。

 初めに、誘導して僕が自分で計画すると宣言させる。

 次にどんな計画を立てたのか当日じっくりと審査する。

 ここで、おかしな点が見つかれば晴れて僕は容疑者だ。


 『避けられない罠』これまで彼女が仕掛けてきた罠は存在が分かっていても回避できないものだった。

 

 告白の承諾 デートプランの作成


 僕はこれほど大掛かりで巧妙な罠を見たことがない。そこからも彼女のクラスメイトを守りたいという意気込みが感じられる。非常に強い意志だ。


 理想のデートとは何だろう。世の男女が一度は考えたことのある難問に突き当たった。これがなぜ難問なのか、それは人それぞれタイプが違うからである。答えは十人十色というわけだ。


 よって選択肢は平均的なものに限られる。映画館、水族館、遊園地……

 とりあえずこの三つから考えよう。

 

 まず、映画館はダメだ。世の男女が映画館を選ぶ理由としては『話さなくていい』とか『映画の感想を言い合える』というものがある。

 

 前者は僕も賛成だ。離す時間が短ければ短いほどボロが出やすい。

 

 しかし、落とし穴がある。後者は非常に問題だ。映画には一般的に注目される場面がいくつかある。感動シーンや衝撃的なシーンのことだ。

 

 それを僕は理解できないし、見つけられない。細部に注目することや展開を理解することはできてもそこに感情は内在しない。すなわち感想の言い合いでボロが山のように出てきてしまうのだ。


 「どの場面が面白かった?」などと聞かれてしまえば答えに詰まるのは目に見えている。だから映画はだめだ。


 次に遊園地、これも駄目だ。

 同級生にばれたくないのならディズニーでいいだろうと思っていたが、よく考えればだめだ。世の遊園地には待ち時間という苦行が設けられている。すなわち待ち時間ずっと話し続けなければならないのだ。そんなことが僕に可能なのか? もちろん不可能である。


 残ったのは水族館だ。これならいける。


 僕は電車の時間を調べて集合時間と場所を送った。返事は一秒と待たずに返ってきた。

『いいね水族館、楽しみ。お昼はどうする?』

『近くにイタリアンのレストランがあるからそこにしよう』

 

 「了解」のスタンプが送られてきて僕はため息を吐く。ここまで返信が早いということは送信取り消しを見逃さないためだろう。文章の推敲を念入りにしてよかった。


   桐生由香、油断ならない女だ。

 

 

年末いかがお過ごしでしょうか。

筆者は『こたつみかん』が好きすぎて寒くなくてもこたつに入ります。


★の評価やブックマークをしてくださるとこたつでゴロゴロします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ