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4/13

本当に味方でよかった

 羽月くんの負けず嫌いが発動して、他のゲームでも対戦することになったのだけど。


「よしっ、フルコンボ! 俺の勝ちだな」

「うーん、だめだ。目が追いつかない。この曲難しすぎるよ」

「はは、そうだろう?」

「もしかして、わざと?」

 

 リズムゲームでスコアを競い。


「すきありっ! コンボ決めさせてもらうよ」

「あっ! ちょっと、まて!」

「ははっ! 待たないよ!」


 格闘ゲームで羽月くんにコンボをきめて。


「よし、景品ゲットしたぞ」

「あ、ちょっと待って、僕もあと少しで取れそう」


 クレーンゲームで取れた景品の数を競う。

 様々なゲームで勝負をして、そして最後には……。


「四勝三敗で俺の勝ちだな」

「まさかバッティングセンターにまでつれて来られるとはね……。運動は苦手なんだよ」


 ゲームセンターから近くのバッティングセンターに移動した僕たちは、そこで最後の勝負をした。


 運動の苦手な僕はほとんどのボールを空振り。

 何回かバットにボールを当てることはできたけど、全部、微妙な当たりばかりだった。


 対する羽月くんは綺麗にボールを打ち返していて、運動能力の高さを発揮していた。

 

 勝負を終えた僕たちは、温かい飲み物を買って、近くのベンチで休むことにした。


「まさかこんな手を使ってくるなんてね……。羽月くん、友達無くすよ?」


 僕が呆れたふうに羽月くんを見ると、羽月くんはバツの悪そうな顔をする。


「悪かったよ。こうやって誰かと遊ぶのは久しぶりだったからな。少し調子に乗ってしまった」


 羽月くんの言葉を聞いて、前から疑問に思っていたことを聞いてみようと思った。


「羽月くん一人でいることが多いけど、何か理由があるの? 羽月くんなら友達たくさん作れそうだけれど」


 こうやって遊んでみて分かったのが、羽月くんは意外とノリが良く、明るい性格をしているということだ。


 容姿の良さもあるし、羽月くんと友達になりたいと思う人は、結構いると思うのだけれど。


 僕の質問に、羽月くんは気を悪くした様子はなく、しばらくの沈黙の後、少しずつ自分の考えを話し始めた。


「まあ、ただ単純に気の合うやつが、周りにいなかっただけの話なんだがな。クラスの奴らからは少し距離を取られていたし。だったら一人でもいいかーって思ってな」


 羽月くん、スペックが高いからな。まさに完璧超人って感じだし。

 周りの人たちは少し気後れしてしまったのかな?


「だからいつも一人でいたと?」

「そういうことだな」


 羽月くんの考えを聞いて、素直に凄いなと思った。

 一人でもいいなんて、僕にはそんなふうに考えることはできそうにない。


「お前と遊ぶのは楽しかった。これからも仲良くしようぜ」


 羽月くんはそう言って、今日一番の笑顔を見せた。


 僕は羽月くんの言葉に少し動揺する。

 ようは友達になろうということなんだろうけど、羽月くんから僕に対して、そのような言葉が出てくるとは思わなかったのだ。


 確かに今日は楽しく遊んだけれど。


 答えがすぐに返ってこなかったからなのか、羽月くんは「どうだ?」と再度聞いてくる。

 その表情は少し緊張しているようだ。

 羽月くんもこういうことで緊張するんだ。


 最初は上手く言葉が出てこなかったけれど、冷静になってみれば、答えはすぐに出た。

 今度は僕が勇気を出して「こちらこそよろしく、透」と言った。

 

 羽月くんは一瞬驚いた顔をした後、「よろしくな! 涼」と明るい笑顔を浮かべた。

 こうして僕に新しい友達ができた。

 

 その後は連絡先の交換をしたり、遊びの約束をして解散となった。


  

 次の日の朝。

 学校に登校した僕は、先に登校していた北くんに、羽月さんと知り合ったことと、続いて、透と友達になったことを話した。


 最初は半信半疑といった様子の北くんだったけど、僕が昨日の話をすると、面白そうに話を聞いている。

 そして話が終わると、北くんは納得したように何回か頷いた。


「羽月さんの件も驚いたが、その後の話もすごいな。まさか、あの羽月くんと仲良くなるなんて。確かに小鳥遊くん、ゲームが上手いもんな。羽月くんも気が合うと思ったんだろう」


 そう言った後、北くんは顔に笑みを浮かべた。


「それにしても、羽月くんがそんなに負けず嫌いだったとは。なんだか笑える」

「確かにね」


 そうして二人そろって笑っていると、一人の男子生徒が勢いよく教室の中に入ってきた。

 自然とそちらに視線が向く。そして、その入ってきた男子生徒を見て少し後悔する。


 なぜなら昨日揉めた男子生徒だったからだ。

 男子生徒は僕に気づくと、怒り顔でこちらに近づいて来る。


「お前のせいで……!」

「え?」


 僕の前に立った男子生徒は、絞り出すような声でそう言った。

 僕は男子生徒が何を言いたいのか分からず、思わず聞き返す。


「お前のせいで昨日のことが学校中に広まってしまったんだぞ! どうしてくれるんだ!?」


 男子生徒の言葉にこちらは唖然(あぜん)とする。それは君のせいだろう。

 困った僕は北くんに「噂広まってるの?」と尋ねる。


「学校中ではないだろう。あくまで生徒のごく一部が知っているという感じではないか? 俺も知らなかったし。まあ今は本人が自分から広めているようだけど?」


 北くんはそう言って、男子生徒に残念なものを見るような目を向ける。


「うるさい! こいつさえいなければ、俺が周りから馬鹿にされることもなかったんだ!」


 騒ぎ立てる男子生徒に、教室の雰囲気も少しずつ悪くなっていくのを感じる。


 たぶんこの男子生徒はたまたま自分の周りの人が昨日のことを知っていたから、自分の噂が学校中に広まってしまったと勘違いしてしまったのだろうけど。


 これでは北くんの言う通り、自分で噂を広めてしまっているようなものだ。

 それ自体は別に構わないのだけど、クラスのみんなから注目を集めているこの状況は、なんとかしたい。


 どうするべきなのか頭を悩ませていると、「どうしたんだ? 随分と騒がしいな」と透がそう言いながら、教室の扉を開けて現れた。


 意外な人物の登場に、クラスのみんなの間でざわめきが起きる。


 透は僕の方へ歩いて来ると、さっきまで騒いでいた男子生徒を見る。

 

「悪いが、こいつを借りてもいいか?」


 透からは相手に有無を言わせない迫力を感じる。

 さっきまでの威勢がなくなった男子生徒は、何回か頷くと、慌てて教室から出ていった。


「なんだったんだ?」


 不思議そうな顔をしていた透は、こちらに向き直ると、「何かあったのか?」と尋ねてきた。


 そういう風に聞かれてしまうと、透の妹の楓さんのこともあるので、言わないわけにもいかないだろう。


「昨日楓さんに無理矢理迫っていた男子生徒だよ。僕がそれを止めたから、逆恨みされてしまったようなんだ」


 僕がそう言うと、透の目が厳しいものになり、男子生徒が去っていった方を見る。


「楓から昨日相談を受けていたんだけどな。そうか、あいつか……」

「えっと……。穏便に済ませてね」

 

 透のまとう雰囲気があまりにも怖くて、ついそんなことを言ってしまう。


「そりゃあ、当然穏便に済ませるさ。もうあいつを楓に近づかせないように少し話をするだけだ」


 そう言って透は凄みを感じさせる笑みを浮かべる。


「今日は俺の家に遊びに来るんだろ? 放課後、校門のあたりで合流な?」

 

 透はそう言って、教室を出ていった。おそらく男子生徒のところへ向かったのだろう。

 透が出ていった後の教室に、騒がしさが戻ったのは、しばらくしてからだ。


 その間、教室にいたみんなは戸惑い気味に僕の方を見ていた。

 何が何だかわからないといった様子だ。


「凄い人と友達になったな」

「うん」


 僕はそう言って、苦笑するしかなかった。

 本当に透が味方で良かったと思った。

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