第二話
「ふぅ」
LOG内でセーフゾーンに着いた俺たちはその後間もなく解散し、
リアルに意識を戻していた。
「あ、あいつに気になってたこと伝え忘れてた。
まあどうせ明日も遊ぶだろうしその時でいいか。」
そう思い秀真はそのままベッドに横たわり目を閉じる。
その時ふと、
「にしても、アンズか。ゲームとはいえ似てたな」
そう秀真はだれかを思い出すかのように眠りにつくのだった。
アンズと重ねていたのは遠い昔の記憶
それは秀真にとってつらい出来事のひとつだった。
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「ネネーきょうはなにしてあそぶ?」
秀真には小学生の頃、放課後にずっと遊んでいた”ネネ”という子がいた。
というのも最初から一緒だったというわけではない。
事の発端は3年生の頃、基本的に誰に対しても一定の距離を保って、
周りを観察するように見ているだけだったその子に対して秀真が、
「なにみてんの?みててたのしいか?」
「わからない、でもみんなたのしそうにしてるから」
「わからないんだったら、いっしょにあそぼうぜ!そのほうがぜったいたのしいって!」
と半ば強引に遊びに巻き込んだことをきっかけに秀真とネネは一緒にいることが多くなった。
始めこそ戸惑っていたネネも秀真といる時は楽しかったようで、
ベンチに座って周りを見ているだけだったころよりも
随分と笑うようになっていた。
ただ秀真がほかの人と遊んでいるときは、自分は会話には参加せず
一歩引いた位置で見守るだけだった。
それに見かねた秀真は、
「ネネ、たのしくないのか?」
「?、んーんたのしいよ。
でもしゅうくんたちがたのしそうにしてるところわたしがはいると
みんながたのしくなくなっちゃう。
だからみてるだけでいいよ」
突然現れたネネという存在に
秀真の周りの友達はあまりよく思ってなかったようで
日々観察してきたネネの目にはその空気感を読み取るのは容易だったらしい。
普段は元気な秀真も何かを察したらしく少し考え事をしたと思ったら突然、
「おれ、ネネがあそぶときだけあそぶ。
というかネネとだけあそぶ。」
「え!?みんなとあそんでるほうがたのしいとおもう...よ?」
「ほかのやつとあそんでてもネネとあそぶときほどたのしくない」
そういって驚いているネネの手を取ると遊んでいた皆を置いて
秀真はその場から姿を消した。
それからずっと秀真はネネと、ネネだけと遊ぶようになり
ネネも最初こそ秀真の友達との関係を心配したが、
次第に気にならなくなるほどいっしょにいる時間を楽しんでいった。
「おれたち、ずっといっしょにいような!」
「いる、ずっといっしょ」
そう約束してしまうほどに。
ただ、そう長くは続かなかった。
中学校に上がる手前、ネネに異変が起きた。
頭痛や息切れが多くなり何もしていないのに出血したり
会えないことが多くなっていった。
程なくしてネネの母親が病院から聞かされたことに秀真は驚いた。
ネネは白血病だったのだ。
白血病のことは小学校の講演会で聞いていたので多少知識はあった。
白血病とわかってからネネは入院することになり、
程なくして祖父母の協力を得るため実家のある他県へ転院することになった。
転院の際、ネネが「今の姿をしゅうくんに見せたくない」と会うこともできなかった。
それから秀真は必死にネネとの連絡を試みたが、
電話番号は家のものでつながらない
メールは、そもそも携帯番号を知らない
手紙は...転院先の住所を知らない
もしかしたらと転院前に居た病院に転院先を聞いてみたが
個人情報だ、と当たり前に門前払いされた。
それから秀真も専門学校に上がるときに他県で独り暮らしし始めたのもあり
今に至るまで再会は果たせていない。
そんな遠い記憶のネネとアンズの立ち振る舞いが似ており
それを眠りにつく直前にふと考えてしまったのもあってか
数年ぶりに夢として思い出すのだった。
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不定期投稿になるかもしれません、けど基本形は金・土・日に各一話ずつ出せたらと思ってます。
どうか最後までよろしくお願いします。