81.女子会トークには入れません
僕達は今日も体育館裏で平和に昼食を食べている。新しくできた友達である鎌田に誘われたが、流石に教室で食べるのは気が引けた。
植村や工藤も教室で食べているのだ。流石にあれから何かして来ることはないが、教室にいると周りからの視線が痛い。
そして、今日も一段と隣からの視線を感じる。
「あのー、よかったら一緒に食べますか?」
ずっと見られていたのは、前から近くで食べている日向だ。優等生でマドンナ扱いの日向が一人で昼食を食べていることに気にはなってはいたが、今までは一人で食べたいのかと思っていた。
ただ、ここ最近視線が気になって仕方ない。
「いや、私は――」
「遠慮しないで一緒に食べればいいじゃん!」
「でも、また迷惑が――」
「そんなのどうにでもなるわよ」
少し遠慮している日向を香里奈は強引にも引っ張って来る。戸惑いながら日向はゆっくりと僕の隣に座った。
「お邪魔します」
「お邪魔されます?」
あまり話したこともない日向に少し戸惑いながらも、気を使わせないように挨拶する。
その空気感に堪らなくなったのか、香里奈は大きなため息をついた。
「はぁー。二人ともいいかな?」
「あっ、はい!」
「はい!」
僕達は目の前に立つ香里奈に視線を向ける。
「お兄ちゃんと日向さんは同じクラスなんですよね? なんでそんなによそよそしいのよ」
そんなことを言われても、今まであまり関わろうとしてこなかった人物と話せるようになるわけではない。
今でも同じクラスで話せるのは鎌田だけだろう。正確に言えばあいつがうるさいぐらいに構ってくるのだ。
なんでも僕のことを"寡黙なリアル侍"と認識しているらしい。剣道をやり過ぎた影響か、頭にずっと竹刀を打ち付けられたからか、頭がいかれている。
「特に話すことがないから……かな?」
「はぁー。お兄ちゃんって本当に鈍感ね」
香里奈はさらに大きくため息をついていた。
「鈍感? 僕ってそんなに鈍感ですか?」
隣にいる日向に声をかけると、日向はどこかあたふたとしている。やはり鈍感なのだろうか。
「いえ、駒田くんは鈍感では……ないです……」
日向と目が合うと彼女は顔を赤く染めていた。最近暖かくなってきたが、時折吹いてくる風が肌寒いのだろうか。
「よかったらこれ使ってね」
僕はそっとカーディガンを脱いで、日向の膝に掛ける。最近洗ったばかりだから汚くはない。
日向はやはり寒かったのか、さらに顔を赤くしていた。
「あー、忘れていたけど、お兄ちゃんって鈍感じゃなくて無自覚系だったわ」
香里奈は日向にくっつくように座り、自分にもガーディガンを膝にかける。
いつの間にこの二人は仲良くなったのだろうか。過去の記憶が戻ってから香里奈の変化には驚いている。昔は自分から話しかけるような妹ではなかったのに、しっかりと話せるようになったのだと妹の成長を実感する。
「お兄ちゃんは天然を超えて宇宙人だと思わないと気持ち伝わらないよ?」
「気持ちってそんな大それた――」
「そんなこと言っていると私が取っちゃうよ?」
「二人は兄妹じゃ……」
「ん? 私達って義理の兄妹なの。血が繋がってないから戸籍上で結婚できないだけだよ?」
ここでも女子会トークは盛り上がっている。現実でも鏡の中でも僕は一人で行動した方が合っているようだ。
お弁当を食べ終わり立ちあがろうとすると、突然手を掴まれる。
「お兄ちゃんどこにいくの?」
「駒田くんどこにいくんですか?」
どうやら僕は一人になれないようです。
「おい、優樹菜こんなところで何して――」
「馬鹿は静かにして!」
そして、その光景を体育館から見ている女子生徒がいた。
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