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69.人気者

 教室に向かうとクラスはざわざわとしていた。僕が教室に入ると一瞬で静かになり、視線が集まってくる。


 この視線に慣れていないが、昨日あれだけ過去の画像が編集された動画が拡散していたため仕方ない。


 僕は自分の席に着くと、授業の準備を始める。チラチラと視界に入る視線に自然とため息が出る。


「駒田くん今いい?」


 僕に話しかけてきたのは隣の席の女の子だ。


「何か忘れ物ですか?」


 僕に話しかける人なんて、宿題を見せて欲しいか忘れ物をしたから授業中に見せて欲しい時ぐらいだ。


「ぷっ、あははは。駒田くんって結構天然なんだね」


 この人は本物の天然な人を知っているのだろうか。一度両親に合わせて本物を見て欲しい。


「ねね、俺も駒田と話したかったんだ」


「ちょ、抜け駆けずるいよ!」


 気づいた頃には僕の周りに人が集まっていた。今までとは異なる環境に僕は戸惑いを隠せない。


 突然話しかけられても何を話せばいいのかわからない。


 そんな環境を一瞬に変える、スクールカースト上位のやつらが登校してきた。


「みんなおはよう!」


 植村と工藤が挨拶をしてもみんな話しに夢中になっており気づかない。その中心にいるのは僕だった。


 明らかに不機嫌な顔をしている植村に誰も気づいていない。


「あっ、駒田くん動画見たよー!」


 そんな二人の間を優樹菜が通ってくる。


「優樹菜おはよう!」


 肩に触れた工藤は優樹菜に挨拶をするが、彼女は気づいていないのだろう。他の子達の間を潜り抜け僕のとこまで近づいてきた。


 今日も大きな胸が揺れてホルスタイン……いや、牛に申し訳ない。


「駒田くんってすごい妹思いだよね。それなら私は彼女じゃなくて妹でもいいかな」


 優樹菜はいつものように僕の手を握り、上目遣いで話をしてくる。ボタンが閉まらないのは胸が大きいからなんだろうか。


「それにしても今日暑いね」


 僕の視線に気づいたのか胸元をパタパタ仰ぐ。


 チラッと工藤の顔を見ると、彼は怒りが沸々とこみ上げているのだろうか少し顔が赤くなっていた。


 イーヴィルアイの精神干渉系魔法のおかげで、僕がいじめられるきっかけになったのは彼女だとはっきりとわかった。


 そんな彼女に好意のかけらもない。


 正直この人達の自分勝手な行動に巻き込まれるのはもう嫌だ。


 そう思った僕は優樹菜が握っている手を振り解いた。


「すみません、僕が言うのもあれですが……。彼氏の工藤くんに悪いとは思わないんですか?」


「えっ?」


 僕の言葉に教室がざわめき出す。まさかこの二人が付き合っていることを知らないのだろうか。


「僕は兵藤さんに興味もないですし、ベタベタと触れられても困ります」


 僕の言葉に優樹菜は顔を赤く染めた。自分でベタベタと触っている自覚はあったのだろう。


「私とあいつは――」


 何かを言おうとしたタイミングでチャイムが鳴り、何を言ったのか聞こえなかった。それはクラスメイトの人達も同じだ。


「幸せになってくださいね」


 僕が微笑みかけると、そのタイミングで先生が入ってきた。


「おーい、みんな席に座れー」


 ぞろぞろと自分の座席に座って行く生徒達。その中に工藤もいた。


 前の扉から入った工藤は、僕の方に近づいてくると立ち止まった。顔はどこかニヤニヤとしている。


「興味ないのか……そうか。お前いいやつだな」


 肩を組んで図々しく僕を叩く。そんなことを言っても、あの時の嫌な気持ちは忘れていない。


 いじめの主犯格はお前達だってことを……。

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