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68.無意識の本領発揮

「行ってきまああああああす!」


 いつも通り制服に着替えると気合を入れて外に出る。僕だけかと思ったが香里奈もなぜか気合を入れていた。


 昨日は恥ずかしい思いをしながらも香里奈とともに動画を撮った。改めて兄としては妹を守らないといけないって思ったのだ。


 だが、それよりも自分の身を守らないといけないって思う日が来るとは思いもしなかった。


「お兄さん! 私のお兄さんになってください!」


 突然駅で女子高生に声をかけられると、突然兄になってくださいと話しかけられた。


 戸惑っている僕に香里奈は小さく耳打ちをする。


「こういう時は妹は一人で良いからごめんねって言えばいいのよ」


 僕はそれに従って彼女に伝えることにした。


「ごめんね。僕は香里奈しかいらないから……」


 きっとこれで伝わるかと思ったが、女子高生は震えていた。


「リアル二次元お兄ちゃん神!」


 何を言っているのかはわからないが、女子高生は走ってどこかへ行ってしまった。


「香里奈これでよかったかな?」


「お兄ちゃんそれは反則だよ」


 何が反則かはわからないが、僕は反則と言われてしまった。何かペナルティがあるのだろうか。イエローカードなのか? それとも即刻退場になるのか?


 そんなことを思いながら登校していると、次から次へと女子高生達に声をかけられた。


 気づいた時には学校に着くまでに、すでに10人には声をかけられていたのだ。


「お兄ちゃんって無意識でそれやってるの?」


「無意識も何も、香里奈がこうやって言えば良いって言ったんじゃないか」


「はぁー。これは完璧に無意識のようね」


 どこか香里奈は諦めたかのような、長いため息を吐いていた。


 そしてこの状況は学校についても変わらなかった。


「ねぇ、あの動画見た?」


「見た見た! あんなお兄ちゃん欲しいよね」


「妹のために髪の毛も伸ばして、妹がいじめられないようにしていたとか、三次元に存在しているとは思わなかったよ」


「ほら、KARINAと同じ小学校の子に写真を送ってもらったけど、これ昔のKARINAらしいよ」


「やっぱり妹思い出し、あんなに可愛くなるKARINAもすごいよね」


 僕は妹の写真が再び拡散されていると思い、彼女達に近づいた。


「ごめん。少し見せてもらっても良い?」


 彼女達に近づくとそこには幼い頃の香里奈の写真がスマホに映っていた。


「やっぱり昔から香里奈は可愛いよね」


「あっ……はい……」


 どうやら他の子達もそう思っているらしい。誰が何を言おうとも香里奈は昔から可愛いのは変わりない。


「お兄ちゃん! もう恥ずかしいから行くよ!」


 なのに香里奈は怒って僕の腕を掴んで引っ張っていく。なぜそんなに怒っているのだろうか。僕は何度も聞いたが教えてもらうこともできず教室についた。


「リアルお兄ちゃんすごいね」


「めちゃくちゃ良い匂いがしたよ。しかも、堂々と妹が可愛いって……」


「あー、私もお兄ちゃんに溺愛されてー!」


「いや、あんたのお兄ちゃん馬みたいな顔してるじゃん」


「ははは、今流行りの馬○ならぬ馬息子だね」


 今日も女子高生達は元気だった。


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