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58.現実世界の影響

 次々と競技は終わっていき、残りは50m走と持久走だけだ。


 そんな僕は体育教師の原田に呼び出されていた。


「駒田いいか。お前には俺の給料が全額賭けられているんだ。速く走るにはなるべく軸を作って少しでも一歩を大きく出すんだ。地面を強く蹴れば良いってもんじゃない。わかるか?」


 なぜか原田から熱い指導を受けていた。聞いたところ、体育教師は全生徒で誰が優秀者になるか賭けをしているらしい。しかも、その予想で得た金額はみんなの賭け金から支払われて、足りない分は企画者の体育主任が自腹で支払う形になっている。


 ちなみにその体育主任がこの目の前にいる男だ。


「先生がきっかけなんですね」


「ははは、俺は少しでも運動が嫌いなやつを応援したいからさ」


 原田は毎年運動が苦手そうな子に賭けているらしい。そして、今回は僕が選ばれた。


 原田にとっては、他の先生達に労いの意味も込めているのかもしれないが、今回に関しては僕への期待らしい。


 全額賭けたのも今回が初めてと言っていた。


「まぁ、俺の金なんて気にしなくて良いから楽しく走ってこいよ」


 そうは言っても原田の目はどこかキラキラしていた。ギャンブルが好きなのか、生徒の応援をしているのかわからないが、そこまで気にかけてくれているのなら、自分なりに頑張ってみようと思った。





 長距離走の測定のために僕達はスタートラインに立った。遠くから香里奈が手を振っていたため、手を振りかえすと、黄色い歓声が聞こえてきた。


 隣にはやはり工藤もおり、彼も手を振っていた。少し頭は残念だが、見た目もマッチョでイケメンな彼にみんな注目しているのだろう。


 僕からしたらゴブリンが大きくなったようにしか見えないが……。


「男としては負けたかもしれないが、スポーツテストでは俺の方が優位だな」


「みんな工藤くんを見てますよ? それにきっと兵藤さんにももっと好かれますね」


「なっ!?」


 声をかけてきた工藤は驚いた顔をしていた。優樹菜と付き合っていることがバレていないと思っていたのだろうか。


「では位置について、よーい――」


――ピッ!


 笛の合図とともに一斉に駆け出した。やはり俺の隣にいた工藤は一番に前へ突き抜ける。


 僕も大きく足を出すが、そこまで速いわけではない。だが、他の競技と比べて足が動きやすいのはいつも走っているからだろう。


 ふと順位を確認するために後ろを振り返ると、僕は鏡の世界と同じ感覚がした。


「スキルが発動している?」


 後ろにいる一人の生徒に狙いを定めると、急に体が軽くなったのを感じた。スキル:逃走が現実世界でも発動したのだ。


 一度現実世界でもスキルが発動するか試したことはあったが、その時は発動しなかった。


 あの時と違うのはスキル:反映を手に入れたことだ。ホブゴブリンのシズカをテイムして、ステータスが反映されたのかと思ったが、実は現実世界に反映させるスキルだったのかもしれない。


 そう思いながらも、足を素早く動かしていく。


 次々と前の人を抜かしては対象者を変更すると、気づいた時には目の前には工藤しかいなかった。


「おい、駒田速いじゃないか」


「ごめんね」


 さらに工藤を追い抜くと、最後は工藤を対象者にスキルを発動させた。あとはゴールするだけ。


 僕は全力で足を動かすと気づいた時にクラスメイトの中で1位になっていた。 


 周りからの驚きの声と、一番は原田の喜びの声が響いていた。やはりあの先生はギャンブルが好きだったのだろう。


 大きな声で"金"という言葉が聞こえてきたのだ。


「はぁ……はぁ……」


 走り切った僕の体は鉛のように重たく感じる。だが、それも今の僕には心地よく感じた。


 現実世界でも見た目だけではなく、大きく体の変化を感じた日だった。

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