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56.平穏なお昼と非平穏な授業

 お昼休みはなぜか僕と香里奈、そして日向の三人で食べている。ただ、僕達と日向の距離は結構空いている。


 体育館裏が静かだと知った僕はチャイムが鳴ったと同時に向かうと、大体途中で香里奈に捕まる。そして、二人で食べているところに日向が来ては離れたところで一人で食べている。


 これが最近のお昼事情だ。


 体育館裏はちょっとしたぼっち飯の溜まり場みたいになっていた。


「お兄ちゃん最近どう?」


「最近? あー、まぁ普通だな」


「普通って……学校ってそんなに楽しいところじゃないもんね」


 日向が泣いたあの日から少しずつ僕の日常は変わっていた。次の日からクラスでの嫌がらせは減り、平和な毎日が訪れた。


 正直、前みたいに静かに生活できるのが僕にとってはありがたい。話しかけられることもなく、ただ普通に授業を受ける。この"普通"が僕にとって重要だったりする。


「そういえば明日ってスポーツテストだよね?」


「ああ、僕も受けないといけないからね」


 体育は基本参加しない予定だが、この間体育教師の原田に呼び出されてスポーツテストを受けることになった。正直、日課で走るようにはなったが全て受けられる体力があるのかもわからない。


 その結果次第で、授業にも参加するか決まるらしい。


 僕達はお弁当を食べ終わると、片付けて教室に戻る。その後ろを追いかけてくる日向。


 どこかその姿がハイゴブリンのシズカに見えてくる。


 週末は鏡の中に行く予定なので、シズカに会うのが楽しみだ。きっと彼も元気にしているだろう。


 教室に戻るといつものように優樹菜が待っていた。


「もう、なんでまた先に行くの?」


「いや、待つ理由がない」


「一緒に食べたいって言ったじゃん!」


「妹と食べているから大丈夫」


 席替えをしてからなぜか優樹菜がいつも隣にいる。くじで決めたはずなのに隣にいた席の子は強制的に替えられていた。


 机同士も離れているはずが、僕達だけべったりとくっついている。


 僕は壁際のため逃げようにも逃げられない。追い詰められているという状態だ。


「日向も一緒に食べているんじゃないの?」


「佐々木さん? 一緒じゃないよ」


「ふーん」


 きっとここで正直に近くで食べているって答えたら、優樹菜もついてくる可能性がある。


 彼女がいたら絶対静かに食べられないだろう。席が隣なだけで充分お腹いっぱいだ。


 お昼休みの終わりを告げるチャイムがなると地獄の時間が始まる。


 授業自体は特に難しいわけではないため問題ない。ただ、隣にいる彼女が問題なのだ。


「授業つまらないよね」


 優樹菜は僕に席を近づけると、ゆっくり自分の手を僕の腿の上に乗せる。そこから優しく内ももを撫でてくるのだ。


「邪魔です」


 その手を掴んでは彼女のもとへ動かすという謎の時間がある。


 それがダメだとわかると違う方法で優樹菜は邪魔をしてくるのだ。


「ねぇ、ここってどうやったら解けるの?」


 次は僕に凭れるように体を倒して、頭を僕の肩に乗せてこようとする。


 基本的には何か言葉をかけてから行動することに気づいた僕は、気をつけておけば避けることはできるようになった。


「むー!」


 その度に優樹菜は隣で怒っていた。怒っている暇があるなら、授業に集中してほしい。そして、怒っているのは彼女だけではない。


「おい、工藤後ろばかり見てないで集中しろ!」


「すみません」


 工藤は彼女のことが気になってチラチラと僕達の方を見ていた。正直代わっていいなら彼にはここに座ってほしい。


 カップルの喧嘩に巻き込まれるのは一番めんどくさいからな。


 僕の平穏な日常はいつになったら、戻ってくるのだろうか。


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