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52.二人は恋人

 自分の体が本当に自分のものなのかと少し疑問に思ってしまう。見た目が変わって、人に殴られても痛いと思わない日が来るとは思いもしなかった。


「駒田くん大丈夫!?」


 優樹菜が僕を心配して頬を触る。だが、それを見てさらに工藤は苛立っていた。


 こいつが怒る原因が目の前にいる優樹菜と関わりがあることに気づいた。


 教室では何が起きたのかとコソコソと話すクラスメイト。受験の年だからか平和なクラスが良かったと嘆く人までいた。


 できれば僕も静かなクラスの方が良かった。


 それでも気づかない振りをしているのか、自分は関係ない素振りを見せる優樹菜に僕は少し苛立ちを感じる。きっと、関わらないのが一番だ。


 クラスのモブとしている陰キャラが、主人公達に関わっていいのは漫画の世界だけだ。


「えっ……」


 離れるために優樹菜を抱える。彼女は思ったよりも軽かった。牛のように大きな胸も意外に重さはないらしい。


 顔を赤く染めている優樹菜と怒りで顔が赤くなる工藤。どうやら二人はお似合いのようだ。


「おい、優樹菜に何――」


 僕はそのまま立ち上がり工藤に近づく。


「そんなに好きなら放牧なんかしないでくれ」


「えっ?」


 きっと二人は付き合っているのだろう。勝手に行動する優樹菜が彼女なら、彼氏である工藤が怒るのは仕方ない。


 ただ、怒るのは相手の男に対してじゃなくて、付き合っている彼女に対してだろう。


 まだ付き合ったこともなく、むしろキスすらした記憶もない僕に言われても困ると思うが、それが、常識だって誰でもわかる。


「もう僕に関わらないでくれ」


「あっ……ああ」


 お姫様抱っこで抱かれている優樹菜をそのまま工藤に託すと二人は固まっていた。


 僕は机を持ってくるために教室から出る。そもそも余りの机がどこにあるのかもわからず、職員室に向かうことにした。すると、遠くからゆっくりと机を運ぶ日向がいた。


 一瞬、日向が僕の机を動かしたのかと思ったが、あんなに遠くに机を持っていくはずがない。


 僕は急いで彼女のもとへ駆け寄った。


「駒田くんの机を持ってきたよ」


 どうやら僕より早く登校してきた日向が、席がないことに気づいたのだろう。


「佐々木さんありがとう」


 僕は日向からそのまま机を受け取り、教室に戻ることにした。


 ただただ無言の時間が続いていく。何も話さないのに、何か言いたそうな顔でチラチラとみる日向の視線が痛い。


「あのー」


「今日のお昼休みに少し時間良いかな?」


「お昼休みにですか?」


「体育館裏で待ってますね」


 話しかけようとしたら体育館裏に呼び出されてしまった。


 これはいわゆる体育館裏に呼ばれて、リンチされるやつだろう。最近見た漫画でも同じ展開があった。ヤンキーが少なくなった時代に集団暴行って珍しい。


 僕はため息を吐きながら教室に戻ると、すでにみんな席に座り担任の先生が出席の確認をしていた。

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