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50.本当の戦い

 鏡の世界から戻り、外を見るといつのまにか朝日が昇っていた。軽く仮眠しようと部屋に向かう途中、なぜか家族全員が居間に座っていた。


「あれ? こんな時間にどうしたの?」


「お兄ちゃん!?」


 香里奈は僕の姿を見ると抱きついてきた。


「こんな時間までどこに行ってたんだ」


 どうやら両親二人とも心配しているようだ。


 普段は優しい無口の父がどこか怒っているように見えた。どこって言われても鏡の中って答えたら頭がおかしいやつと思われるだろう。


「少し散歩に行っていた」


「真夜中から朝方にかけてか?」


 父の言葉に僕は頷く。どうやら僕がいないのを心配して、みんな起きていたらしい。


「お兄ちゃんがいないって気づいてから、玄関から変な音もするし、扉は壊れて閉まらないし色々とおかしいんだよ」


「てっきり私達はあなたが宇宙人に誘拐されたのかと思ったわ。ねぇ、お父さん?」


「ああ、お前の見た目なら宇宙人も誘拐するからな」


 やはりこの家族はどこか頭のネジが取れているようだ。最近、この街に宇宙人が現れたと噂になっているが、それはただのゴブリンであって宇宙人ではない。


 しかし、夜中にあっちの世界に行って迷惑をかけたことを考えると、行くのは休日のみにした方がいいのかも知れない。


「とりあえずもう少ししたら学校だから寝なさい」


 時計を見ると朝の4時だった。学校は8時に出れば間に合うため、最低でも3時間は寝れるだろう。


 僕は階段を上がり部屋に入ろうと扉に手をかけると、後ろから香里奈に声をかけられた。


「ねぇ、お兄ちゃんって"リンコ"のこと覚えている?」


「リンコ?」


 犬を飼っていたのは両親が再婚した時だった。保護犬を里親として引き取ることになったが、よく懐いていて可愛かった。


 いつも一緒にいたはずなのに、なぜか過去のことになるとどこか記憶が曖昧だ。


「やっぱりお兄ちゃんも同じ(・・)なんだね」


「同じって?」


「ううん、ちょっと寝不足で疲れているみたい。お兄ちゃんおやすみ」


 そう言って香里奈は自分の部屋に戻っていった。僕もあまり思い出せないのは、鏡の世界に行って疲れているからだろう。


 あまり考えずに僕も眠ることにした。





 寝不足の頭を回転させながら学校に行く支度をする。まだ、寝ぼけているのか頭がうまく働かない。


「お兄ちゃん髪の毛のセットしようか?」


「いや、眠たいから今日はいいや」


 昨日は香里奈がセットしてくれたおかげで、髪の毛は綺麗に整っていた。


 今日は伸び切った前髪を斜めに流し、コンタクトが寝不足で入らなかったため、眼鏡をかけて登校するつもりだ。


 朝食を食べ終わった僕達は急いで家を出て学校に向かう。流石に寝不足の今日は香里奈も競走することもなく学校に着いた。


「駒田くんおはよう!」


 そんな寝不足の僕達に声をかけてきたのは、校門前で待っていた優樹菜だった。どこか頭に響く声に内心静かにしてくれと思ってしまう。


 そういえば、シズカの名前を付けるときにも同じことを思ったとふと思い出してしまい笑みが溢れる。


「あっ、駒田くん笑った! そんなに優樹菜に声をかけてもらえて嬉しかったんだね」


 そんな僕を見て優樹菜は嬉しそうにしていた。


 いや、別に嬉しくて笑ったわけではない。この人も両親とは違う意味で頭のネジが外れているのだろう。


「この牛女って自意識過剰だね」


 香里奈の一言に僕もつい頷いてしまう。それに気づいた香里奈と目が合うと笑ってしまった。これが本当に楽しく笑うってことだ。


「あー、また兄妹(・・)で笑ってるー! 私にも教えてよ。ねー!」


 優樹菜は僕の腕を掴み自身の胸に押さえつける。相変わらず彼女は何をしたいのだろうか。


 それに対抗するように香里奈も僕の腕を掴んできた。


「今日も一緒に帰るよね?」


「あー、特に用事はないから待ってるよ」


「ふふふ、ありがとう」


 どこか周囲からの視線が痛いが、僕の戦いは再び始まった。

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