38.デートは突然に
あれから授業が終わるまでは大変だった。休憩時間のたびに、優樹菜は僕のところに来てはしつこく話しかけてきた。
そのため常に寝ているふりをして、机に伏せて顔を隠していた。その姿は今までの僕と変わらなかった。
せっかく見た目も変わったから、新しい友達を作ろうと思っていたのに誰も関わろうとしない。以前いた友達もスクールカースト上位の奴らに、僕が絡まれているとわかったらいなくなってしまった。
それだけ学生にとっては、スクールカーストって重要になってくる。
心のどこかでは次は僕がいじめられる対象になるとヒヤヒヤしているのだろう。だから、僕から声をかけづらい状態だ。
授業の終わりを知らせるチャイムとともに、僕は急いで帰る準備をする。優樹菜がまた声をかけてくると思ったからだ。
新学期初日の今日は授業はお昼で終わり、本格的な授業は明日から始まることになっている。
「ねぇ、駒田くん――」
やはり優樹菜は僕に声をかけてきた。あれだけ関わらないようにしてきたのに、今頃しつこく声をかけてきても困るだけだ。
僕は聞こえない振りをして急いで教室を出た。それが優樹菜と工藤に火をつけたのだろう。
「おい、駒田待てよ!」
なぜか二人して僕を追いかけてくるのだ。関わりたくもないのに、僕と関わろうとする二人。工藤に関しては一緒に追いかける優樹菜の胸元ばかりチラチラと見ている。
優樹菜が好きなのか、あの胸が好きなのかはわからないが気になる相手なんだろう。
香里奈を校門で待とうとしたが、まずはこの場から逃げることを第一に考えた。一緒に帰るなら駅で待っていれば来るはずだ。
急いで下駄箱で靴を履くと聞き慣れた声に振り返る。
「お兄ちゃんそんなに急いでどうしたの?」
「あっ、香里奈か」
声をかけてきたのは香里奈だった。その声にどこかホッとしてしまう。すでに友達が出来たのか香里奈の周りには人だかりが出来ていた。
ああ、香里奈自体がスクールカーストの最上位の人物だった。
「あれが香里奈ちゃんのお兄さん?」
「そうだよ。じゃあ、みんなまた明日ね」
香里奈は友達に手を振ると、僕の腕を掴んできた。
「お兄ちゃん一緒に帰ろう! 今日はアイスに……あっ、お昼ご飯も追加してご馳走様です!」
「友達は大丈夫なのか?」
せっかく出来た友達を放っておいていいのだろうか。兄より友達の方が大事だと思う。
「今日は大丈夫だし、今度友達も一緒に帰りたいって言ってたよ」
「ああ、そうか」
僕のことを気にしてそう言ってくれたのだろう。笑顔の香里奈を見ると、安心して僕も笑顔になってしまう。
「あれが今話題のお兄ちゃん」
香里奈の友達はなぜか僕達を見てはしゃいでいた。
「おい、駒田待て――」
「駒田くん私も一緒に帰っていいかな?」
そんな中、追いついてきた二人が声をかけてきた。遅かったから忘れていたが、この二人から逃げていたところだった。
「今度はゴリラも絡んでくるとか……ここは動物園かよ!」
香里奈が小さな声で突っ込んでいるのが聞こえ、つい僕も笑ってしまう。確かにゴリラと牛がいたら、小さな動物園にはなるだろう。
「ねぇ、駒田くんいいで――」
「お兄ちゃんは私とランチデートなので無理です!」
言い被せるように香里奈は言葉を放つ。その言葉に優樹菜はムッとした顔をしていた。
「えっ……お兄ちゃん? あのKARINAのお兄ちゃんが駒田なのか?」
きっぱりと断る香里奈。そして、香里奈のことを知っているのか兄が僕だと知って工藤は驚いていた。
「せっかくだから優樹菜先輩は隣の先輩と帰ったらどうですか?」
優樹菜のことを煽っているのか、香里奈の攻撃は止まらない。
「じゃあ、優樹菜は俺と――」
「はぁん!? 私は今日一人カラオケに行くからいい」
そう言って優樹菜は靴を履き替えて行ってしまった。一方の工藤はどこか寂しそうに教室に戻って行く。
「あいつら結局なにしにきたんだ?」
「きっと暇だったんだろうね。私達もランチデートに行こうか」
僕達は二回目の兄妹デートをすることになった。
休日のため更新多めにさせて頂きました。
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