13.再び鏡の中の異世界へ
学校から離れるために急いで走った。走れなかったはずの体が、今すぐに学校から出たいという気持ちだけでいつもより軽く感じる。
ゆっくりと閉まろうとする校門の横を通り抜けるように外へ出た。
学校の外に出たからなのか、どこか胸の気持ち悪さがなくなったような気がする。
「おい、授業はどうするんだ?」
声をかけられ振り返ると、門を閉めていたのは体育教師の原田だった。驚いた顔をしてこっちを見ていた。
「体調悪いので帰ります」
原田は何かを感じ取ったのか、そのまま止めることもなく見送った。
香里奈に応援されて学校に来たが、やはり今の僕にはまだ早かった。あいつらに言われて心が勝てる気がしない。
行きよりは軽くなった足を動かして家に帰ることにした。
♢
玄関の扉を開けると、家の中には誰もおらず静かだ。今日は母親も仕事に行っているため、今家にいるのは僕だけだった。
制服を部屋に脱ぎ捨て、いつも着ているジャージへと着替える。ウエストのゴムは痩せた影響なのか大きく感じた。
脱いだ靴下を片手に脱衣所の洗濯カゴを目指す。我が家では、洗濯物は浴室の隣にある脱衣所に置くことになっている。
ふと、洗濯カゴに入れている僕の姿を鏡が映し出す。短くなった髪だが、顔は赤く荒れ、ポツポツとニキビが主張している。
こんな顔で外に出ていたと思うとゾッとする。なぜこれで大丈夫だと思っていたのだろう。
「気持ち悪い顔でこっちを見るなよ!」
鏡に映る僕に向かって、強く自分の手を叩きつける。だが、手は鏡を叩きつけることはなかった。
まだ、今日は鏡の中に入っていなかったのだ。
誰にも会わない自分だけの世界に行きたい。そう思った僕は自然と鏡の中に体が入ってしまう。
【キャラクタークリエイトをしてください!】
毎回聞こえるデジタル音もどこか心地よく聞こえた。この感情がこもっていない、人間ぽくない声が安心させてくれるのだろう。
あいつらとは違う僕のことを何とも思っていない声だ。
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《ユーザー》
[名前] 駒田健
[種族] 人間/男/童貞
[年齢] 17歳
[身長] 161cm
[体重] 68kg
[◯長] 最大5cm
《ステータス》
駒田 健 Lv.7
[能力値] ポイント3
HP 16
MP 17
STR 14
INT 0
DEF 10
RES 0
DEX 13
AGI 14
LUK 0
[固有スキル] キャラクタークリエイト
[スキル] なし
[称号] ホーンラビットの殺戮者
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目の前にはいつも通りポイント3と増えた状態で表示されているステータスが現れた。
学校に行って思ったのは、体の変化よりも体力の変化を強く感じたことだ。
あれだけ走ってもいつもより、息切れは少なく早く走ることができた。それを考えると速さよりは体力が必要になるのだろう。
僕は少しでも息切れが減るように、HPにポイントを振ることにした。
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《ステータス》
駒田 健 Lv.7
[能力値] ポイント0
HP 19 (+3)
MP 17
STR 14
INT 0
DEF 10
RES 0
DEX 13
AGI 14
LUK 0
[固有スキル] キャラクタークリエイト
[スキル] なし
[称号] ホーンラビットの殺戮者
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ホーンラビットはすでに攻略したと思っているため、STR《物理攻撃力》やAGI《素早さ》は僕には必要ない。
必要なのは効率よく倒し続けるHPだ。だが、この時もう少し考えて振り分ければよかったと後に思うことになるとは思いもしなかった。
「次はクエストの内容か。どうせホーンラビット――」
【本日のクエストはゴブリンの討伐です】
「えっ?」
聞こえてきたのはいつもと同じ魔物の名前ではなかった。
【本日のクエストはゴブリンの討伐です】
僕の声に反応して、デジタル音は再び同じことを繰り返す。そして目の前に表示されたクエストで現実だと認識する。
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【デイリークエスト】
[クエスト名] ゴブリンの討伐
[討伐数] 1体
[制限時間] 12時間
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僕の予想を裏切るようにクエストの討伐対象は変化していた。
必死にキャラクタークリエイト画面に戻り、画面を必死に何度も押すがポイントの振り分けは変更することができなかった。
姿形もわからない攻略対象であるゴブリンを討伐することになった。
何も考えずステータスポイントを振った自分に後悔していた。
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