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12.おかしな日常 ※日向視点

 私の声がこんなに届かないとは思いもしなかった。しばらく学校に来ていなかった彼はどこかほっそりと痩せている気がした。


「おはよう!」


 友達の優樹菜は教室に入ると男子達と笑いながら話していた。


 さっきまであんなに彼を笑いものにしていたのに、いなくなった瞬間、みんなは日常に戻る。


 元から彼がいない存在だったかのように……。


 静かに過ごしている彼が、気づいたらいじめの対象になっていた。


この間起きた放課後の出来事から、彼へのいじめが始まったと薄々感じていた。原因をクラスメイトに聞いても教えてはくれないし、友達の優樹菜もわかっていない。


 だからせめて私達だけでも彼に謝ろうとしていた。


 学校に来ると校門で彼を見かけた。登校してきた今日がチャンスだと思い、一緒に登校していた優樹菜とともに追いかけることにした。しかし、結果はうまくいかなかった。


「優樹菜ちゃん! 今すぐ謝りにいこうよ!」


 今なら間に合うと思い、優樹菜の手を取るが面倒臭そうな顔で私を見ている。


「だって私関係ないじゃん?」


「えっ?」


 この間とは違う答えに私は驚いてしまった。優樹菜は鞄を床に置くと、そのまま机の上に足を組んで座った。


「私は何もしてないし、そもそもいじめているわけではないでしょ?」


「ははは、俺らがいじめるはずがないだろ!」


「ひょっとして日向さんは俺が駒田をいじめていると思ってたのか? あー、それは悲しいな」


 彼がいじめられていると思っていたのは、私の勘違いだったのか。それなら今さっき私のスマートフォンに届いた動画は何のために送ったのだろう。


 整理しきれていない情報に私は混乱してしまう。


「ならこの動画は――」


「これってあの有名美容師だよね? そんなのいじめにもならないじゃん。私も切って欲しいよ」


 二つ縛りに結んだ茶色の髪を指に絡めてくるくると回す。結んだヘアゴムに付いているウサギのマスコットも一緒に回っていた。


「俺が切ったらきっと俳優になれるぞ?」


「お前は自分の顔を鏡で見てから言えよ!」


 優樹菜と教室にいる男子達は大きな声で笑っていた。なぜ、私はこんな人達を友達だと思っていたのだろうか。


「ならあんなに――」


 話の途中でチャイムが鳴ると、担任の先生が教室に入ってきた。


「おーい、お前らそんなところに立っていないで席に座れよ!」


「はーい!」


 先生の一言で私達は自分達の席に戻った。


「あー、今日も駒田は休みか?」


「さっき来たけど体調が悪そうだったので返しました(・・・・・)


 先生は特に気にすることもなく、名簿に何かの印をつける。


「ちゃんと駒田が来たら机を"用具室まで取りに行くように"って伝えておいてな。あいつも自分で落書きするにはやりすぎだろ」


 彼の机は落書きばかりで新しいものに替えるために片付けられていた。でも、真面目な彼がそんなことをするはずはないと思っている。


「じゃあ、授業の準備しなよ!」


 名簿を閉じると先生は教室を後にした。


 どこかおかしい日常がまた今日も始まろうとしている。


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