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10.地獄の坂道

 僕は学校まで歩く時はいつも下を向いて歩いている。決して犬の糞を踏まないように下を向いているわけではない。ただ単純に顔を見られるのが嫌なだけだ。


 だだ、学校の最寄駅から学校までの通学路だけは、顔を上げないといけない。


 なぜ顔を上げないといけないのか、その答えは単純だ。学校が坂を登った先にあるため、顔を下げたままだと息苦しくなってしまう。


 距離も長く、勾配がきつい坂道。通称"地獄の坂道"と呼ばれている。


 髪型を変えて、眉毛を整えたとしても僕の顔が変わったわけでない。それでも顔を上げて登校しないといけない学校に文句を言いたい。


 今の僕は学校に行くのが怖くて、鼓動はさらに早くなる。


「あんな子学校にいた?」


「へっ!? あれだけ顔立ちが良いのに、この私が知らないなんて……」


「イケメン好きでも知らない生徒がいるんだね」


「ちょっと受精卵からやり直してくるわ!」


「ぎゃはは、流石にそれは行き過ぎ!」


 それにしても今日の通学路は賑やかだ。さっき会った女子高生にも思ったが、彼女達は何気ない日常生活でも楽しく生きるプロだと思っている。


 坂を登りきりついた先には大きな門が立っている。僕は普段と同じように顔を下げる。


「おはよう!」


 校舎の前では体育教師で生徒指導部の先生が、生徒達の身だしなみを見て挨拶をしている。


「おはようございます」


 僕は下を向いたまま挨拶を返した。毎日素通りをして教室に入るが今日は珍しく声をかけられた。


「駒田か?」


 まさか名前を知っているとは思わなかった。体育の授業は基本休んでいるため、声をかけてくることもなく関わることもない。


 頷くと体育教師の原田が驚いた顔で近づいてくる。


「息苦しくないのか? 普段ならすぐに立ち止まっているだろ?」


 原田に言われて気づいた。以前なら急な坂を登った後は息苦しく、門に着いた時には膝に手を置いて息が落ち着くのを待っていたのだ。


「大丈夫らしいです」


「ははは、気づいていなかったのか! いつか授業を受けてみるといいかもな」


 僕の肩を強く叩いて大きな声で笑っていた。あまりにも目立つ声に視線が集まっている。


「失礼します!」


 急いでその場から立ち去るが、原田は何かを言っていた。


「おーい、その髪型似合っているぞー!」


 だが、逃げることに必死な僕の耳には聞こえていなかった。





 必死に走ったからなのか、ただ単純に教室に入りたくないからなのか僕の足取りは重かった。


 教室の廊下側の窓から中を覗くと僕の机は置いてあった。この間は花瓶に生けられた雑草が置いてあったが、今日は何も置いてないようだ。


 ゆっくりと扉を開けて、誰にも見られないようにコソコソと席に向かう。


 椅子を引きゆっくりと座る。チラッと視線を上げると誰も僕のことを見ていなかった。


 それもそのはず、僕に嫌がらせをしていた人達はまだ教室には来ていなかった。


 教科書を引き出しに入れようと、鞄から取り出すと机の中には何かが入っていた。


 手に触れた感覚はどこかゴツゴツとしていた。


 ゆっくりと引っ張り出すと、そこには見たこともないペンケースが入っていた。


「あのー、そこ私の席です」


「ふぇ!?」


 声のする方に振り向くとクラスメイトの一人が隣に立っていた。

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