AQUA MALA 悪い水
ああ、波間に浮かぶ
ヒドロ虫達の作る青いポルトガルの軍艦が・・
意志を持たぬ命の肉達が・・
潮の流れに乗って、
遥か彼方の大海より、
群でやって来る。
歪な悪霊が浮かべた、その肉は、
魂を持たず、
ただ、波に翻弄され、
受難を受け入れる。
無効分散の如く、
生きる為に死に向かって
岸に打ち上げられ様と、
それらは意に介さない。
ただ、そのまま腐敗し、
死滅した接合部の
哀れな姿を晒すのだ。
それは
「世界の姿を模写している」
と言う者もいる。
ただ、無表情に肉達は
呼吸と腐敗を繰り返し、
光が今日も[有る]事を
喜びを以って迎える。
臓物を抜かれた鶏肉が、
ただ俎板の上で切られ、
頓挫しながらも
神の王国を賛美する様に・・
ああ、日差しにじりじりと焼かれ、
悍ましい毒を放ち、
蠅も集らぬ青い死肉よ!!
無表情の忌まわしさに走根し、
死の縄を垂らした
信仰を持たぬ個虫の風船・・
ああ!!
その時、その風船が弾けた!!
だが、何も起こらない・・
死者は、未だ死者のままだ・・
その肉は感情の無い
遥か南方の死の国からやって来た。
我らに世界の一端を見せつける為に
現実と統計の国からやって来たのだ。