その十三 日記 六月二日
今日は皆と(わたしと真仁くん、上部くんの三人)で久しぶりに博物館に行った。特設展示が楽しみだったけど、混みすぎ。流れるように見てお終い。もっとじっくりと見たかったのに欲求不満になった。
でも、常設展示が入れ替わっててこれは面白かった。縄文時代の人々の暮らしやその社会がどんなだったか、新たに研究が進んでいるって聞いていたけど、その辺りのことが丁寧に説明してあって楽しめた。考古学とか面白いよね。既に亡くなった人々の暮らしや文化に想いを馳せて、その時代の人々がどんな想いで生きていたか想像するのわくわくする。お母さんの話では、フィールドワークは超大変らしいけど。
わたしがしたい事ってなんだろう、まだ判らない、決まらない。
お母さんはわたしの歳には、進路を決めていたらしい。でも、同じ頃わたしが生まれて方向転換したって言ってた。お母さんはわたしを愛してくれている。方向転換したことも後悔していないって教えてくれた。本当の事かな。だったらどうしてお父さんの事を教えてくれないんだろう。会いたい訳じゃないけど、本当の事を知りたい。
わたしだったらどうだろう。決めた事があって、それをどうしても諦めなきゃならなくなった時に後悔しないか自信ない。いや、きっと後悔する。
今日あったショックな事を記しておこう。
真仁くんがわたしの事を好きだって、告白された。
はっきり言って、とても困る。わたしは恋愛がよく判らない。わたしの歳にはわたしを身ごもっていたお母さんと大違いだ。誰かを好きになった事はないし、誰かの事を想うというのも想像がつかない。
真仁くんのことはもちろん嫌いとかそんなことない。むしろ、好きだと思う。でも、男の子としての好きとは違う。話してて楽しいし飽きる事もない。だけど、彼の事を思い浮かべても話に聞くようにわくわくドキドキする事はないし、逢いたくて堪らなくなる事もない。だからこの感情は友情だと思う。
好きだと言ってくれる彼に気持ちを返せないのは申し訳ないので、思わず強い言葉で返事をしたら、告白を取り消してくれた。わたしは取り消しを自然と受け入れたけど、本当に良かったのかな。
一度発した言葉は取り消せない。彼の告白はわたしの心に届いてしまっているのだ。いくら取り消しても、本当に聞かなかった事にはできない。約束だから、聞かなかった事にしているだけ。
この先、彼の告白がわたしの心の中でどうなるか、育つのか、嫌いになるのか、負担になるのか、無かった事として忘れ去るのか、今はわからない。
わたしは、約束通り聞かなかった振りをして今まで通り振る舞うのだ、彼の告白では変わらないと信じて。




