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商人な魔術師  作者: 柚×花
10/19

魔術を広めるには


昨日、私はジャファルに紹介された町医者のイサームさんに会いに行ってきた。




イサームさんは気の良いおじいさんで昔は傭兵だったが自分が怪我をした時に受けた治癒魔術を見よう見まねで使えるようになり、そこから傭兵は町医者として生活するようになったそうだ。




ラミュールでは小さな怪我くらいならみんな自分で治すけど、ルテニアでは魔術自体が特別なものになってしまっていて魔力を感じたり、魔道具に魔力を流すこともできない人もいるらしい。




てっきり鉱山で働く人は魔術で掘っているんだと思っていたから人力と聞いてさらに驚いた。




サルジャーノで物理的に分断されているから情報も流れないんだね。


治癒魔術は私が広げると反感を買いそうだから、王宮の魔術師に教えるくらいにしておこう。


あとは、ラミュールに留学する方法を噂で流す程度かな?




それよりも、基本の魔術を拡げよう。


水の魔術が使えるようになれば食中毒で亡くなる子供も減るよ。


土の魔術が使えるようになれば鉱山で危険も減るし、建築に使うレンガを作ったり道が舗装されて埃っぽさも減るもんね。




イサームさんには水と土の魔術の使い方を教えて、知り合いの人にも魔術の使い方を教えて上げて欲しいとお願いした。






やりたいことが決まったので、今日はクロード様とジャファルに早速相談することにした。






「………ってイサームさんから聞いたのですがどう思いますか?私は、ルテニアはラミュールに比べて魔術が一般に普及してないと思うのです。もっとみんなが使えるようになれば生活が楽になると思うのですが…魔術を拡げる事をどう思いますか?」


「そんなに魔術が使えない人がいるの?」


クロード様が驚いている。




「私はむしろラミュールで魔術がそんなに普及していることの方が驚きだ。」


ジャファルも驚いている。




「砂漠と山脈に区切られてサルジャーノを通らないと行き来出来ないのが情報が分断される原因ですよね。東の国では戦争の間魔に術を教える人がほとんど居なくなってしまったみたいですけど、西の国は戦争の影響が少なかったので生活に使う魔術は教え合って残っているんですよ。」




「羨ましい限りだな。」


ジャファルは諦めたように言う。




「だから、ルテニアでも普及させませんか?魔術は生活を豊かにするものです。」


諦めちゃダメだよ。格差を埋める努力は必要だよね。




「そうできれば良いとは思うがどうやって普及させる?何か良いアイディアがあるのか?」




そう聞かれると、困るのだけど…。


「うーん。ラミュールでは親から子に教えますし、魔道具も普段から使っているので教えるのも簡単なのですけど…。魔力の感知が出来ないとなるとなかなか難しいですね。」


「魔道具を平民が使うのか?ラミュールはそんなに裕福なのか?」


「魔方陣を書いただけの簡単な手作りの魔道具です。寒いときに水を温めたり暑いときに食べ物を冷やしたりするものが多いですよ。」


「それをルテニアで広めることは出きるか?」


「簡単な魔方陣ですからできると思いますよ?私がするよりルテニアの魔術師にして貰ってはどうですか?人数がいないとなかなか広がりませんし。」


「アイーシャ、お前たちはそういう魔道具を作ることは出きるか?」


「私を含めて何人かは作ることが出きる者もおりますが人数も少ないですし、魔道具を作ることを生業としている者たちですので価値を下げるようなことには協力は得られないでしょう。」


既得権益がネックだね。


「ジャファル様たちはどういう方法で魔術を教わったのですか?」


「魔術師を雇うのだ。魔術が広がるとまた戦争になるから人に教えないようにと言われた覚えがある。」


そうやって、自分達の優位性を確保しているのかな?東ではほとんどの人が使える魔術なのに。




「ルテニアは教会に治療院も学校も無いのですよね。ラミュールと裕福層は生活にあまり差がないように思いますが平民の格差が大きいように思います。栄養失調や食中毒で亡くなる子供も多いのは上層部が利益を独占するからでしょうか?」




思わず批判を口にしてしまった私にジャファルが苦笑いで言った。




「ここでは良いが他では口に出すなよ。」




いくら本当の事でも流石にそこを批判して変えていくことは出来ないよね。


「これでは上層部から変えていかないと反感を買いますね。既得権益には代わりに新しい魔術か仕事を与える必要があるんですね。ルテニアで魔術を広めるのはなかなか難しそうです。」


残念だけど、諦めよう。反感を買うと困るのは平民だからね…。




そう思っていたら、クロード様が提案してくれた。


「国のシステムをいきなり変えるのは反感が大きいですが、平民を雇って仕事をさせる中で少しずつ魔術を使わせるようにすれば軋みは少ないと思いますよ。」




前にもこんな感じの事があったね。


クロード様は、私には無い為政者の目線で反感を買わないように考えてくれる。




「それなら雇った平民に魔術を使わせるなら鉱山働く人に土から鉱物を分離する魔術を教えるのはどうですか?既得権益のない新しい事業を始めるならココナッツオイルや石鹸を作るのもお薦めですよ。」






「新しい事業か、面白そうだな。ココナッツオイルと石鹸とやらはどんなものか教えてくれ。」




こうして、私たちは新しい事業を始めることになった。


それに当たって、実家からジルを呼んで手伝って貰うことになったのだった。

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