今日も美少女の幼馴染みに頼られて俺は恋人にフラれます
俺には幼馴染みがいる。
彼女は俺を頼りにしているから何かあるとすぐに俺を呼ぶ。
俺の都合なんて考えないで俺を呼ぶのだ。
「ねえ、来てよ」
「何だよ? 今、デート中なんだけど」
「だって家に訪問販売の人が来て私にこの壺、いかがですか? って言うのよ。買ってもいい?」
「ダメだ。今から行くから待ってろ。その壺は絶対に買うなよ」
「うん。待ってるね」
そして俺は電話を切った。
「本当にごめん。また彼女にトラブルが起こったんだ。だから今日は帰るけどいい?」
「また幼馴染み?」
俺の恋人は不満そうな顔をする。
「彼女は俺がいないとトラブルを回避できないんだよ」
「私より幼馴染みを選ぶの?」
「彼女と君は別モノなんだよ」
「何が違うの?」
「う~ん。一緒に過ごしてきた時間かな?」
「何それ? 私を馬鹿にしてるの?」
「馬鹿になんてしてないけど?」
「もういい。別れよう」
「えっ」
元恋人は俺から離れて帰っていく。
「またかよ」
俺はそう呟いて元恋人の背中を見ていた。
「あっ、彼女の所に行かないと」
元恋人の背中が見えなくなると俺は思い出したように言った。
幼馴染みの彼女の家のドアを開けると玄関に訪問販売の人がいた。
彼女は壺のことで色々と説明をされていた。
「壺なんて買わないので帰って下さい」
俺はそう伝え、訪問販売の人を追い出した。
「ちょっと失礼でしょう? あの人もお仕事が大変なんだから」
「働いている人はみんな大変なんだよ。そんな人を一人一人、相手していたら逆に君が大変になるだろう?」
「でも、私が壺を買えば上司に怒られないって言ってたのよ?」
「それは嘘だよ」
「嘘なんてついてなかったよ?」
「嘘なんだ。ほら、君の部屋に行くよ」
そして俺達は彼女の部屋に入る。
「また、デートの邪魔しちゃったよね?」
「また別れたよ」
「また? 私のせいよね? ごめんね」
「仕方ないんだよ。君がいつもトラブルに巻き込まれるからね」
「私があなたに頼りすぎなのよね?」
「君の力じゃどうしようもないよ。君は優しすぎるからね」
「でも、いつまでもあなたの迷惑になりたくないの」
「迷惑なんて思ってないから。俺にとって君を助けるのは日常なんだよ」
「日常?」
「当たり前ってことだよ」
「それでいいのかなあ?」
「君は自分が思うように動けばいいんだ。トラブルが起きたら俺が駆けつけるから」
「うん」
彼女は笑って言った。
彼女は優しすぎて騙されやすい。
昔、俺達が子どもの時、彼女はその優しさで誘拐されそうになった。
それを助けたのが俺なんだ。
彼女はおじさんに騙されて公園からおじさんと出て行こうとしていた。
俺はその彼女にすぐに気付いて俺は彼女に聞いたんだ。
「その人と一緒にいるのは俺と一緒にいるより楽しいの?」
「私はあなたといるほうが楽しいよ」
彼女のその言葉を聞いて俺は彼女の腕を引っ張り、引き寄せたんだ。
するとおじさんは走って逃げていった。
この時、俺は彼女を何があっても守ろうと思ったんだ。
俺は何よりも優先して彼女を助けるんだ。
そう心に誓ったんだ。
「最近、俺を頼ってこないなあ? 何もないならいいけど」
そう俺は独り言を言っていた。
最近、彼女から助けての電話が鳴らない。
こんなことは初めてだ。
俺は気になり、隣の彼女の家のインターホンを鳴らす。
彼女がドアを開けて出てきた。
「なっ、何なんだよ。その格好は?」
「これ? 可愛いでしょう? 彼が好きみたいなの」
「彼って、恋人ができたのか?」
「うん。そうだよ」
彼女に恋人ができたのは驚いたが、もう一つ驚いたことがある。
それは彼女がメイド服で出てきたのだ。
可愛いよ。
似合ってるよ。
でも、ちょっとセクシーすぎないか?
肌の露出が半端ない。
俺が彼女の立場だったら絶対に着ないと思う。
「最近は何もトラブルはないか?」
「うん。大丈夫よ。彼がいるからね」
「そっか。それならいいよ」
俺はそう言って自分の家へ戻る。
彼女が幸せならそれでいいんだ。
でも、あんな格好をさせる恋人ってなんかヤバいやつじゃないよな?
彼女が心配になった。
何か胸騒ぎがする。
俺はもう一度彼女の家へ向かった。
インターホンを鳴らしても出てこない。
何度鳴らしてもやっぱり出てこない。
鍵が閉まっているから合鍵の隠し場所から鍵をとって開ける。
俺は彼女の部屋のドアを勢いよく開けた。
俺の目に映るのはイチャイチャしている二人だった。
「どうしたの?」
彼女は驚いた顔で言う。
「君は嫌じゃないの?」
「えっ?」
「俺は君が他の男に触れられてるのを見るのが嫌でたまらない」
「どうして?」
「その理由を答える前に君が答えてよ。君は嫌じゃないの?」
「私は……」
「それなら質問を変えるよ。その男と一緒にいるのは俺と一緒にいるより楽しいの?」
「私はあなたといるほうが楽しいよ」
「分かったか? 彼女は俺のだ。お前は今すぐに帰れ」
俺は男にそう言って睨んだ。
男は逃げるように帰って行った。
男が帰って俺達に沈黙が訪れる。
「ねえ、どうして何も言わないの?」
「何を言えばいいか分からなくて」
「私に言ったことを後悔してるの?」
「そんなことはない。君は俺のだ」
「嬉しい」
「嬉しい?」
「あなたは私を義務で助けてくれてるのかと思ってたから」
「義務?」
「私が誘拐されそうになった時に私にあんなことがもう起こらないようにただ義務で助けてたのだと思ってたの」
「俺もそうだと思ってたよ。さっきまでは」
「さっきまで?」
「君があの男に触れられて嫌そうな顔をしていた時にイライラした。あの男にもイライラしたけど君にもイライラした」
「私にも?」
「嫌なら言えばいいんだよ」
「言えないよ。彼を傷つけちゃうもん」
「それなら君は傷ついていい訳?」
「私?」
「君は他人を守る代わりに君自身を犠牲にしてるんだよ」
「私はいいのよ」
「俺が良くないんだよ。俺は君の傷つくところはもう見たくないんだよ」
「私は傷ついてなんかないよ?」
「でも、あの日の誘拐事件は?」
「あれはあのおじさんが友達の分のお菓子もくれるって言うから私はついていったのよ」
「えっ」
「あなたにもお菓子をあげたくて」
「俺のせいなのか?」
「違うよ。だって私は何も傷ついてないからね」
「傷ついてないのか?」
「そうよ。あなたが助けてくれたじゃない。私は嬉しかったんだよ」
「嫌な思い出じゃなかったのか?」
「あの日はあなたが初めて私を助けてくれた日。あなたが私の中で大切な人になった日なの」
彼女は少し顔を赤くし、笑って俺に言った。
それから彼女は何かあると俺を呼ぶ。
「ねえ、お腹すいたよ」
「分かった。今から行くよ」
「ねえ、寂しいよ」
「分かった。今から行くよ」
「ねえ、眠れないの」
「分かった。今から行くよ」
「ねえ、あなたに触れてほしいの」
「分かった。今から行くよ」
「ねえ、ずっと隣にいてよ」
「分かった。今から行くよ」
「ねえ、ずっとだよ? 分かってるの?」
「分かってるよ。俺はずっと君の隣にいるよ」
「嬉しい。待ってるね。あなたのお嫁さんになるのを」
彼女はどんな顔で言ったのだろう。
早く彼女の顔を見たい。
彼女の部屋のドアを開けると、彼女は笑顔で嬉しそうに俺を迎えてくれ、
「待ってたよ」
そう言った。
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