表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

廃墟の檻

作者: 神名代洸

僕はどうしてここにいるんだろう…?

ここは何処?



頭を振って意識をハッキリとさせる。

次第に意識がはっきりしてきて今いる場所が何処かを理解する。そう、そこは廃墟だった。しかも片足首には鎖が…柱に括り付けられていた。

両手は自由に動かす事はできた。

でも部屋が暗い。


まず僕がしたことといえばあかりを探すことかなぁ〜。外も暗そうだ。雨も降っている様で雨音が聞こえてくる。

あちこち手探りで辺りを探すと何かを掴んだ。どうやら懐中電灯らしい。スイッチを入れると明かりがついた。あたりを照らすと天井から何かがぶら下がっているのが見えた。

不思議に思いながらも懐中電灯を当てていくとそれは人だった。ブラブラと揺れてるのは首をくくったかららしい。舌がだらりと垂れ泡を吹いていた。


「うわぁ!し、死体が!?だ、誰か!誰かいないのか!」

声が反響している。と言う事は今この場には僕とこの死体以外いないと言うことになる。

死体の顔は下を向いている為誰かまではわからない。


足の鎖に光を当てて見てみるが、手錠のような形をしており、鍵が見当たらない。

周りをくまなく照らしてみると、からの弁当の容器が3つあった。僕は食べていないから、ほかにあと2人誰かいたのかもしれない。そもそも何で僕を?

自分で言うのも何だが真面目な善良な一市民として生きてきたと思っている。

彼女?

今まで一度だって出来たことないし…。

告白だってされた事ない。

僕からしたことも…ない。僕は臆病者だから振られたら立ち直れない。

だからずっと1人だった。


あれこれ考えていたら遠くから足音らしき物音が聞こえてきた為、慌てて目を瞑る。



「おい、まだ気絶してるぜ?起こすか?」

「いや、放っとけよ。そんな事よりもこいつの方をどうするかってやつだな。」

「この揺れてるのは放っておけばそのうち誰か気がつくだろ?だからいいって。」

「あ、ああ。まあ、そうだな。だけどよぅ、まずいとこ見られたよな?きっと見てるぜ?俺らがしたの。起こして聞くか?」

「だな。」

そう言ってるそばから男?が僕のお腹を蹴った。目を瞑っていたから気づかなかった。一瞬息ができず寝たフリをすることもできなくなった。

「ゴホッ。ゲホッ。う〜。」

「やっと起きたか。ほら、目〜覚ませ、じゃないともう一発いくぜ。」

「や、やめて!起きてるから…。」

「お前、見たか?」

「??、何をですか?」

「お前、ここらで写真撮ってたろ。見せろ!」

そう言って返事を聞く前に荷物をあさった。案の定カメラは入っていた。

男はカメラに写っている写真を次々と見ていった。

そして全部見るとこう言った。

「写真は全部でこれだけか?他には無いか?」

「あ、ありません。それだけです。なんなんですか?これは一体?」

僕は両手で足首の鎖を取ろうとしたがどうしても取れない。ここはなんだか不気味そうだ。


「まぁどのみちお前はここに放置な。こいつと一緒にミイラにでもなっちまえ。クックックッ。」

「そ、そんな…。助けて!助けてください。」

「無理だな。だってお前、こいつ見ちまったもんな〜。」

そう言って持っていたランタンの灯りを死体に照らす。

「こいつ、死んじまってな。俺ら面倒に巻き込まれるのはやなんだわ。だからこのまま放置しとくわ。悪いけどあんたもこのまま放置だ。まぁ、運が良ければ誰かが来てくれるだろうけどあんた誰かにここにくる事言ってる?」

ブルンブルンと首を横に振る。

すると相手は嬉しそうな顔をしてこう言った。


「あんた、運ないね。諦めな。わりいわ。クックックッ。」と笑いながらその場を片付け始め、去ろうとする。

「待って!助けて!お願いします!」


しかし、2人は去ろうとしている。その時だ、何かを感じたのは。

2人は何も感じないのか歩き出していた。

生暖かい風が強く吹いた。

その途端に窓ガラスが外れ、ガッシャーンと音が響く。

その為ビックリした男達はその場で固まった。


シーンと静まり返る建物内。

その時だ。何かが揺れ出した。それは死んだはずの仲間の死体だ。

ビックリした男達は突然意味不明な行動をとり始めた。


「おい!止めろよ。マジか?やべーよ。に、逃げるぞ!」

ドアのそばまで行ったらドアが突然バタンと閉まり、開かなくなった。


「鍵!鍵は?」

「?そんなのちゃっちー玩具だ。力入れれば簡単に壊れる。」

言われた僕は力いっぱい使って引きちぎった。言われた通り思ったよりも簡単に壊れたことでちょっとホッとしてる自分がいた。

しかしまだ油断はできない。

だってここから逃げないといけないから…。


2人の男達は狼狽て怯えている。

何かやましいことをしたのだろう…。

言葉にならない叫びが聞こえる。


「お、俺らは悪くない!おま、お前が悪いんだ!お前のせいで計画がとち狂っておまわりが探し回ってるんだ。お前が全部責任とって死んじまったから俺らはもうかんけーねわ。」「そうだ。折角強盗に入ろうとしたのに怖気付きやがって。しかも証拠を残す凡ミスもするなんてありえねー。幸いにもまだ俺らにはたどり着いてないみたいだからお前が責任取れば終わりなんだよ!」


僕は全てを聴いていた。

この死んだ人がきっと怒ってるんだ。

仲間に殺されたのかもしれない。

僕は逃げるよ。

だって全然関係ないんだもん。

見逃して?


祈る思いで部屋から出られそうな場所を探した。

すると部屋の角の小さな穴があって、そこからなら抜け出せそうだと気づく。人1人がやっとだが、僕なら通れそうだ。

2人に気づかれないように懐中電灯の明かりも消して、月明かりだけでたどり着くことができた。

足から抜け出そうとユックリと中に入る。

足が出たら後は身体。

慌てずに静かに抜け出した。

あとは頭だけだ。

その時1人に見られた。


「あ、アイツ逃げる気だ。…逃すかよ!」


ものすごい勢いで走ってきたが、僕は頭を通して抜け出すことができた。慌ててその場から走って逃げた。

後ろを振り向くことはしなかった。だって怖いから。

自分のはく息だけが耳に響く。

外は雨が降っていたが、そんなの気にしていられなかった。とにかく知ってる場所にたどり着くことが先決だった。


どれくらい走っただろう…。

近くにコンビニが見えてホッとした。

ホッとしたらしたで2人のことが気になった。


翌日、新聞に何か書かれているのか気になり見てみたが、地方版にも載ってはいなかった。

怖かったからとりあえず警察署に向かい、自身に起きた昨日の出来事を話して聞かせた。

刑事さんは本気にはしていなかったが、もしもの事を考えて3人ついてきてくれた。

僕はうる覚えだったけど、目印は覚えていたので目的の場所まではそう時間はかからなかった。

建物は古く、廃墟となって何年経ったのだろう…。

相当古い建物のようだ。サビとかもあった。

建物の2階の奥の部屋、そこが目的の場所だった。

一人の刑事がドアを開けようとしたが開かない。

そこで僕が抜け出てきたと言う場所まで行き、そこから中を覗くと、人が倒れているのと、首を吊った男の人がいた。拳銃で鍵を壊し、中に入ると男が2人倒れていた。

すぐに近寄ったが、目は開いたまま首を掻き毟って絶命していた。もう一人も似たような格好で死んでいた。

ただ首を絞めた後はなく、理由がわからない。

僕だってわからない。だって僕がここから逃げる時にはまだ2人は生きていたから。

その後ここで何があったのか?

床に転がっていた鞄の中には強盗に入る計画が書かれたノートが出てきた。

ノートの最後のページには悪事を働こうとしている自分に嫌気が差している事。でも、昔からつるんでた仲間だから抜け出すことが出来ずどうしたら良いのか悩んでいることが書き込まれていた。最後の行には【誰か助けて!】と走り書きで書き込まれて終わっていた。



「なんてこった。仲間割れによる殺害。及び、自決?

にしてもしめられてない首を掻き毟ってるってどう言うことだ?う〜ん、分からん。??あれは?」

それは部屋の中を映していた。

監視カメラだ。

どうやら動いているようだ。

なんで?無人なのに…。

直ぐに持ち主を探して映像を見せてもらう事が出来た。

そこにはあり得ないものが写っていた。

そう、うろたえる2人の男。

何かに向かって叫んでる。

でも写っているのは男が2人のみ。

そして一人が突然苦しみだし、その場に倒れる。その姿を見ていたもう1人は何も手に持たずにその場から逃げようとしている。

それでもドアのとこまではたどり着けてもドアが開かない。半分泣き出しながらドアに体当たりを続けた。

さっきまで呻いていた仲間の声が聞こえなくなったので後ろを振り返るとそこには絶命している男の姿が。


「ヤダよ!悪かった。悪かったから、謝るから助けてくれ!」


それでも男の願いは届かず白い影が顔の周りを取り囲んでいた。すると男も突然苦しみだし、その場にくずおれた。しばらく痙攣していたが、じきに動かなくなった。


刑事達はどう調書に書くか悩んだ。

相手は死んでいる為聞くことができない。

そこで、仲間が自殺したことにより錯乱して結果亡くなったとする事で落ち着いた。


僕はおとがめ無しという事で警察署から出て来た。

関係性が全く無く、突発的な犯行に巻き込まれたと結論づけられたからだ。


カメラはメモリーカードを警察に提出することになった。まぁそれだけで済んだので良かった。

警察の鑑識でも調べたがとくにかわった所はなく、問題なしとされた。



あの映像には写っていなかったが、僕には首を吊った仲間の仕業としか思えなかった。

だがもう見ることはない。

立ち入り禁止のテープが張られたからだ。




だけど僕には見えていた…。

亡くなった人の顔が建物のガラスに写っていたのを。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ