晩御飯
部屋に戻るとメイドが夕食をテーブルに並べていた。ベルを見ると何故か驚いた顔をする。
「今お戻りになられたのですか?」
「そうだけど」
「やっぱりイザベラさんは嘘をついたんだ」
「嘘?」
聞き返すと、いえいえなんでもありませんと慌てて首を振った。
「お食事の準備ができておりますよ。すぐに食べられますか?」
「うん!」
ふーふー息を吹いて冷ましながら食べていると、傍に控えていたメイドが遠慮がちに声をかけてきた。
「あの、お嬢様はご不満などはないのですか?毎日お一人で......」
一人で過ごしていることを言っているのか?でもそれは仕方がないことだ。友達を作る機会もないし。
「ないよ。どうかしたの?」
メイドが個人的に話しかけてくるのは珍しい。食事の手を一旦止めて彼女の方を向く。
初めて見る顔だ。雇われたばかりかもしれない。
「......お嬢様は、もっとわがままになっても良いと思うんです。まだ小さいのに公爵様も奥様もお嬢様を一人にし過ぎです」
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ、お仕事なんだから仕方ないよ」
「お嬢様はどうしてそんなに」
メイドが声を上げた瞬間、鋭い声が飛んできた。
「リーナ」
「あっメイド長!すぐ行きます!」
メイドは失礼しますとぺこりと一礼して慌てて出て行く。
「お食事中申し訳ありませんでした」
ローザも綺麗な姿勢で一礼して扉が閉められた。
「......いったい何だったんだろう?」